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番長さん&女帝様

前回から数週間後。ちょっと仲良くなってる二人。

「例えば、普段は全く目立たないボサボサ頭のダメンズがいるとするわ。でも、それは世を忍ぶ仮の姿で、なんと正体は成績優秀で隠れマッチョのイケメン。ここぞって時には敵をバッタンバッタン倒す。これこそが究極のギャップ萌えよ」

「ねーよ」

「あん?」

「あらゆる意味でねーよ。そもそも世を忍ぶ意味がわかんねぇ」

「何あんた、喧嘩売ってんの? だったら遠慮なく買うわよ、ああ゛ん?」

「ヤンキーみたいな口調で迫ってくんのやめろ」

「っけ、だったらあんたのも教えてになさいよ。ああ゛ん?」

「………」

「………」

「……普段は地味でおとなしいが、眼鏡をとったら実は美少女……とか」

「っぺ」

「お、おまっ……信じらんねぇ! 普通つば吐くか!?」

「ちょっと恥ずかしげ語ってんじゃないわよ。気持ち悪い。あ―あ―いますよね―、そういう妄想抱く男。だけど、眼鏡をかけようが何しようが美少女は美少女なのよ。そしてぐるぐるメガネや瓶底メガネなんて漫画の世界でしかないの。いい加減現実見ましょうねー」

「てめぇにだけは言われたくねぇよ……まあ、メガネかけてもかけなくてもブスはブスだよな」

「今誰見て言った? いい度胸じゃない。表に出なさい。今日こそ引導を渡してやるわ」

「はん、お前まさか俺とガチやって勝てると思ってんのか?」

「ふん、真正面からぶつかる馬鹿がいるわけないでしょ。わざと当たりにいって、一発もらったところで大声出して先生呼べば即KOよ」

「……最低にも程があるだろ。いくら俺でも引くぞ」

「言っておくけど、あんたには無理よ。事前の舞台づくりとアドリブに対応する柔軟な演技力、そして何より最後まで笑わない忍耐力が求められるんだから」

「頼まれてもやらねーよ! ったく、何を真面目に語ってんだか……」

「ホント、毎回毎回つまらない言い逃れができないよう相手の過失100%に持っていくのは骨が折れるわ。そのうえ逃げられないような距離に教師、もしくは証言をしてくれる善良な目撃者を自然に配置する必要もあるのよ。いーい? 戦は事前準備で9割がた勝敗が決まるの。ここテストに出るからよく覚えておきなさい」

「お前………どんだけ場数を踏んでるんだよ」

「あたしくらいの存在になると、有名税もそこそこかかるのよ。ついでに二度と逆らえなくする後始末の方法も教えてあげましょうか?」

「いや……いらん。全員殴れば済む話だろ」

「あーあーあー、これだから野蛮人は嫌なのよ。少しは私を見習いなさい」

「やなこった」

「………ふん」

「………」

「………」

「……………お前、いつもそんな風にしてんのかよ」

「……………別に、もう慣れたわよ」

「………」

「………」

「………………まあ、あたしだって願望くらいあるわよ。不良に絡まれて、これはもうだめだ! っていう時に颯爽と王子様が駆けつけ奴らをスマートに蹴散らすの。そして『よく今まで頑張ったね、えらいよ』って優しく頭を撫でてくれる。これがシチュエーションとしては理想ね」

「おい、頭は大丈夫か?」

「……本気で心配されているのがわかるから、余計に腹立つわ。心配しなくても頭は正常よ」

「そんな都合のいい展開が現代日本でそうそう起こるわけないだろうが。それこそ漫画じゃねぇんだぞ。しかも王子様って………お前そういう柄か?」

「別に想像するのは個人の勝手でしょう。そういうあんたはどうなのよ」

「………」

「………」

「………………まあ、さっきの場合でいくなら、助け出した後『別に私一人で平気だったけど……一応礼は言っておくね』と上目づかい言いながら、袖を掴んで離さない……とか」

「………オゥウェッ」

「吐くマネすんのやめろ! お前ホント女捨ててるな!」

「吐きたくもなるわ! これだからチェリーは……よく考えてもみなさい。ツンデレなんて現実にいても真っ当な人間にはドン引きされる存在よ。男女どっちもよっぽど頭がおめでたくないと会話が成立しないに決まっているわ」

「自分のことを棚に上げてよく言うな! お前がさっき言ってた想像とたいして変わらねえだろ!」

「………………はぁ」

「溜息つきたいのはこっちだろ」

「………」

「………」

「………」

「………」

「……………まあ……その、喧嘩ってやつは一発でも食らえば終わりの時もある。俺もいつも大体一発で仕留めるし、よっぽど慣れないとうまく受け流すことも難しいし……だから、その、お前そんなんでも一応生物学上は女なんだから、今度から、その、付き添いぐらいはしてやらんこともないぞ」

「……………ちょっと、どうでもいいけど馴れ馴れしく頭触るのやめてくれる? 気持ち悪いんだけど」

「………」

「………」

「………いや、別にあんただから特別どうってことじゃないのよ? そこまで親しくもない異性に頭撫でられたら、誰でもちょっとした拒否反応みたいなの出てくるでしょ?」

「………」

「………」

「………」

「ちょっと、ホントその目やめてくんない? 私が悪いことしたみたいじゃない。無駄に罪悪感が出てくるんだけど」

「無駄じゃねえ! 罪悪感くらい普通に持てよ! なにひとつフォローになってないんだよ!」

「ちょっと耳元で怒鳴らないでよ! 難聴になったらどうしてくれんのよ!」

「………」

「………」

「っ、くそ、もういい。お前に優しくしたのがそもそもの間違いだった」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………ま、まあ、そんなこと言ってもあんたが一応あたしの心配してくれてんのはわかったわ。だから……その、感謝しないこともないわよ」

「よく言うぜ。そもそもの原因はお前だろうが」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「………おい、まさか今の――って、やめろ! 落ち着け! そして机を下ろせ!」

「うっさい! ちょっと餌を恵んでやればこれか! この豚野郎!」

「そこまで言うか普通!!」


ツンデレって難しいよねって話でした。

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