EP2 認められない運命、世界改変 ③
「つまり、源蔵はお前達や一般人を助けるために捕まったんだな?」
「うん。」
源蔵が連れて行かれて半日がたった。
船から飛び降りた私達はなにも出来ず、ただただ何処かに向かって行った船を見続けていた。
「このままだととんでもない事になるな…」
なにがあったのかを十兵衛さん達に話した後で、事細な事を北斎に話すと顔を強張らせた。
「政府が用意してる船と最強の部隊連れても勝てるかどうか怪しいな…」
「ごめん、私が弱いばかりに」
「いや、お前は一番正しい事をした。アタランテ一人だったら、源蔵を殺して自身も死んで、ジャンヌの機嫌をそこねて主要都市が木っ端微塵になってたかもしれない。」
「…」
アタランテは今ライオンの姿になり、魔獣の皮を使い魔獣になって連れ戻そうと島を出ようとするけど、源蔵の現在地すら掴めなく非常に危険だと判断され、アキレウスさんを始めとする腕自慢の人達に取り抑えられている。
「タイムマシン、マジで作れるのか…」
「真のタイムマシンを作るために5人の英雄を誘拐していたみたいだけど、真のタイムマシンってなんなの?」
源蔵はタイムマシンを作れなくタイムマシンに近いものは作れる。
その事がどういう意味か私には分かんない。いったいどういう意味なの?
「タイムマシンは…未来や過去に行ける乗り物だ。だけど、未来や過去は無限に存在する。」
未来や過去は無限に存在する…もしかして分史世界が無限にあるからかしら?
「無限に平行世界があって、その中から一つの時代にピンポイントに遡る事は源蔵のタイムマシンで出来るが、問題はその後だ。」
「その後?」
「その時代には源蔵が存在しない。いや、存在してはならない、存在してる時点で歴史は変わっちまうから。時空間理論とかは詳しくは知らないけど、人の記憶や心が主に時間軸に影響していて、源蔵が居てはならない時代に居るのが原因で源蔵が来た時間軸と全く別の世界になってしまって元の時代に帰れなくなってしまうんだよ。」
「つまり?」
「行きたい時代は選べるけれど、今俺達がいる平行世界以外の平行世界に行ってしまう、過去にしか行けない、未来に帰れないタイムマシンを源蔵は作れる。」
「ちょっと待って、その事をジャンヌ達は」
「知ってるだろ。わざわざ5人のSランクの英雄を集めたんだから。」
どういう意味?
「源蔵以外の4人も似たり寄ったりの中途半端なタイムマシンを作れる。」
全員が似たり寄ったりの中途半端じゃ駄目じゃないの?
「似たり寄ったりの中途半端なタイムマシンだが、全員が全員一つだけ確かに成功した真のタイムマシンと同じ機能がついている。」
「と言うと…」
「源蔵ならば確実に遡りたい過去に遡る事が出来るとかダ・ヴィンチならば確実に今俺達がいる平行世界の何処かの時代に飛んだりするとか、全員の力を合わせれば過去を改変出来て、未来にその影響を与える真のタイムマシンを作れる。」
だからジャンヌ達は源蔵達をさらったの…
「さてと、俺はもう寝る。何だかんだでもう一日以上起きている。英気を養う為にもルイコ、お前も寝ておけ。」
布団を押入れから出して、寝る準備をする北斎。
英気を養うって、もしかして
「戦いにいくつもりなの?」
「政府の人員殆ど爆処理に行かせてるから、俺達が行かないといけない。」
「でも、北斎は弱いんじゃ」
「ああ、弱いさ。近所の空手をやってる小学生にも負けるレベル…だがな、俺にはこれがある。」
ポケットからカードを取り出す北斎。
あのカードって、子供向けのアニメに出てくるカードだよね?
「源蔵が何処にいるか分かるの?」
「そう言うのは問題ない…おやすみ…」
北斎は布団に入り意識を落とし眠りに入った。
源蔵の為に弱いのを分かってて戦いに行くなんて…無謀すぎるよ。
「…私も私に出来ることをしよう」
北斎の部屋である503号室を出て、502号室に入ろうとするち玄関前で仁王立ちしている十兵衛さんに止められた。
「ルイコ殿、今非常にアタランテ殿は危険な状態です。」
「知ってるよ。」
「ならば、自身の部屋にお戻りください。」
「それは嫌。」
私は十兵衛さんの足を払いのけ、鎖で縛られているキマイラ…ううん、アタランテの前まで行く。
「アタランテ」
「ナニシニキタ?」
キマイラの姿になっているのかカタコト…ううん、アタランテはアタランテだよね。
「ワタシハイマオマエヲコロシタクテコロシタクテショウガナイ!!クサリガナケレバ、コロシテヤッタ!!」
「怒ってるの?船から飛び降りたこと」
「アタリマエダ!」
「…もし、あの時私がいなければどうしてたの?」
「ゲンゾウヲコロシテ、ワタシモシヌ!!」
やっぱり…
「私ね…大事な友達と彼氏が」
「オマエハオマエワタシハワタシダ!ゲンゾウガワタシヲコロスコトニナッタサイニハゲンゾウハシヌカクゴハデキテイル!イッショニアツカウナ!!」
「っ…そうだよね。」
大好きだった彼氏と一番の親友のカガリの話をしようと思ったが、話し自体をさせてくれなかった。
だけどそれは当然のこと。カガリ達と源蔵は違う。死んでいない拐われただけだ。そう、拐われただけ。だから
「源蔵は生きている!」
「アタリマエダ!」
「私の大事な人達は死んじゃった!私は小説を書いている人みたいにカッコよくて意味が深い言葉なんて何一つ言えない!だけど、これだけは言えるよ!まだ間に合う!明日北斎がアルゴー船に乗り込む!だから、アタランテも来て!」
「…ソレハホントウカ?」
「待ってください、ルイコ殿!」
助けに行く準備も方法も整っているんだと説明しようとすると話に割って入ってきた十兵衛さん。
「なに?」
「現在、名古屋、神戸、東京、札幌、博多の日本の主要都市に爆弾が仕掛けられている。それを解除するまで」
「嘘かもしれないし、ジャンヌの意思一つで爆発するかもしれない爆弾かもしれないよ」
「…そうだとしても、どうやって源蔵殿の所に行くのですか!」
「北斎が全部準備してくれる。」
どうやってかは知らないけれど、焦る事なく問題ないって言ってた。
絵を実体化させる紙兵の術で船を実体化させるかもしれないし、源蔵のように顔が広く船を持っている人から借りてくるかもしれない。だけど、問題ないって言ってたから大丈夫。
「アタランテ、明日北斎と一緒に私は源蔵を助けに行く。アタランテはどうする?」
「…決まっている源蔵を助け、ジャンヌダルクを消す。」
アタランテはキマイラの姿から人の姿に戻りそう言った。
この姿ならば鎖に縛られる必要も無いと十兵衛さんは鎖を外す。
「私は上に頼んで出来る限り強い方を」
「やめておけ。少数精鋭で行った方がいい。」
政府の人や特殊部隊の隊長に強い人を呼んで貰おうと案を出す十兵衛さん。とてもいい案だけど、アタランテは却下した。
なんで?相手も英雄だから数が多ければ勝てるんじゃないの?
「あくまでも、これは予想なのだが、アルゴー船の乗組員はわずか数名だ」
「わずか数名、なんでそう言いきれるのですか?」
「アルゴー船はあくまでも船だ。空を飛ぶ機能はついていない。」
「成る程、そう言うことですか…それならば私一人で」
「ああ。」
「え、え、どういう事?」
乗組員が数名だと予想するアタランテ。そしてその理由がわかった十兵衛さん。私はなにを理解したか分からなかった。
「あの船にはエジソン殿が作ったものと同じ、いや、それ以上に反重力装置やステルス装置がついているのです。如何にエジソン殿達が天才でも反重力装置の大きさは変えれません。」
「更には政府のレーダーを無効にする装置や乗組員以外を麻痺らせる装置、まだまだ沢山あるぞ。それを乗せて尚且つ砲台をつけている、住居スペースは数人で限界ギリギリだ。」
ああ、そう言うことね。
確かにあのアルゴー船は私の世界にもある普通の木造船で、砕氷船とか豪華客船とかとは違うからかなりのスペースを取るよね。




