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EP2 認められない運命、世界改変 ②

「アタランテ」


「ん」


熟年夫婦の様な阿吽の呼吸をするアタランテと源蔵。英雄運動会の一日目が終わり、3人で食事をしている。

本当なら、源蔵とアタランテ、夫婦水入らずで食事をさせたいんだけど、私、この世界のお金とか持ってないからご飯が…うん、私達の世界の事が片付いたら御礼をしないと。。


「今年の英雄運動会はつまらん。実につまらん。」


エジソンやダ・ヴィンチ等のSランクの発明家の偉人が誰一人来ず、ロボバトル大会でぶっちぎりの優勝を果たした源蔵。

優勝の名誉よりも賞金よりも、エジソンさんやダ・ヴィンチさんと競いあう事を楽しみにしていたのに、誰一人来ていなく、イライラしてる。


「そうイライラするな。明日は射的がある。ビリー・ザ・キッド、那須与一、黄忠、各国の狙撃兵の末裔よりも私が優れていると証明しよう。」


イライラしてる源蔵を宥めようとするアタランテ。尻尾を源蔵の膝に置いた。


「ケイローンが原因でお前はマイナーでBランクの英雄にされているが、弓と足ではSランクの英雄以上だ。」


源蔵が絶対に勝てと、言うと頷くアタランテ。

二人の距離が段々と近くなっていくのを感じた私は空気を読み部屋に戻ろうとするが、源蔵に止められる。


「高校を卒業するまではキスもしない。そう言っただろ…」


「熟年夫婦並の阿吽の呼吸が出来るのに、キスすらしてないの!?」


「眼球ペロペロはしたぞ。源蔵の体液は旨かった。」


アタランテがサラッと恐ろしい事を言っているが、それよりもよ。

一緒の布団で寝たり、一緒に御風呂に入ったり、夫婦茶碗や湯呑みを使っているのに、キスすらしていない。

つまりだ、源蔵は、源蔵は


「童貞なの?」


「サラッと、とんでもない事を聞いてくるな!。」


「いやだって、気になるし…」


これだけ見せ付ける様にイチャイチャしてて今の一度もキスすらしていないって。

てっきり、行くところまで行って、子供を授かるのを待つだけだと思ってたよ。


「そう言うお前はどうなんだ?」


「源蔵、女に処女かなんて聞くのは失礼だよ!」


「男女差別か、こんくそやろうが!!」


女に処女かどうか聞いて良いのは処女厨かはじめての時だけよ!

色々と目茶苦茶を言っているが、失礼な事には変わりない。


「二人とも、静かにしろ。おかわりはもう良いな?、食器を下げるぞ。」


「あ、うん。」


アタランテは私達が食べていた叉焼丼の丼茶碗を下げて、洗い始める。

源蔵とアタランテはイチャイチャしないし、部屋に戻っても特にやることがないから、もう少し残っておこう。


「それにしても変だよね。源蔵以外のSランクの英雄達全員が欠席なんて。」


レオナルド・ダ・ヴィンチ、トーマス・エジソン、ニコラ・テスラ、リチャード・ドレビシック、平賀源蔵。

この5人が今のところ発明家のSランク英雄にされている。アタランテが言うには、この5人は過去最高の技術を持つ5人。


「4人ともロボバトルとか鳥人間をすると言ったら、出る気満々で、何度も連絡があったのに…」


「源蔵宛に送られた爆弾が他の人に送られたとか?」


もしかしたらの事を言うと、源蔵は黙ってしまった。

あ、ヤバイ。地雷を踏んじゃった。


「げ、源蔵ぅううう!!!」


「っ、どうした北斎!」


地雷を踏んでしまったと感じていると、ノックもせずチャイムも鳴らさず北斎が部屋に入ってきた。

余りにも慌てているのか靴を脱いでいない。部屋が汚くなる。


「外だ、外!」


「外がどうしたんだ?」


「とにかく、アタランテもルイコも、屋上に来てくれ。」


北斎に言われた通り、私達は屋上にいく。

屋上に行くととアキレウスさんや十兵衛さん達が空を見上げていた。

空に何かあるのかと私達も見上げると古い木造船が空を飛んでいた。


「十兵衛さん、アレって政府の?」


「いえ、違います。政府の船ならば、日本の国旗があります。ですが、あの船には国旗が…」


十兵衛さんの言うとおり、あの船には国旗がない。

何処かの国の使者じゃない。となると狼男なんかの獣人の集団か、魔術結社のどちらか。

私だけじゃない。源蔵やアキレウスさん達も同じ事を考えていたなか、アタランテは違うことを考えていた。


「何故…あの船が存在する!!」


「知っているの、アタランテ!?」


「知っているもなにも、私はあの船の、アルゴー船の乗組員の一人だ!」


「えええええ!!…アルゴー船ってなに?」


アルゴー船と呼ばれる船の乗組員なのを知り驚いたけれども、アルゴー船がなんなのか知らず冷静になった私は源蔵に聞いた。


「アレだ、ギリシャ神話に出てくる大財宝を求めて旅した際に乗ってた船だ。」


「間違っていないがその説明はやめてくれ。とにかく、アルゴー船で間違いない。」


アルゴー船の乗組員であったアタランテがそう言ったので、一先ずは敵じゃなかったと安心する私達。が、源蔵とアタランテ、それに北斎だけは安心をしなかった。


「ギリシャ神話に出てくる船なんだよね?ギリシャ系の英雄の人達が乗ってるんじゃ」


「だとしてもだ、おかしすぎる。」


「なにが?」


あの船のデザイン?それとも今この場所に現れたこと?

英雄の子孫や生まれ変わりは色々な所で生まれるから、気にしてないと前に言っていた源蔵。

どうも、おかしい点が存在するみたい。


「アルゴー船はもう存在しない。壊されたはずだ…仮に一から作ってきたとしても、アテナの加護をあの船から感じる。」


言われてみれば、そうね。あの船からなにか変な力を感じる。

でも、アテナを信仰してる人とか乗っていたりするかもしれないし、一から作った際に加護を与えてもらった可能性がある。


「一度調べるぞ。」


源蔵が携帯を操作すると、私達の前にUFOが出現する。

急に現れたので一瞬だけ私は驚いたけれども、他の人が驚いていないのを見ると、このUFOは源蔵が作った物だと知っているみたい。


「悪いが十兵衛とアキレウス、それに北斎は残ってくれ。一度調べに行くだけだから俺やアタランテ達で充分だ。」


3人に待機して貰うと、ウィーンと自動ドアが開き私達はUFOに乗り込み、船を見下ろせる位置まで飛ぶ。


「何処からどうみても私が乗っていた頃のアルゴー船そのもの。」


「それっておかしくない?あの船は木造船でしょ?一から同じ傷とか作るのは無理でしょ?」


「それもそうだが…しかし」


あの船が新しく作られたアルゴー船ではなく、自分が乗っていたアルゴー船その物だと疑わないアタランテ。

いったいどうなってるの!と叫ぶと源蔵が顔を青くし、ヘッドホンを何処かから取り出して装着した。


「一つだけ、本当に一つだけだがな、あの船がアタランテが乗っていたアルゴー船だと証明する仮説が浮かんだ…聞くか?」


「ああ。」「教えて?」


仮説が聞きたいと私達が言うと顔を両手で隠す源蔵。ボソリと小さくなにかを呟いた。


「なん…だと…」


「なんて言ったの?」


「聞こえなかったのか、タイムマシンだ。タイムマシンで過去に遡りアルゴー船を持ってきた。」


「そんな事って出来るの?」


「俺の仮説が正しければ…テロよりも酷いことを企む野郎が居るってことだ。」


『その通り!』


「「「!?」」」


源蔵の操縦席のモニター画面が地図から、髪の毛一本以外が後ろ向きに逆立っている綺麗な金髪の女性と、シルクハットを被った片目にモノクルの夜会服を着た初老の男性の映像に移り変わった。


「俺のUFOをハッキングだとぉ!?馬鹿な、世界中のスパコンを簡単に支配できる性能を5分にも満たない…そう言うことか…っく」


苦々しい表情の源蔵はモニターを強く叩く。ちくしょうと小さく呟き、腕を震わせる。

相手が何者なのか、いったい何をする気なのか、私達は全く分かっていないと言うのに諦める源蔵。


「ルイコ、アレを見ろ。」


「人?」


UFOの窓から見えるアルゴー船に異変があったのか、指をさすアタランテ。

先程までは人っ子一人、船の上に居なかったが全裸の男女、2人ずつ十字架に縛り付けられていた。


「…いったいなにが目的だ…」


『それぐらい数千年先の知恵を持つ君ならば分かる筈だ。』


シルクハットの男性はそう言う


「タイムマシンの開発、か…」


『その通りよ。』


「ちょっと待て!わけが分からない!。源蔵、ルイコや私にも分かるように説明を頼む。」


アタランテは状況についていけなく、 説明を求める。

だけど、源蔵は説明をしてくれず、代わりにモニターに映る女性が説明をしてくれた。


『先ずは自己紹介。私はジャンヌ。名前だけでもう分かるでしょ、どんな英雄か。私は子孫であると同時に生まれ変わりなの。』


ジャンヌと言う名前で浮かぶ英雄はジャンヌダルク。この金髪女はジャンヌダルクの生まれ変わりで、肉体がジャンヌダルクの子孫。

死んだ説とか結婚してないとかは色々とあって、最終的に諸説ありで済ませれるからどんな英雄の子孫が出てきても驚かないけど、まさか子孫に生まれ変わるだなんて…


『そして私はアルセーヌ・ルパン。』


モノクルをつけた初老の男性はシルクハットを手に持ち、行儀よく一礼をする。

アルセーヌ・ルパン…何処の英雄?


「ちょっと待て!ルパンは創作だろう!」


『真からでた嘘だ。』


「子供向けの自動絵本と同じで、昔あった伝承を改善した本だったのか…」


つまり、この男性はルパンの子孫か生まれ変わりのどっちかってことね!


『先に言っておく。私はアルセーヌ・ルパン二世でもアルセーヌ・ルパン三世でもない。アルセーヌ・ルパン一世、即ち小説に出てくるルパンその者だ。』


「マジかよ…」


「なにが目的でここに来た?」


『決まっているじゃない、貴女の夫よ。』


「源蔵が目的だと?ふざけるな!爪先から髪の毛まで、私の物だ!」


『ジャンヌ、ちゃんと説明をしなさい。』


『あら、私は結構好みなのよ?』


「俺はアタランテしか女性を愛していない。」


話が徐々に徐々に脱線していってるが、源蔵の一言でなんとか元に戻る。

しかし、タイムマシンを作るって、源蔵はタイムマシンに近いものしか作れないんじゃ


『私達は真のタイムマシンを作るために平賀源内、君を迎えに来た。』


「俺はタイムマシンを作れない。」


『正確には、帰ることが出来ないタイムマシンしか作れないだろう。』


「…船の上に縛られているエジソン達と言い、爆弾を送ってきたのはお前か?」


『ああ、軽い挨拶として送った。』


「ルイコ」「ええ!」


爆弾を送った犯人がルパンだと分かると、私達は窓から外に出て、船に飛び降りていく。

源蔵を殺しかけた人達は敵!。先ずは船に縛られている4人を助けないと!


「やめ、ろ…」


モナリザと同じ顔の男性が死にかけの声で飛び降りてくる私達の攻撃を止めさせようとする。


「え…ぐぁあああああああ!?」「ぐっっっ、これは」


男性の声が耳に入る頃には船の上。船に乗ると身体中に電撃が走り苦しむ私達。

船の中からジャンヌが出てきて、耳をほじくりながらほくそ笑む。


「あ~あ~馬鹿ね。この船はそこに縛られてる4人、エジソン、ニコラ、ダ・ヴィンチ、リチャードに改造して貰ってるのよ。」


この人がダ・ヴィンチね。とモナリザ顔の男性の背中を見せるジャンヌダルク。背中には切り傷や鞭で叩かれた痕が残っていた。


「ごめ…ん、痛いのだけは無理なんだ…」


「最初から手伝わない貴方がいけないのよ。さぁ、源蔵、UFOからおりなさい。さもないと」


…あの時と同じだ…お祖父ちゃんの時と同じだ。

私はお祖父ちゃんに転移魔法でリュウジさんの元に飛ばされた日の事を思い出す。

また、また、またあのときと同じ…


「そんなの、絶対に…させない!!」「源蔵は渡さん!!」


私とアタランテは電撃を自力で破った。

あの時とは違うんだ、私には仲間がいる。アタランテがいる!!


「うぉおお!!」「我が弓は神の」


「あらあら、貴女達、日本を滅ぼした原因になるわね。」


とっておきの必殺技を使おうとする私とアタランテ。ジャンヌはパソコンを取り出す。

日本を滅ぼした原因?、ジャンヌとルパンは日本の宝でもある源蔵を殺そうとしたのよ、倒すしか


「日本の主要都市五ヵ所に爆弾を仕掛けているわ。」


「どういう意味だ…」


弓矢に莫大なまでの魔力を溜めていて、後は矢を放つだけだったアタランテはジャンヌの言葉を聞いて攻撃を止めた。

攻撃を止めたのを見ると、ジャンヌはパソコンを使い、立体映像で日本の主要都市を映した。


「侍系の英雄とか政府とかとバトルしないつもりで来たから。今ここに映し出されてる主要都市の駅の何処かに超強力な爆弾を仕掛けまくったわ。」


「最低!関係のない人を巻き込んで」


「あら、悪いかしら?」


この女…爆弾が仕掛けられているかどうかは不明だけど、迂闊に攻撃する事が出来ない。

ジャンヌは動くなと私達に言い、拳銃を眉間に突きつけた。


「ここまでか…」「ごめんなさい、お祖父ちゃん。」


「待ってくれ!」


ジャンヌが銃の引き金を引こうとし、私達が死を覚悟した瞬間にUFOを船に着陸させ源蔵が中から出てきた。


「頼む、二人を殺さないでくれ!!俺を連れていきたいのなら連れていってくれ!!」


「駄目よ!コイツらはタイムマシンを作って、とんでもない事を」


「そうだ、私に構わず」


「黙っていろ!」


私達の言葉を一蹴し、土下座をする源蔵。

ジャンヌは殺さなくて済むなら構わないと源蔵に手錠をしたあと、ナイフで服を破り捨てた。


「道具を隠していないか金属探知機で調べさせて貰うわよ。如意棒みたいに物の大きさを変えれる技術を持っているのは知っているから隠しても無駄よ。」


「分かっている…」


金属探知機で全裸の源蔵を調べるジャンヌ。源蔵は両手をあげる。


「源蔵、うそだろ…」


「…どんなことにも犠牲はある…一人の命で沢山の人が救えるなら安い…」


金属探知機が反応せず、ジャンヌが渡した全身タイツを着る源蔵。

もう捕まるのを決めたのか、冷静だ。


「駄目だよ、源蔵が行ったらもっと酷いことに!」


「ちょっと人聞きの悪いことを言わないでよ。私は傲慢な奴等を消すためにタイムマシンを作るの。」


「源蔵、行かないでくれ!」


ジャンヌの元に行こうとする源蔵の前に立ち、道を塞ぐアタランテ。

源蔵は優しく微笑みキスをするとジャンヌの側に立った。


「もう無理、なの?」


「どうにもならない、今はな。」


「それ以上余計な事を言うのは駄目よ。」


「銃を眉間に突きつけるな。アタランテ…ごめんな。俺が、俺がエジソン達と連絡がつかないことを軽く考えてしまったせいで…色々とあったな。」


「やめろ、聞きたくない…」


源蔵の別れの挨拶を聞き入れようとしないアタランテ。一歩ずつ、一歩ずつ後ろへと下がっていく。


「アタランテ、頼む聞いてくれ!」


「嫌だ!!私はお前と死ぬまで一緒だ!お前の妻になって、何気ない、日常、を歩ん、で娘を生んで」


「ジャンヌ。」


呼吸困難になる程、泣きじゃくるアタランテ。

源蔵はアタランテを連れていけないかと聞いた。


「ダメよ、余計な人間は船に乗せないわ。」


「ルイコ…アタランテの事を頼んだ。」


「…わかった。」


私達が殺されて源蔵がジャンヌの命令に従うよりも、私達が生きてジャンヌの命令を聞いた方が良い。

アタランテを抱えて私はアルゴー船を飛び降りた。

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