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EP2 認められない運命、世界改変 ①

「マジ、死ぬ」


「いや、生きてるだろう。」


一週間、源蔵の代理を勤めた私。

鏡で一週間前の自分で見比べると窶れているのがよく分かる。


「想像してたのと全然違うし、話が全然違ったよ…」


「中間管理職を舐めるな。」


地獄の様な一週間を退院した源蔵に愚痴ろうとするも、一喝された。でも、本当に聞いてた話と違ったのよね。

週一のローテーションで魔法使い達が襲撃してくるってアタランテは言ってたのに、3日目以降からずっと襲撃してきて本当に大変だったんだよ。

他にも日本地獄の使者とかが家に来たり、この世界の文字とか覚えてたりで忙しすぎる。


「とにかく俺の代理を勤めた事については、感謝する。礼を」


「自分でやるって言ったから最後までやって当たり前の事だから御礼は良いよ。」


源蔵が財布を取り出していたので、私は御礼を断った。

こんなに疲れる事とは思っていなかったものの、私は見返りを求めて代理を勤めたんじゃない。本当に善意でやったことだ。


「そうか。ところで、仲間にしたい奴は見つかったか?」


「あ~…分かんない。」


強い人を仲間にしたいけど、どの人が強いのかいまいち分からない。

アタランテにパソコンと言う情報端末機械を使わせてもらい英雄のランクとか偉業とかを見たけども、いまいち分からない。

生け捕りしないといけないから一年中追いかけてたとか、意味分かんない。


「英雄の凄さが生で見れたらな~」


「俺にタイムマシンを作れと言うのか?」


「え、作れるの!?」


「作れないことはない…タイムマシンと呼ぶには相応しくない代物だけどな。」


「それでも作れるんでしょ、なら」


源蔵を私の世界に連れていってタイムマシンで全盛期のお祖父ちゃん達を過去から連れてきて、アークを倒す。

最高の方法が浮かんだが、源蔵は作るつもりはないと言った。


「なんで?」


「さっきも言っただろ、タイムマシンと呼ぶには相応しくない代物だ。失敗は成功の元と言うが、最初から失敗なのを知っている不良品を作動するほど愚かな発明家じゃない!」


「それなら」


「エジソンやニコラ、ダ・ヴィンチに頼もうとしても無駄だ。Sランクの発明家の偉人でも、神話の神でも、タイムマシンを作れない。魔法で過去に遡るのも不可能だ。」


過去に行くことは出来ない。当たり前の事だけど、この団地の人達を見ていたら出来るんじゃないかと思ってしまった私が居たみたい。やっぱりだけど、楽して世界を救えるほど世の中は甘くない。


「あ、エジソンで思い出した。十兵衛さん…政府の特殊部隊の人が船を修理してほしいって。」


「政府の特殊部隊からの依頼か。」


「エジソンさんが作った反重力装置とステルス迷彩機能を直してほしいって」


「奴等は金払いが良いから後日、修理に行こう…因みに何時依頼に来た?」


「源蔵が入院して3日目だったかな」


「3日目だと?」


「うん」


パソコンのメールで修理を依頼したいと来たことを教えると驚愕の顔をする源蔵。

え、なに?いったいなんなの?


「3日目…俺が入院しているのは政府には知られていない。更にはエジソンが作った反重力装置…」


「なにかおかしな事があったの?」


「ルイコ、政府の奴等に入院をしている事を言ったか?」


「言ってないけど…それがどうしたの?」


「いや……4日程連絡を入れてないのならダ・ヴィンチとかに依頼をするはず…何かあったな。」


「なにかって、なに?」


「知らん。大方、物質転送装置に蝿が入って蝿男になったりしてるかもしれん。」


「それ大丈夫なの!?」


てか、物質転送装置に蝿が入るだけで蝿男になるの?


「まぁ、発明家の消失はよくあることだから気にしないでおこう。」


この時の私達はこの事を深く考えていなかった。

源蔵に送られてきた爆弾と連絡がつかなくなった英雄達の事を。





私がこの世界に居るのが残り一週間になった日、団地が何処かの島に飛んでいった。なにを言っているか分からないかもしれないけど、朝のキッズタイムの特撮、仮面マスクヒーロー・大和を見ていると、団地がロケットみたいに飛んでいって地図に載ってない島に着陸した。


「AB班は機材の準備をしろ。C班はルートの安全確認と除草作業、D班は全員分の体操着とブルマの準備で、E班が」


部屋から出ると団地前で慣れた手つきで住人に指示をしている源蔵が見える。

いったいこれはなんなのと私は5階から飛び降りて源蔵の元まで向かうと源蔵は私に気付いた。


「おお、ルイコ、喜べ。お前が見たかった英雄の凄いところが見れるぞ。」


「どう言うこと?」


「今日から3日ほど、英雄運動会が始まる。英雄運動会は英雄末裔や生まれ変わりのみ参加可能の運動会で、古今東西様々な地から集まり競いあう。まぁ、やることは普通の運動会とは大して変わらんがな」


「急に団地が飛んでったのって」


「事前に通知していたはずだぞ?…北斎め、回覧板を送らなかったのか?」


また面倒な事をしてと愚痴る源蔵。

とにかく、今日から3日は英雄の身体能力や凄さが生で見られる。どの人を仲間にすれば良いか判断できる。どの人を仲間にすれば良いのか悩んでいたから私にとっては最高の機会だ。


「因みにだが、運動会と言っているが他にも色々とやるぞ。」


源蔵は20センチ有るか無いかの自作のロボットを何処かから取り出してそう言う。


「ロボット発表会?」


「いやいや、ロボバトルだ。発表会なんてくだらん事はしない。」


昨年はエジソンに負けて準優勝したが、今年こそ俺が優勝する。と意気込む源蔵。

運動会なのにロボットバトル大会をするの?


「今年から鳥人間も認められたからな、腕が鳴るぞ。」


「鳥人間って、確か人力飛行機のやつ?」


なんか、源蔵に手伝ってくれってTV局からオファーが来てたよね?


「ああ。英雄が作る物は一般人の作る物と比べ物にならない高品質で、過去にライト兄弟の子孫が鳥人間コンテストに出た際にぶっちぎりで優勝して英雄全員が国から出禁をくらっていて見せ場がないのかと諦めていたが、今回俺が総責任者を勤める事になったから、偉い方に申請したら通ったんだ。」


普段は冷静でクールな源蔵だが、子供のように無邪気になりワクワクしている。


「そこまで嬉しいの?」


「嬉しいさ。俺達英雄の子孫は大抵のスポーツやコンテストの出場を国から禁じられている。現代社会が一般人に住みやすい社会だから仕方ないとはいえ、全員不満で、この英雄運動会はその不満を解消する行事でもあって、電子工学系の大会に出れない俺にとっては最高の日だ。」


凄い奴はもうこの時代には必要ない。文化水準を高めるのが今の時代だとも言う源蔵。

そんなものだろうかと思っていると、アタランテがやって来て私達に体操着を渡してくれた。


「源蔵さ~ん、コンセントが分かりません!」


「あいよ!」


雛壇型の舞台を設置している人達が助けを求めたので、源蔵は手伝いに行った。

あの雛壇型の舞台、何処かで見たことがあるような?。て言うか、なんで運動会で雛壇が?。


「今年もクイズか…」


「あ、思い出した。」


アタランテの苦々しい言葉で思い出した。

あの雛壇は一昨日やってた、オールスター感◯祭で使ってたパネルとかだ。何処かで見たことがあると思ったら


「あんな物を借りて、お金とか大丈夫なの?」


「…?、スポンサーとか協力とかのテロップを見てなかったのか?」


「見てないけど…」


「雛壇はともかく、機材を作ったのは源蔵の母上、平賀理恵ひらがりえで、TV局は借りてるだけなのだぞ?」


「え、そうなの!?」


今明かされる驚愕の事実。あれは源蔵のお母さんが作ったもの。

アタランテが言うには、発明家の偉人の子孫や生まれ変わりの人達に数百万円前払いするだけで、最上級の物が出来るから、TVに必要な機械類の機材作成を依頼する事が多く、源蔵はとあるところと10年契約をしている。


「他の英雄もそろそろ来るから、着替えておけ。」


「あ、うん。」


アタランテに言われた通り、部屋に戻って体操着とブルマに着替えに行った。





「え~本日はお日柄もよく、明日、明後日も俺が飛ばした気象衛星に異常が無ければ晴れらしく絶好の英雄運動会日和で」


英雄運動会が始まった。途中なにか揉めてたみたいだけど、英雄運動会が始まった。

最初は総責任者である源蔵の挨拶で、町内会の運動会のノリで喋っている。


「今年は家の両親が総責任者を勤める事になってた筈なのに、俺の方がスペック高いとか言って押し付けて来ましてね。まぁ、そのお陰で念願の鳥人間が出来るようになったから、不満はありません。」


「源蔵~校長の話じゃないんだから、そろそろ終わりにしろよ~。じゃないとスポンサーが苦情をそろそろ入れてくるぞ。」


「あ~はいはい。取り敢えず今年優勝は俺のもんじゃ!!アタランテと一緒に九州の新婚旅行をしたいです。以上。」


源蔵が挨拶を終えると、リア充が爆発しろ!!と盛大なまでのブーイングが蔓延った。

アタランテは呆気た顔でマイクを手に取り、今回の運動会に協力してくれたスポンサーの紹介をはじめる。


「七福神、ハクタク、YUUHI、HAKODATE、ビントリー、ワクドナルド、以下世界の金持ちランキング100位に入っている者達が今回のスポンサーだ。」


ビール会社、多っ!

てか、カメラとか黒いスーツにサングラス姿の人があったりいたりする理由ってそれなんだ。


「え~では、皆さん、彼方の雛壇に着席をお願いしますね。オー●スター感●祭と同じように進行しますので」


源蔵が司会席に立ち、英雄運動会参加者を席へと誘導する。

私も席に行こうとするとアタランテに掴まれ、司会席に連れていかれた。


「え、私こっちなの?」


「私達はクイズには参加できない。と言うか、ルイコ、お前はクイズが出来るのか?」


この世界の常識とか未だに分からないし、娯楽系の問題とか答えられないから無理ね。


「それ以前に英雄運動会に一般人は出場できない。司会者とかお手本とかを見せる役をルイコがするんだ。」


「え~」


出れないなら、こんな格好するんじゃなかった。真夏だから紫外線で肌が焼けてしまいそうだわ。


「全員席に座ったな。毎年色々な人が言っているが、強い戦士や英雄はもう必要ない。今は学歴社会で、脳筋はいらん。如何に現代社会に馴染めてるかクイズをする!」


「全員、スダンダップ!」


これ、色々と怒られないかな~


「先ずは軽めの第一問だ。」


…うわぁ、分かんない。

司会者の机のモニターに問題が出ているが、答えが分かんない。


「準備運動にも使われる日本のラジオ体操第一、最初に伸びの運動から深呼吸で終わる13種類の体操があります。7番目にする体操はどれでしょう」


「ス、タ、トー!」


私の掛け声と共に一斉にパネルとにらめっこを始める英雄達。

司会席のパネルには3番の体をねじる運動が正解だと表記していた


「あ~そこ、歌わないでください。強制的に失格にして退場にしますよ。」


ラジオ体操第一を口ずさんでいる人…えっと、スカサハ(本人)に注意をした。

ここにいる人達って古今東西の英雄だけど、日本に住んでる人達よね?…そんなに悩むものなの?


「はい、終了。答え合わせだ。」


源蔵がポケットからリモコンを取り出しボタンを押すと、英雄達の使っているパネルに答えと解答者数が出る。

そして、6割ほどの人が失格になり顔を隠した。


「お前等、酷すぎるだろう。ラジオ体操は中学で習うし、小学生の夏休みの時にはスタンプ目当てで学校にやりに行くだろう。」


「今どきそんなピュアな小学生いねえよ。」


とは言いつつもちゃっかり正解をしている北斎。

この人、何だかんだで色々と出来て賢い凄い人なんだよね…。


「それは、お前だけだ北斎。私や源蔵、それに新参者のルイコでさえ毎日ラジオ体操はしているぞ。」


「え~流石に総責任者側からして、初っぱなから6割以上が失格は予想外だ。なので、一個目のアトラクションをします。英雄スポーツチャンバラぁあああ!!」


源蔵の掛け声と共に沢山の人達が叫ぶ。

よくよく見ると、叫んでる人達が全員、武勇により歴史に名を残した人達の子孫や生まれ変わりだ。


「英雄スポーツチャンバラのルールは簡単、頭に風船をつけて、俺達が用意した」


「ルイコ」


源蔵がカメラ目線でルール説明をする中、私とアタランテは司会席から仮設の倉庫に向かう。

私とアタランテは英雄スポーツチャンバラ用の風船と剣や槍等が有るらしく、それを渡す役をしないといけないみたい。


「凄い…」


「今年も面白い戦いがみれるな。」


風船に空気を入れて膨らませていると、何時の間にかスポーツチャンバラ参加者が一列に並んでいた。

参加者全員が勝つ気満々。闘志を燃え上がらせていて闘気が出ており、一列に並んでいる為か闘気がくっついてとてつもなく怖い。


「ルイコよ、誰が勝つと思う?」


「アキレウスさんじゃないんですか?」


出場選手全員に風船と武器を配り終え、会場設備の準備中にアタランテが聞いてきた。

やっぱりギリシャ系のSランクであるアキレウスさんが優勝するんじゃないかな?。他の英雄と比べても、文字通り次元が違う。


「やはりそう考えるか。」


口元を上にあげて微笑むアタランテ。

どうやら違うみたいで、誰が勝つのか聞こうとすると、試合準備が整ったので会話は中断した。


「え~毎年、こういったバトル系の競技で言ってるけども斬撃飛ばしたり、気で刀を作ったり斬れ味をあげたりするな。自分の腕を試すんじゃなくて、ストレス発散が目的だからな、この大会は」


「大丈夫ですよ、源蔵殿」


源蔵が注意事項を言うと、十兵衛さんがしないと返事をする。十兵衛さん、来てたんだ。


「んじゃ、ピストルの音を再生するから、鳴ったら試合開始、各自自由に動けよ。」


源蔵の合図と共に一斉に動き出す出場選手。

隅っこなどのベストポジションを取ろうと早速、争いが起きようとしていた。

ピストルの音が鳴ったら戦闘を開始して良いのだが、なる前に攻撃したら強制的に失格なので、誰も攻撃だけはしない。


「…あ、ごめ。スイッチ押し忘れた。」


ふと思ったけど、わざわざ音楽プレーヤーで再生する必要あるの?


「睨むな、フェルグス。審判の銃の握り具合で音が鳴る瞬間とかが分かるから不公平と言う事で、こうしているんだ。誰にだって失敗があるから許せ。そう、平賀源内が誤って人を殺したように。」


『パン』


あ、フェイントを入れた。

源蔵がスイッチを押し忘れたと言うのは嘘みたいで、何事もなく銃声が再生された。


「っち、引っ掛からんか。」


歴戦の覇者の子孫や生まれ変わりのみが参加している為に源蔵のフェイントに引っ掛からず、戦いを始める。

どんな戦いになるのかな?と試合を見ていたら、二刀流の男性、宮本武蔵の子孫と長いスポーツチャンバラ剣を持ったポニーテールの女性以外は風船を割られていた。


「え、え、なにがあったの?」


「ほんの一瞬の間に、あの二人が風船を全て割った。」


瞬きすらしてないのに、一瞬をも越える速度で風船を割ったって、何者…待てよ。


「もしかして、あの女性って宮本武蔵最強のライバルの」


「ああ、佐々木小次郎の子孫だ。」


「やっぱり…」


どちらも最強と言ってもいい天下二分の侍。侍系の英雄のSランクだったけど、まさかここまで強いだなんて。


「やはり私と貴様が最終的に残るか…」


小路恵こじえよ、俺の五輪の奥義か貴様の秘剣燕返し、どちらが上か久々にやるか。」


武蔵と小路恵、互いに構え一歩も動かず牽制状態になった。

何時動くのか、何時動くのかと3分ほど待つが動かなかった。


「勝負の世界がどんなのかは知らんが、気力勝負の持久戦するな!後、1分以内に動かなかったら…二人とも強制的に失格でくじ引きで勝者を決めるぞ。」


余りにも長く牽制状態になっていたので、しびれを切らした源蔵。

いくらなんでもくじ引きで勝者は無いよ。確かに運も大事だけど。


「流石に判定敗けは御免被るぞ。」


「奇遇ですね、私もです。」


失格にさせられないために、決着をつけようと互いに振りかぶり交差した。


「…やはり、歴史にはあながえないのですね…」


宮本武蔵と佐々木小路恵、二大剣豪の勝負の結果は宮本武蔵の勝利。

小路恵は力が抜け、地面に倒れた。


「見えなかった…」


小路恵と武蔵、二人の攻撃が見えなかった。

目には自信があるのに、二人の攻撃は全く見えなかった。


「アレが最強の侍、宮本武蔵と佐々木小次郎の子孫、毎年剣を使った競技で優勝を奪い合っている二人だ。」


とアタランテは言った。


「おい、小路恵。カッコよく倒されてるのはいいが、ノーダメだろう。次のクイズをしたい。さっさと起きろ。」


「あ、はい。」


小路恵を含め倒れされた人達は体をゆっくりと起こして、私達の所に向かってきた。

最後がなんで締められないんだろう…


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