女帝様+侍女もどき
「ねぇ円花」
「なーに」
「あんた最近番長と口喧嘩してるってホント?」
「番長? ……ああ、あの脳筋ゴリラのこと?」
「のっ――!? ちょ、やめなさいよ! どこで聞かれているかわかんないでしょ!?」
「てか、あいつ番長って呼ばれてんの? ぷっぷー! 何それウケる! 今度はそれでからかってやろー」
「だからそれをやめなさいって! あの番長よ!? この前も三高の不良たちとたった一人でやり合って全員病院送りにしたって噂の! ゴリラどころかもう化け物の領域よ!」
「……ふーん」
「ふーん、じゃないの! ねぇ、あんたがいくら口で勝ってもあいつに手出されたらおしまいなのよ。きっと一発KOよ」
「あいつは……そんなことしないわよ」
「そんな保障どこにもないでしょう!? 男なんてキレたら何するかわからない生き物よ! そんなのあんただって身に染みて理解しているでしょう!?」
「………」
「ましてや相手はあの天下無敵の番長よ。よしんばあんたの理想の王子様が助けに来ても……絶対返り討ちにされるわ。前代未聞の異種格闘技戦だけどなぜかイメージできる。間違いない!」
「………番長と王子の対戦って面白そうね」
「はぐらかさないでよ!」
「あーあー、もーうるさいなー」
「……ねえ、そもそもどうしてあの番長と口喧嘩なんてしてるのよ? 番長と女帝って これもう、まるっきり世界観が違うでしょう。あんたらどこで出会ったわけ?」
「………」
「………」
「………沈黙が痛いんだけど」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………利香」
「なによ」
「この前借りた小説、イマイチだった」
「はぁああ!? 普通この流れでその話するぅ!?」
「王子がなよなよしてて全然好みじゃないのよ。萎えたわ」
「あのねぇ、そういうことは作者に言いなさいよ」
「でもオススメしてきたのはあんたじゃない」
「………」
「………」
「……あーもう、わかったわよ! あんたの好みに合わせてあげる。どんなのがいいのよ?」
「そうね…………………もっと男らしくて、ちょっとワルぶってるのがいいわ」
女帝様は侍女もどきさんのおかげでちょい乙女思考