EP2 最終兵器、KAKUHEIKI以外でお願いします! ①
「ホットドックお待たせいたしました!」
女体化しているせいで体格(主に胸)が変わりヤマトに変身できないために悪夢帝国の本拠地は性転換銃を作ってから攻め込むことになった。
特別な道具が必要な訳ではないが、光線銃なので地味にレアな材料が必要で数日かかるらしくその間にセラヴィスの就活の手伝いを私はすることにしたんだけど。
「なんで私まで手伝ってるんだろ」
「そう言わないで。
美女が3人居ることにより売り上げが上がってるから、少しバイト代弾むよ。」
下手なところで仕事するよりも、知っている人が居るところでバイトをした方が良いとキヨヒーを紹介してくれた陽人。
補習があるからと私とセラヴィスを置いて学校に行くと東さんが私まで手伝わせた。
「まぁ、弾んでくれるなら良いんですけど」
「人間の仕事が此処まで辛いとは」
まだピークになるお昼前なのに根をあげている。
甘いな~、この程度で根をあげてたらこの世界で行きていけないよ。
「この調子で借金を返せれば良いんだけど…」
今までの売り上げと借金を比べて電卓と向き合う東さん。
不景気だからやっぱり売れてないのかしら?
「ところでセラヴィスちゃん、どうするの?」
「なにがですか?」
「ルイコちゃんと源蔵くんが悪夢帝国を倒すんでしょ?
店長的には赤字にする諸悪の根元である敵を倒してくれるだけで万々歳で、嬉しいけど君はどうするの?」
「どうするとは?」
「この世界に留まるの?
夢王国でそれなりの地位を持ってるって聞いたけど」
「私は…その、なんだ…す、好きだ。陽人が。
身一つで何もない私を、本来ならば関わりたくない私を拾ってくれたんだから。」
拾わなければ危ないのが分かっていたから拾ったことは内緒にしておこう。
それにしても、陽人とセラヴィスがカップルになって結婚…うん、お似合いだね。
「じゃあ、それまでに結婚資金なりなんなり貯めないとね。」
と言いつつ小麦粉を溶かしておいてとセラヴィスに頼み込む東さん。
ちゃっかりしてるな、この人は。
「そう言う東さんに相手は居るんですか?」
「…海里がね、店長に近付くお客を裏で消してるんだ。最近の女子中学生ってスゴいよな。妹ながら恐ろしい。」
そう言うところもカガリとそっくりなのね。
でも、なんでこの男に愛を向けているのかしら…駄目ね、やっぱり重なっちゃう。東さんとアイツを。
同一人物だから似ていて仕方ないけど、それでも…
「店長、今すぐ火を消してくれませんか?」
「了解。」
悪夢帝国がやって来たのを察知し、優しい表情から一転しキリッと顔を整えるセラヴィス。
陽人や夢守護者が居ないところを狙ってくるだなんて…卑怯よ!
「この時間帯に悪夢帝国が襲撃なんて、はじめてだな。」
「そりゃあ毎度毎度ボコられたら、自分達を倒す存在と倒せる強さを持ってる陽人が居ない時間を狙いに来ますって。」
私とセラヴィスは周りに危険な物や一般人などが居ないかを確認する。
何名か公園に居るのが確認できたのでセラヴィスに他者を眠らせる魔法をかけてもらい眠らせて、移動販売車付近に寝かせた。
「幹部クラスが来るかもしれない。ルイコさん、油断しないで!」
「なんで分かるの?」
「基本的に悪夢帝国は悪夢獣と呼ばれる怪人を作って来る。
悪夢獣は悪夢帝国の持つ技術で人間の悪夢に実体を持たせ改悪したもので、悪夢獣を作る際に使う人間の悪夢は夢守護者が通っている聖ヴァリエール学園の生徒の悪夢だ。
この時代の人間は色々と悩み多く、成長期の子供ほど強烈な悪夢を見やすいのはいないので魔法を使って不幸な目に逢わせたり精神を揺さぶったりして聖ヴァリエール学園の生徒の悩みを悪夢に昇格させている。
悪夢は人間の悩みから生まれるもの、故に悩みが解決したり溜まっているストレスを発散させ終えれば消えてしまうので、悪夢獣は出来て直ぐに此処に連れて来るんだ。」
「普通の人の悩みの可能性が」
「いや、それは無い。
社会人は飯を食えるレベルの金を持っていて、ストレスを発散する方法を知っている。
自殺する位に切羽詰まっていない限り、見る悪夢が聖ヴァリエール学園の生徒が見る悪夢より程度が低く悪夢獣にしてもたかが知れている。それこそ店長ですら倒せるほど。」
子供は子供ゆえになにもできない。
色々と待遇されているけれど、大人としては扱われず、大人の作ったルールの中でしか動けない。
英雄団地で近年学校が酷くなっているって源蔵は言っていた。
ストレスが溜まる、悩みが増える。そしてそれを発散する方法はあるが金が掛かってしまい学生では難しい。
子供は純粋な分、黒い部分もあっという間に黒くなる。悪夢帝国は意外と分かってるわね。
「幹部は全員悪夢帝国の住人だ。
昨日襲ってきたのは美の悪夢人、魔女・メディア。
仮に奴が襲ってきたのならば、非常にまずい。相性が悪い。」
「どうして?」
「悪夢人は悪夢獣の上位互換的な存在だ。
例えば、ダイエットに関する悪夢で悪夢獣を作り出したら相手のカロリーを増やす、もしくは減らす力を持った悪夢獣になる。
悪夢人は自身の得意とする属性を、悪夢の力を自由自在に操れ、ダイエットは美に関する悪夢!故に、私達のカロリーを奪い栄養失調を起こしたりすることができる!」
ちょ、なにそれ!
子供向けアニメみたいなあのケバさんが尋常じゃない程ヤバイ力を持ってるっておかしくない!?
もうちょっと優しい感じな能力じゃないの?顔をカエルにするとか!?
「…来ないな。」
禍々しい気配はすると言うのに姿が見えず私達を襲ってこない。悪夢帝国からすれば邪魔な存在でしかない私達を襲ってこないだなんて、いったいなんのつもりかしら?
「まさか、私達を無視してこの公園の霊脈を地道に奪うつもりか!」
「塵も積もれば山となる作戦か、敵も考えてきたね~」
「東さん、言ってる場合じゃないよ!」
霊脈とかがどんなものかは分からない。
だけど、世界を支配しようとしている悪夢帝国がこの夢見市を無視して他の土地を狙わないようにしているんだからとんでもないものなのは分かる。
「来た…」
両肩に人を俵担ぎで抱えている、どす黒い紫色の鎧を纏った闇の騎士と言うに相応しい悪夢人が現れた。
この悪夢人、昨日のケバさんより強い。だけど、禍々しくない?
「見たことがない、新たな幹部か?」
「我は過去の悪夢、漆黒の闇より現れし騎士、パラドクス」
「過去の悪夢…」
「そう、貴様達子供が子供の頃体験した事は全てが良いものではない。
我は消したい過去を司る悪夢人、大人でしか分からぬ苦しみ、真の悪夢を見せるもの」
「ちょっとヤバイな」
パラドクスを見て顔を青ざめる東さん。急いで源蔵を呼び出そうとする。
「確かにあのケバさんより強い!だけど、二対一ならなんとか」
「無理だ、もし店長の予想が正しければ…正しければ…」
「見よ、深遠なる闇の力を封印されし異なる二色の眼に宿りし力を!」
右眼の瞳が青い六芒星に、左眼の瞳が十字架の様に変えるパラドクス。
瞳を変えると地響きが起き、地面が崩れていく。
「な、なんだこれは!?」
「消したい過去、大人になってから分かる苦しみ、オッドアイに封印に漆黒…間違いない、コイツは中二病の力を実際に使える。」
「見せてやろう、我が邪眼の恐ろしさを!」
っ、ヤバい!
東さんが何を言っているかわからないけれど、地面から炎が吹き出した。
地震を起こして地殻に影響を与えるなんて、とてつもない力を秘めている。
「熱い…」
炎のせいで周りが暑くなり汗をかきだす私達。
銃を使って周りを凍らせる弾を撃って温度を下げる?…無理ね、地球から溢れでる炎は凍らせれない。
「ルイコ、魔眼だ。
地震を引き起こしているのはあの魔眼だ。」
三矛を何処からか取り出すセラヴィス。
堂々と邪眼とか言ってたから、あの眼を潰せば全て収まる!
「ルイコ、サポートを任せたぞ!」
「OK!」
パラドクスに向けて突撃するセラヴィス。
私は高く跳んでナイフを投げて、パラドクスの意識をセラヴィスに向けさせないようにするが全てサーベルで弾かれ、セラヴィスは蹴り飛ばされる。
「っぐ!…この強さ、次元が違いすぎる。」
「二人共、持久戦だ!
そいつが中二病患者が言っていることが出来るなら、持久戦に弱い!」
「何故そう言える!」
「俺の力は数分しか使えない、それ以上は命が、故に普段は封印をは常識だろ!?」
…え、もしかして東さん元中二病患者?
一発でパラドクスの凄さを見抜いたのって、元中二病患者だから?
「っふ、流石はこの土地の主だ。
確かに我の力は余りにも強すぎて自身でも制御できないじゃじゃ馬で、10分しか持たない。」
「いや、ただの移動販売車の店長だから!土地の主とか言うんじゃねえ!!」
カッコよく東さんを呼ぶパラドクス、東さんは恥ずかしいからやめろと眼孔を開いて言う。
10分…セラヴィスに入れた蹴りを見て、ギリギリ持つレベル。
この体力を奪う炎の中で戦ったら、撤退させる事が出来るか出来ないかのどちらか…
「あ、源蔵くんに繋がった!もしも~し!」
源蔵に連絡する事が出来た!
もしかすると撤退させる事が出来るかもしれない!
『北斎、じゃなくて東か。なんのようだ?』
「今かなり強い敵が来て、邪眼の力で地震起こしたりして地殻に影響を与えて炎を」
『地震?…あ~ルイコ、通信機器のカメラ機能を使え。』
「わかった。」
私は通信機器のカメラ機能を使う。
「え、なにもない?」
液晶画面にカメラのレンズが写しているものを写すのだけれど、さっきまで居たバク公園のままだった。
何で液晶画面に写っているのバク公園が炎が吹き出していないのか、地震を起こしていないのか考えていると冷めたい汗が眼に入る。
集中、出来ない!ハンカチで汗を拭こう!…ん?
私は汗を拭こうとする瞬間、有ることに気付いた。すると、噴出する炎や地震が止んで、液晶画面に写っていた何もないバク公園に戻った。
『3人が見ているのは幻覚だ。
魔眼とかは基本的に超音波みたいなのを眼から放出して、他人の神経を犯す。
暑すぎるからかいてしまう汗ではなく冷や汗を書いているのならば神経を犯されてる証拠だ。
無機物には効かないから、真実を見て、これは幻覚だって思えば自動的に戻る。』
「…戻った!」
「どうやら優秀な支援者が居るようだな。
しかし我の邪眼の恐ろしさは幻術ではない」
パラドクスの幻覚を解除したが、終わりではない。
異なる二つの邪眼が幻覚を見せるだけなわけなくまだまだ能力を隠し持っている。
やっぱ、私達の世界にいるゴルゴンみたいに見たら石化する能力かしら?
「ルイコ、君は遠距離攻撃が得意なのか?」
「ええ、銃もあるわよ」
自慢の銃をセラヴィスに見せる。
この国は銃を持っているだけで犯罪だから、下手に使えない。
今はそんな事を言っている暇は無い。
「え、ちょ、銃!?
拳とか槍とか弓矢とかのコミカルな物だと聞いてるのに、え、え、なんで!?」
私が銃を見せるとさっきまで中二感満載だったパラドクスの口調がおかしくなる。
やっぱりなにかおかしい、私達を倒そうと思えば倒せるのに、東さんを狙おうと思えば狙えるのに狙わない。
「どうやら銃が弱点のようだな。」
本人の力関係なしに誰が使っても同じな武器が弱点と見抜くセラヴィス。
よ~し、弱点が分かったことだし、お返しといきますか!
「セラヴィス!」
「補助は任せろ!」
三度突撃するセラヴィス。
今度は私の銃口に意識を向けさせないために、突き、斬り、蹴り、殴り、四つの攻撃を巧みに組み合わせて戦う。だけど
「甘いわ!!」
「ーーー!!」
たった一発の拳で沈められた。
巧みに組み合わせた攻撃は全くと言ってパラドクスに効かずダメージがない。
「全く手間とらせないでくださ…いちいち下らぬ真似をしよって。」
「…貴方、何者なの?」
「我は過去の悪夢人・パラドクスだ。」
「嘘よ、貴方からはあのケバいおばさんから感じる邪気を感じない。」
「当たり前だ、私の力は過去の悪夢の力。」
「自身で闇と言っているのに禍々しくないのっておかしいわよね」
「…」
この人はいったい何かを隠している。それさえ見抜ければ…
「貴方は陽人を倒すために作られた存在?」
「…さて、我の目的は世界を支配することだ。」
パラドクスが質問に答えるまで一瞬だけ沈黙の間があった。
陽人を倒すために作られた存在、陽人はすごく強いけど一般人って言ってたから多分だけど魔法が使えない。
圧倒的なパワーと強力な術が使える敵、陽人にとっては弱点のような存在。
「私が悪魔帝国を倒すって言ったんだ、此処で倒さないと」
「ふ、愚かな。」
倒れていたセラヴィスの顔を掴むパラドクス。
撃てるものなら撃ってみろと言いたいばかりに構える。
「人質なんて…」
「卑怯か?生憎だが、勝てば良いのだよ。」
サーベルでセラヴィスの首筋を撫でるパラドクス。
…セラヴィスごと貫けば、パラドクスを倒すことができる。でも、それをすればセラヴィスが死んじゃう。
もし源蔵なら…あれ、どっち言うんだろ?殺さないでって言うのかしら?…源蔵じゃなくて私なら…
「おい、何してるんだ?」
「!?」
第3の手段を考えるけれど、東さんが陽人を呼んでくれた。北斎と一緒にバイクに乗ってやって来た。
セラヴィスは人質の状態だけど、3人がいれば逃げるかもしれない。
「サンタイイチハサスガノワレモキツイ。」
「なんで急に片言になってるの?」
「…」
あ、逃げた。
私の質問に答えることなく、セラヴィスを置いて逃げた。
片言になってるのって、やっぱり陽人が関係あるのね!
「一枚納めとこ」
逃げるパラドクスを見て自身じゃ捕まえれないと判断する源蔵。ポラロイドカメラでパラドクスを撮影する。
あの距離じゃ、実弾でも魔弾でも一般の人に見られちゃう。ここは一旦
「逃げんじゃ、ねえ!!」
諦めようとした矢先、陽人が公園に落ちている石を全力で投げた。
投げた石はパラドクスに向かい、サーベルで弾こうとするも、逆にサーベルが折れてしまい顔に直撃した。
「いったぁあああああ!?」
「…ん?」
「どうしたの?」
「今の声、まさか。」
石が顔に直撃した際に鼻血が出て痛みに苦しみのたうち回るパラドクス。
大声で叫んでおり、陽人がパラドクスの声に反応し、パラドクスの顔を掴み引っ張ると、パラドクスの顔が取れた。
「ええ!?」
「お前、なにやってるんだ?」
あ、取れたんじゃなくて覆面だったんだ。
覆面の下は普通の男の子…オレンジ色の角刈りのイケメン…あれ、なんか
「陽人に似ている?」
「面白い結果が出たぞ。」
ポラロイドカメラから出た複数の写真を現像していた源蔵。
写真にはパラドクスの後ろ姿が写っていた…レントゲン写真で。他の写真は何かのパラメーターのようなもので、今度は陽人をポラロイドカメラで取った。
「あ~そう言うことか。」
「どういう事?」
陽人の写真を現像した物を見て納得する源蔵。
臓器とかのレントゲン写真に特におかしな所は無い。あ、でもパラメーターの方が似てる。パラドクスと似てる。
「お前さ、なにやってんの?」
「それはこっちの台詞だよ!」
「いや、俺の台詞だからな!
馬鹿だけど、お前の事を思って農業高校に進学したって言うのに」
「煙草と大麻の栽培方法とか農業高校で教えてくれないから!
確かに最近、農業体験ツアーを始めたから農業高校で習うことが役に立つけど」
「源蔵、もしかしてだけど?」
「見た目からして似てるだろ?」
「そのポラロイドカメラって」
「他人の臓器とか骨格とか体調とかDNAとかを写真やデータに変える俺の発明品、検査箱だ。」
「DNAって、あれだよね?一人一人の遺伝子情報」
「ああ。」
「限りなく似てるってことは」
あの二人はもしかして
「なんでお前が悪魔帝国の一員になってるんだよ!月光!」
「兄ちゃんこそ、捕虜がいるのにどうしてうまく使わないんだよ!」
兄弟!?