EP1 ヒーローも悪も大差変わんない ②
「死ねやごらぁあああああ!!」
真っ先に化粧水怪人をぶん殴る陽人。
化粧水怪人はパリんと割れてしまい、アッサリと死んでしまった。
「彼が来てしまった以上、逃げるしかないわね。」
「おう、帰れ帰れ。」
体に闇を纏わせ逃げるケバさん。
陽人はさっさと帰れと手を追い払うように振る。
「待ちなさい!」
「おっとそれは俺の台詞だ…テメエ等、またか…また営業妨害しやがってよ…最近じゃ海里ちゃんを誘ってるんだって?。
人が折角、敵の拠点を教えてやったっつーのになにやってんだ?ふざけるのも大概にしろよ?。分かってんの?分かってんの?」
陽人が来てからまだ3分も経ってないと言うのにアッサリと敵は倒され、ケバさんは逃げ、そしてこの世界の私達は説教をされる。
「凄い。あの人、滅茶苦茶強い。」
「魔法が凄いとか伝統技術とか伝説の武器とか未知なる力とかじゃない。あの男、単純な物理的な力だけであの怪人を倒したぞ!」
「ん…お前達の親戚か何かか?」
「あ、いえ…違います。」「さっき出会って、そっくりだな~って」
私達に気付いた陽人。
この世界の私達に親族かどうか聞いたが違うと言うと驚いた顔をする。
確かにこんだけ似ていて赤の他人ですと言われると信じられないよね~
「陽人くん、もうすぐシフトインを」
「あ、そうだった。
お前等、真面目に戦うかちゃんとした奴に任せるかしろ。じゃないとお前達へとことん嫌がらせをするからな!」
「「「はい、すみませんでした!!!」」」
東さんの掛け声一つで説教が終わり、変身を解いて制服姿になり全速力で逃げるように消えるこの世界の私達。
陽人は急いでエプロンに着替え、タイムカードを押してシフトインをした。
「あ~あ、勿体ねえ。」
焦げたお好み焼きや砂埃の付いた焼きそばを捨てる陽人。
海里ちゃんと東さんは化粧水怪人を破壊した際に飛び散ったローションを拭き取りだす。
「毎度毎度来やがって、彼奴等何時になったら自覚するんだ。
すみません、お客様。彼奴等この公園の名物的存在になりつつある疫病神でしてお好み焼き直ちに新しいのを作り直させていただきます。」
「あ、はい。
あの、さっきの奴等の詳しいことを教えてくれませんか?私達、あんなの見るの初めてで。」
ペコリと謝りお好み焼きを回収する陽人に詳しい事情を聞く。
「おい、ルイコ、一本禿の爺に電話するんじゃ…まさか。」
「うん、この人に決めた。」
さっきの人達も強いっちゃ強いけれど陽人の方が強い。
源蔵の時と同じでこの人じゃないと駄目だって言うのが分かる。
「この人に決めた?…まさか、お前等も彼奴等の仲間なのか!?」
「違うわ!」
陽人が私達を先程のケバさんやこの世界の私達と同じ存在だと思い、怒りや憎しみのみ籠った表情で睨んできた。
違う!私達は良い年してあんな姿になる女じゃない。世界征服を企むケバさんじゃない。
私達は陽人達に分史世界から来た事を教え、仲間を増やしに来たと言った。。
「イマイチ分からないがどちらにしろ、異世界から来たことには変わりねえんだろ?」
「確かにそうだけど」
「悪いけど、お好み焼き焼けたら帰ってくれないか?商売の邪魔になる。」
異世界の人間を知って帰れと言う反応、確実に何かある。
さっき言っていた敵の拠点を知っていることやケバさんを捕まえず逃がしたのを見てそう思える。
「あの子達やあのケバいおばさん達と何かあったの?」
「…なんか、この公園が凄い霊地とかでさっき作った怪人より凄い奴がポンポン作れるらしいんだ。
あのケバいババアは悪の組織の幹部で、兵長的なポジションで、上からこの公園を奪ってこいって、この街に住む人間の悪夢から怪人を、悪夢獣を作ってる。」
「また子供向けのアニメみたいな作り方だな。普通はクローンとかヒューマノイドが常識だろう。」
「いやまぁ、俺もそう思ってますけど。
でも所詮は夢の国だし。東京とか言ってる癖に千葉にある夢の国の方がまだマシな怪人を生み出すし。」
「いやいやいや、彼処は元ネタがあるから。オリジナルなの王様とか」
「ストーーップ!!」
話が脱線しかけてる。
触れてはいけないなにかに触れかかっている。夢の国とか触れちゃいけない!
「あ、すみません。
えっと、怪人を生み出してこの公園にある流脈のエネルギーを奪ってパワーアップするとかどうとかで、怪人を引き連れて来るんですけど」
「さっきみたいにあの3人組が遅れてやって来て倒す…んだけどね~」
「あの3人は頼りにならないです。人のことを言えないですけど、素人でガキで、鍛えることすらしないカス同然の正義の味方面している奴等には」
ギュッ握り拳を作り怒りを燃え上がらせる陽人。
確かにこの世界の私達は、弱いけれどそこまで言わなくても。
「お前、私情を混ぜて嫌ってるだろ。」
「…」
源蔵はなにかに気付いてそう言った。
そう言えばさっき、陽人が嫌がらせとかどうとか言ってたっけ。
「っと、そう言えば名前を名乗っていなかったな。
俺は平賀源蔵、諸事情により女体化してしまっているがれっきとした男で、土曜の丑の日を書いた平賀源内の末裔だ。」
「私はルーズ・イージコ・アンデルセン、ルイコって呼んで。」
今更ながらの挨拶。
陽人は律儀な人だと感じて、私達に向ける嫌悪感を少し無くした。
「さっき嫌がらせとか敵の拠点を教えてるとか言ってたけど」
「そのまんまですよ。
街のシンボルである夢見タワーを乗っ取ってるんす」
あ、あれ東京タワーじゃなかったんだ。
色とか形とか似てるけどやけに小さいと思ってたけど違ったんだ。
「悪夢と吉夢のせいでこの店、毎度毎度被害を受けていて。
幸い仕入れている食材の殆どが俺が通っている農業高校で栽培した所謂訳あり野菜とか小麦とかで格安なんだけど、ソースやマヨネーズの仕入れとかもあるから彼奴等のせいで商品が売り物にならなくて此処最近赤字で。」
「それどころか一回店が全焼しちゃったからね…出禁にして正解だった。去年は大黒字で連日賑わってたのに…」
出禁にしたってことはもしかして、彼奴等が店を全焼させたの?
「彼奴等の支援者に記憶操作する奴がいて警察に言っても証拠がなくて訴えることが出来ないし、俺達に出来ることは嫌がらせするしかないんだ。変身中に攻撃したり邪魔したりして仕事を奪ったりするぐらいしか。」
結果的にあの子達が戦わず済んでるだけじゃないのかな?
「なぁ、お前等異世界から来たんだろ?
悪夢帝国を倒してくれないか?敵の本拠地、割と直ぐにあるしさ。」
一万円あげるからさ~と一万円札を見せる陽人。
っぐ、欲しい。源蔵しかこの世界の通貨を持っていなくて、無一文の私にとっては喉から手が出るほど欲しい。
さっきのケバさんが幹部クラスなら私一人で親玉を倒せそうだし、倒しに行こうかな…
「お前、あの3人より強く敵の拠点を分かっているのならばどうして自力で倒さん?。
如何に嫌がらせの為とは言え、諸悪の根元である悪夢帝国とやらを倒せば全て解決する問題じゃないか?。」
金に目が眩んでいると源蔵が最もらしい事を言った。
「彼奴等を苦しめるためですよ。
大事な人生を命懸けの何時死ぬか分からない殺しあいで大事な青春を無駄にしてほしいんすよ。
馬鹿になって底辺の偏差値35位の高校にしか入れない悲惨な人生を歩まないかな~」
さっきの子供向けの悪よりも外道だ、この人。
でも、よくよく考えればあの子達は何時死ぬか分からない殺しあいをしつつ、学校生活を送っている。
それってとってもおかしいことよね。悪が居ると分かっているのに、自分達より強い人が居るのを分かっているのに、学校に通って勉強をして青春を楽しんでる暇は無い。
源蔵みたいに、悪でも正義でもない己の意思を主張したり気にくわないから殺しに来たりしてて戦っているのならば学校に通っていても不思議じゃないけど。
「言ってること矛盾してない?私達に悪を倒させれば、あの子達の苦しむ姿を見られなくなる。」
「俺にだって、間違ってる事を間違ってるって言って動く正義感はありますよ。」
「それならなんで今の今まで動かなかったの?」
ハッキリと言って、私は陽人と戦って勝てる気がしない。
源蔵が言っていた東洋人は神秘に弱いとかがこの世界でも通じるなら、銃で勝てるかもしれないけど、生命力溢れる気を触れずとも物凄く感じれるせいで勝てる気がしない。
そんなに強いのにどうして今の今まで動かなかったのかしら?不思議で不思議でしょうがないわ。
「学校で飼っている豚や牛なんかの家畜は殺せても、人間に近いババアとかを殺したり踏み台にすることは俺には出来ない。雑魚兵とか怪人はある程度のダメージを与えたら勝手に死ぬけど、あのババアは。こう、手から波ぁ!的なので倒さないと…」
「ごめん…」
今の今まで気付いていなかった。
圧倒的な力とかそう言うのを持っていたとしても、陽人は一般人と言うことを。
農業高校に通っていてキヨヒーでバイトをしている一般人だ。人殺しなんか出来ない。
「ルイコ、残念だが悪を倒すのも陽人を仲間にするのも無しだ。」
一般人を巻き込むのだけは絶対にしたくない。
現代社会の世界で未知なる力があるから人を殺してもなにも思わない奴が居ると思っていたが大ハズレだと源蔵はリュウジさんに連絡を取ってくれと頼む。
ハズレだけど悪の組織とか倒すべき悪が目の前に居るのに
「放っておいても最終的にはあの3人…いや、4人…まあ、何人か分からないが悪夢帝国を倒す筈だから俺達が手を貸す必要は無いんじゃないか?」
「海里ちゃんを含めないでくれ。店長の店を赤字にしてる奴って見ていて絶対に仲間になる気ないし。」
「…うん、無理。」
自分が戦う姿を想像するが、無理だなと感じる海里。
私としてもカガリに似ている子が戦って傷つくのは見たくないな。
「源蔵、どうせリュウジさんに電話しても魔力回復に一週間寄越せとか言うから倒しましょ?」
「…はぁ、仕方ない。倒しに行くか。
だが、今すぐには無理だぞ、戸籍なんかを用意したが住居とかそう言うのを借りていない。」
源蔵が納得してくれたけれど、まだなんにも用意できてなかったんだ。
ふと気付いたけれど、まだ1時間もたっていない。たった数十分の間に色々と有りすぎでしょ
「ん…戸籍偽造したのか?」
「結果的に言えばそうなるな。」
戸籍偽造は犯罪よね?警察に通報されないわよね?
来て早々、逮捕とか笑い話にもならないんだけど
「ルイコは中世風のファンタジー世界出身だが、俺は違う。
この世界と同じ現代社会の日本で英雄の子孫や生まれ変わりが住む英雄団地と呼ばれる所に住んでいる。
世界でも5人しかいないタイムマシン以外ならなんでも作れる発明家だ。戸籍偽造なんかお手の物。」
かなりカッコよく言っているけれど、やってはいけない事していると言っている源蔵。
「あのさ、戸籍偽造が犯罪でまた別の世界を旅したりする二人に頼むのは申し訳ないけど、もう一人分、戸籍を偽造できないか?」
「…どういう意味だ?」
もう一人分の戸籍等を偽造してほしいと頼む陽人。
現代世界って生まれて直ぐに出生届と言われる子供が生まれました~名前は○○で~何月何日生まれで~って言う書類を出さないといけないよね。国の義務とか法律とかよね?
「彼奴等に力を与えたりする支援者がいるように、俺達にも支援者が居るんです…ヒモだけど。」
「ヒモ…つまりルイコと似た感じか!」
「源蔵、貴女とちょっと軽く殴りあわないといけないみたいね。」
「じゃあその前に今まで使った金払え。」
「すみませんでした。」
私と陽人達の支援者が同じヒモであると言われ、軽く源蔵と肉体言語で会話をしたいと言ったけど金を前に私は謝るしかなかった。
うん、そうだよね、お金は大事だよね。現代世界では源蔵がいないと話にならないから、本当にごめん。
お金の魔力には勝てない。
「取りあえず、バイト終わるまで待っててください。
不動産屋は右側の信号を4ついって左に曲がればありますので。」
「おぅ、分かった。」
「格安アパートか。」
「学生寮とかあるらしいんですけど、学費にプラスしないといけないんで。農業系の学校って意外と金がかかったりするんですよ。」
陽人のバイトも終わり、格安の賃貸契約を済ませマンションと呼ばれる建物とはまた違う小さい集合住宅、アパートと呼ばれる場所に来た私達。
「お~い、帰ったぞ。」
自身が住むアパートの104号室に入る陽人。
玄関には女性用の靴があり、陽人以外に住んでいる事が一目で分かる。
「年頃の男女が同居とは…」
「いや、源蔵も似たようなものでしょ?」
「俺は親公認だ。アタランテが『源蔵を私にください!』と親父とお袋に…」
デリカシーの無いことを言ってしまった。
源蔵は妻以外の全てを、両親や友達、研究所を捨てて私の仲間になった。
出来る限り振れないようにしていて、源蔵も顔を出さないようにしているけど…辛いのには変わりない。
少し気まずくなったが私達は中へと入った。
「お~い、起きろ。セラヴィス。」
TVとゲーム位しか無い6畳一間の一人暮らしするのには申し分のない一室。
学生寮の方がお金が安いんじゃないかなと思うんだけれど?…あ、風呂が無いのか。
「…は、陽人!」
「客だ。」
押入れを開けると其処には銀髪の綺麗な美女が寝ていた…タンクトップと短パンと言う余りにもラフすぎる格好で。
とても綺麗でこの世界の私達は余裕で倒せる強さを持っているのが分かるぐらい強いのが分かるけれど、ラフすぎる格好で全て台無しだ。
「その二人は、まさか!」
「似てるけど違う。」
私達を見て何か勘違いし考えるセラヴィスさん。
この世界の私達を連れてきたと思ってるのならば大違いだよ。
「この二人はお前の戸籍を作り悪夢帝国を倒して貰う、異世界から来た人。」
「…私の戸籍、必要なのか?」
「…は、そうだった!!」
セラヴィスの一言により雷に直撃したかのようになる陽人。
悪夢帝国を倒すことによって、セラヴィスの戸籍が必要なくなるってどういう意味?
「だ、だが私はお前が望むのならこの世界に留まっても、か、構わん。」
顔を真っ赤に赤らめモジモジするセラヴィス。
ああ、完璧に陽人に惚れているな。
て言うか、嫌味なのかな。運が悪いのかな?、源蔵とアタランテといい、陽人とセラヴィスと言い彼氏が目の前で死亡フラグを建てて殺された私に対する嫌味なのかな?
ノロケ話やイチャイチャする光景が此処最近多いのか、私は物凄いストレスが溜まった。
「まぁ、行く場が無いんだったらな…」
「で、この女は何者だ?
戸籍が無いと言う所からおかしいのは丸分かり、1から10まで洗いざらい教えろ。」
「実は私は悪夢帝国が支配しようとしていた夢王国の戦士で、数千年前」
「よーし、大体わかった口を閉じろ。」
まだ全くと言って説明をしていないのにセラヴィスの口を閉じさせる源蔵。
今ので分かる事って…
「この人、下手したらアタランテよりも歳上のお婆さん」
「違う、私はまだ14だ!いや、年寄りと言う考え方は間違ってないが!」
「そのおっぱいと体格で!?」
Gカップはある巨乳に、170はある背丈、何処からどう見ても14に見えない。
ウエストも細いしヒップも安産型の程よい形だし、目立って神秘的な紫だし…詐欺だ。
「海外の血は化け物か、アレで14とは」
「海外じゃなくて異世界なのだが…」
「大して変わらんだろ。」
外国から来た人が日本に来ると異世界に来たみたいってよく言ってたけど、その逆ははじめてね。
それにしても源蔵、全然セラヴィスの事を聞いてないのに戸籍なんかを作って大丈夫かな?
「学校とか保証人とか老けてないだけで実年齢はBBAだから今年16になる中卒扱いにしておくぞ。」
「中卒…このご時世、結構キツいから」
「お前が養え。」
高校通っている設定はさすがに無理と言う源蔵。
あ、今Hな事を考えた。陽人、Hな事を考えた。
セラヴィスのおっぱいとか太ももをチラチラ意識し出した…嫌らしいぃ~
「にしても、お前、よく拾ったな。
数千年前の戦士で闇落ちしてて、闇落ち中は歳をとらなかった追加戦士的なヒモを。」
節約しないといけない学生で養うのも一苦労なのに、色々とカツカツじゃないのかと言う源蔵。
陽人は自分が拾わないとなにがあるかわからないとセラヴィスを見つめる。
「君は私がどうして歳をとらなかった事が分かるんだ!」
「最近のヒーローものの追加戦士は数千年前の戦士で、当時の敵を倒せる力がなく、闇の力的なので一時的にパワーアップして敵を倒す。倒せたけど力が制御できなくて封印されるか、敵になって闇の力を纏う前の記憶を無くすか、敵の生き残りに身体を乗っ取られるかのどれかで、数千年前の戦士で14歳と言っている時点で大体分かる!」
「確かに私は数千年前の戦士で、当時最大の悪夢獣であった終末の鴉を倒すために悪夢と吉夢、両方の力を使い戦って勝って、その後に」
「聞いてもない事を答えんでいい!!。」
詳しいことを説明しようとしたセラヴィスを源蔵は一喝し黙らせた。