EP4 終わりも悪く、倒されても第2第3が出てくる③
「さぁ、皆、私が先陣を切るから行くよぉ!!」
「待たんか!」
「なに?」
ギリギリの所で電磁バリア装置等の設置を終えた。
望遠鏡で見れば侵攻部隊がやって来ているのが分かり、全員の指揮を高めていると源蔵が止めに入った。
もういったいなんなの?皆のやる気が無くなっちゃうじゃん!
「お前、なんだその格好は?」
「戦闘用の衣装だけど?」
「何処がだ?」
「ヘソだしは重要なポイントだよ!ね、皆!」
「ヘソや谷間は最高です!!」
「このエロ騎士が…」
私の戦闘用の衣装は源蔵達の世界では数百年ほど前のアメリカの服装で、西部劇でよく使われるウェスタンルックのヘソだし衣装。
テンガロンハットには本当に10ガロン(38リットル)入る優れもので、腰には自慢のリボルバーとオートマが一丁ずつある。
「中世風の異世界に開拓時代の服装はおかしいっつーか、鎧だろう。普通は」
…あ~そう言えば源蔵には一度も戦う姿を見せてなかったっけ。
アタランテが居たから活躍する機会がなく、近距離戦闘もそれなりにこなせるから分かりにくいかもしれないけど、私は遠距離攻撃を専門にする砲兵。
その中でも私は二丁拳銃に魔法を込めて圧縮したり拡散したりして放つ、この世界には数人しかいない魔法砲兵。
「…そう言えばナイフとかを投げてたなお前。」
遠距離攻撃や重火器を使った戦闘が得意だと伝えると顔に手を置いてやらかした表情になる源蔵。
え、もしかして、なにか言わないといけなかった事を言ってなかったの?やっちゃったの、私?
「言ってくれれば、そんな豆鉄砲じゃなくて龍殺しのSFチックな銃を作ってやったのに。」
龍殺しって、そんなものまで作れるんだ…
「その内飛竜部隊とかと戦うから、それまでに作っておいてくれたら良いよ。」
私は源蔵にそう言うとミゴヤを守っている電磁バリアから出て、アークの侵攻部隊に二丁拳銃を向ける。
「アーク、私の顔を見て誰か分からないかしら!」
顔をクイっと上にあげて自分の顔をアークの侵攻部隊に見せつける。けれど、反応がない。
「ルイコ、声届いてないぞ。」
「…///」
恥ずかしい!源蔵に言われるまで気づかなかった。
言われてみれば、距離がそれなりにあって、物凄く視力が良くないと私が誰かわからないし声も聞こえない。
私は源蔵からメガホンを受け取り、もう一度同じ事を言った。すると、今度は反応があった。
「俺にとっては防衛戦じゃなく戦争の始まりだからあえて言わなかったが、なに勝手に自分が生きているって言っているんだ?。」
「あ…」
そうだった、私は死んだことになっているから奇襲とか出来たのに。私が生きてるのに気付いた侵攻部隊、なんの迷いもなく広範囲破壊系の魔法を使ってきたよ!
「はい、全員退避ぃいいいい!!」
流石に広範囲破壊系の魔法はまずいとバリアの中に逃げ込む私達。
広範囲破壊系の魔法を使いつつ侵攻してくるから、騎士の皆はアレじゃ近づけない。
「私達二人が先ず道を開かないと。」
私達はバリアの外にもう一度でた。
「よーし、任せろ!」
羽織の裏に隠してある薬品を調合し、丸いフラスコに入れて投げる源蔵。
フラスコが地面に落ちて割れると刺々しい巨大な氷の剣山が出現する。
「おお!」
「薬剤氷結爆弾の威力はどうだ、って…所詮は氷だよな。」
魔法の発動がしなくなり侵攻部隊の動きが止まったけど、一瞬だけだった。氷の剣山は炎系の魔法で溶かされ、再び広範囲破壊系の魔法で進軍してきた。
氷系の攻撃って相手を確実に死に至らしめるか、無傷かのどっちかなんだよね。
「昔、薬剤氷結爆弾で魔法使い達の腹を貫いたんだが…鎧は無理か。」
自分の攻撃が効かない事に落ち込んだけど、直ぐ様次の攻撃の準備をする源蔵。
先程と同じく羽織の裏に隠してある薬品を調合し、丸いフラスコに入れて投げた。
「あ、今度は動けなくなった。」
「磁力爆弾だ!強力な地球の地場をS極とするならば、あのフラスコに入っていた液体はN極で互いに互いを引き寄せ合う!」
文字通り動けなくなった侵攻部隊。
今度は私の番だと二丁拳銃を構える。
「赤熱!」
アルゴー船内にある反重力装置等をオーバーヒートにさせた熱風を撃つ。
熱風は動けなくなった侵攻部隊の体力を徐々に奪っていく。
「デットヒートって、技名言ってて恥ずかしくないのか?」
「なにが恥ずかしいの?」
「…忘れろって、ルイコ!お前、なにを撃った?」
「え、熱風だけど?」
「バッカ、お前!俺の磁力爆弾は強力だけど熱の変化には弱いんだよ!急激に冷やしたり暖かくしたりすれば、磁力が無くなるんだよ!」
「ええ!?」
言われてみれば、倒れていた人達が立ち上がって歩いてきている。
暑いせいか鎧を脱いだから、相手の防御力を下げれたけど、失敗した。
「くっそ、北斎かアタランテならば上手く連携できたんだが」
時間も無ければ敵の情報も無い。私と上手く噛み合わず、戦闘を終わらせれない事に苛立ちだす源蔵。
ごめん、普通に電磁砲を撃ってれば倒せてたのに調子に乗っちゃったみたい。
「ルイコ殿、源蔵殿!相手に鎧を脱がせるとはお見事!後は私達ヤマト最強の騎士団に、卑弥呼にお任せあれ!」
「え、ハチベエさん!?」
熱風で体力と気力を奪い、鎧を脱がせた事に感服したハチベエさん。
あの状態ならば恐れるに足らないと騎士団全員を引き連れて、戦いに行く。
アークの侵攻部隊はハチベエさん達の猛攻に堪えきる事が出来ず、逃げる体力すら残っておらず、アッサリと仕留められた。
「なぁ、ルイコ…俺、この世界に来た意味あるか?」
「し、仕方ないよ。私も源蔵も前に出てカッコよく戦うタイプじゃないから。裏方とか後方で戦うタイプだから。」
「……人の役に立つのはやはり難しいな…」
「そうだね…」
取りあえずは勝って、侵攻部隊からミゴヤを守れたけれど、色々と満足できない。
アークの侵攻部隊が私達伝説の戦士やその末裔が居ないから完全に舐めていて、雑魚しか送ってこなかったから楽に勝てたけど、コレは今回限り。
何名か私達に気付き逃げていったから、次からは侵攻部隊以外の部隊を引き連れてくる。
ヤマトから奪った技術を元に未知の兵器を作ってくるかもしれない。そうなれば、凄い物作れる源蔵でもどうしようもなく、殺されてしまう。
「ルイコ殿、源蔵殿、お二方が居てくれたお陰で首都のミゴヤが守れました。実に感謝致します!」
騎士団は軽傷者数名、死者0名でミゴヤを守れた事を大いに喜ぶ。
一先ずは防衛出来て良かった。今はそれを喜ぼう!カガリ、守れたよ、ミゴヤを!
「喜んでる場合か、ど阿呆。今から鶏が先か卵が先かの地獄のマラソンの始まりだ。」
「分かってるけど…それでもさ」
「そうですぞ、源蔵殿。」
喜ぶどころか焦りを見せている源蔵。
その理由は言うまでもなくコレから先に待ち受けている敵や、集めないといけない顔も姿も分からない仲間のこと。
「街の復興に物資の確保に仲間集め、この世界の事を詳しく知る…ああ、くそ…間に合うか…」
「アークの首都であるタイムは物凄く遠く通信機器で連絡をしたとしても進軍に一ヶ月以上掛かります。」
安心してくださいと言うハチベエさん。
「なんで一番最初に俺なんだ、7番目位に発明系の奴が仲間になるだろう…」
この後、私達は侵攻部隊の遺体が腐って疫病等の元にならないよう火葬をした。
途中、サンプルが欲しいと源蔵が遺体を貰おうとして色々と揉めたけど、最終的には火葬をした。
「ルイコ、一つだけ決めておきたい事があるんだが…」
「なにを?」
ミゴヤを守れた事によりミゴヤの住民は大騒ぎの大宴会をしている最中、ミゴヤ城の一室で今回の事の反省会をし合う私達。今回の問題点をある程度纏めると、源蔵が何かを気にし始めた。
「俺達の名前とか証名だ。
コレから先、どんな世界に行くか分からず、あの一本禿の爺に聞いたが、衣服が強制的に変わったりするんだろ?」
「そんなのついてからで良いじゃない。」
「…格好いい二つ名とか欲しい!何時までも平賀源内の末裔は嫌だ!」
あ、本音を出した。英雄の子孫と言うのが嫌なのか、本音を出した。私情で動いた。
なんだかんだ言っても源蔵も気にしてるんだな~、英雄の子孫であること。私もあのアンデルセンの孫娘とか扱われてコンプレックスになってた頃もあったな。
「二つ名とかって、普通は誰かがつけるもので源蔵がつけたら駄目なんじゃ」
「そうだった…」
天才なのかアホなのかイマイチ分からない源蔵。
バカと天才は紙一重と言う諺が源蔵の生まれた国にはあるらしいが、正に源蔵はそれだね。
「…二つ名に関しては後にするか。ルイコ、爺さんコンビに言ってこい。
暫くはミゴヤの再興に集中し、研究所を建てるからそれまでは分史世界に転移して、仲間を探すのは無しだと。」
「わかったわ。」
ミゴヤ城を後にし、私はミゴヤ近くの海岸に止めている潜水艦へと向かった。
源蔵の二つ名か…からくり技師…なんか違うかな。