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序 ~桜~
道場から見える桜の花は春という季節の訪れを示し、ここが日本であることを主張するかのように淡く、そして潔い色をしている。そしてそれは決して自らを強く主張するわけではなく、ただそこに存在するのみで私たちにそっと教えてくれる。
質素なものこそ美しい
それは本質が美しいから派手に飾らなくても良いということだ。日本人の美意識の根底にはそれがある。美しくあるためには何かを加えて飾るのよりも先に、内側にある煩悩を無くす。私の中に流れる日本人としての血がそれを美しいものだと教えている――。