番長さんVS女帝様
「おい、ブス」
「………」
「お前のことだよ、ブス」
「…………まさかそれ、あたしに言ってんじゃないでしょうね?」
「はっ、周りを見てみろよ。お前以外誰がいる」
「へぇ……あたしに喧嘩売るなんて、いい度胸じゃない。噂ぐらい知っているでしょう?」
「てめぇの噂なんて知ったこっちゃねーよ。んなことより、おら」
「……何よ、これ」
「てめぇが昨日落としたもんだよ」
「……ああ。それはそれは、わざわざご足労いただき恐悦至極にございます」
「ああ、精々感謝しろよブス」
「………」
「………」
「………」
「………」
「あの男……………………コロス」
「そこのブ男」
「………」
「あんたのことよ。ブサイク男、略してブ男」
「……あぁ、そいつは悪かったなぁ。なにせ生まれて初めて言われたもんで、ねぇ」
「あらぁ、奇遇ね。あたしもブスって言われたのは生まれて初めてだったの。お互い初めて同士で相性もよさそうね。一発ヤッといた方がいいかしら?」
「はっ、てめぇに盛るくらいならゴリラにでも盛るわ」
「心の底から同意するわ。ホント気が合うわね」
「……口の減らない女だな。で、何の用だよ? くだらねぇ用だったらぶっ飛ばすぞ」
「あんたが昨日返したあれ、汚れが染みついて取れないのよ。新しいの買ってきなさい」
「………」
「………」
「……………落としたのは、てめぇだろうが」
「保管状態が悪いのよ。汚れはあんたの責任なんだから、代替品用意すんのが筋ってもんでしょう?」
「………」
「………」
「………面倒くせぇ」
「あーあー、これだから最近の男は。女に借りを作っておいて、まともに返すこともできないなんてねー、やだやだ」
「………」
「………」
「………ちっ」
「おい、ブス」
「なによ、クズ」
「……お前、本当に口が悪いな」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
「………」
「………」
「………おら、これでいいんだろ」
「あら、本当に買ってきたの?」
「はぁ!? てめぇが買えって言ったんだろうが!」
「まさか律儀にあたしの言葉に従うとは想像していなかったのよ。わざわざ落し物届けに来たことといい………あんた意外と義理堅いわね」
「この野郎………!」
「まあ、褒め言葉として受け取っておきなさいよ。どれどれ、一体どんなものを――」
「………」
「………」
「………」
「………あんた」
「なんだよ」
「………顔のわりに可愛い趣味しているのね。でも大丈夫よ、あたしは理解あるから」
「憐みのこもった目をやめろ! 妹の趣味だ!」
「なんだ、つまんないの。せっかく脅しの材料が一つ増えると思ったのに」
「………てめぇ、本当にいい性格してやがるな」
「よく言われるわ」
「………」
「にしても妹、ねぇ……?」
「………これ以上の文句は受け付けねえぞ」
「文句なんてないわよ。ただ、あんたが一体どういう口実で妹にこれを買わせたのか、非常に興味があってねぇ。せっかくだし、ちょっと今ここで再現してみなさいよ。私妹役やってあげるから。ね? いいでしょ、お兄ちゃん?」
「っ、いいわけねえだろ! アホか!!」
「ちょっとそこの童貞」
「違ええええ! てめぇ、ふざけんなよ!!」
「はいはい、童貞と酔っぱらいはみーんなそう言うのよ」
「だから違えっていってんだろうが!」
「……まあ、あんたの童貞疑惑なんてどうでもいいわ。あんた数学得意でしょ? あたし次の授業当たるから、ここの答え教えなさいよ」
「おい、それが人にものを頼む態度か、あん?」
「お生憎様、これは頼んでんじゃないのよ、命令よ」
「はあ? ふざけんじゃ―――」
「このカードなんだと思う?」
「………なんだよ?」
「これね、この前の袋の底に入ってたのよ」
「それがどうし――」
「えー『うちのおにいちゃんは、顔は怖いけど根は優しい人なんです。どうか仲良く――』」
「やめろぉお!!!」
「げへへへへ。さぁて、どうしよっかなぁ?」
「くっそ、あいつ……………!」
「いやいや良い妹さんじゃないの。私は弟しかいないから羨ましいわぁ」
「………」
「どうするー? まあ、私は別にどっちでもいいんだけどねー」
「………」
「………」
「………………っ、見せてみろ」
「げへへ、そーこなくっちゃねー」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………おい」
「なによ」
「てめぇ………こんな初級問題すら解けないのに、どうやってこの高校に入った? 裏口入学か?」
「う、うっさいわね! 他の教科はできんのよ!」
「おい、アバズレ」
「なによ、イケメン」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………ちッ」
「…………………勝った」
「そこのイケメン」
「……おい、やめろそれ」
「あら、褒め言葉でしょう? もっと嬉しがりなさいよ」
「てめぇに言われても一ミクロも嬉しくないんだよ」
「まったく失礼な男ね。こんな美女に褒められて嫌がるのは、世界広しといえどもあんたくらいよ」
「自分で美女って言ってりゃ世話ねーな」
「お黙り。そんなことよりここ教えなさい」
「だから、なんでそんなに偉そうなんだよ」
「ねぇ、お兄ちゃーん。お・ね・が・い」
「………気色悪いからやめろ」
「ならさっさと教えなさい」
「そっちの方がまだマシだ」
「あらやだ、そういう性癖? うわぁ、引くわー」
「うるせえ! いいから見せろ!」
「おい、ブス」
「………」
「……おい、美女」
「………」
「……………おい、無視かよ」
「………グス」
「お前………まさか泣いてんのか?」
「………うっさい、ほっといてよ」
「………おい、なんで泣いてんだよ」
「あんたに関係ないでしょ。いいからどっか行きなさいよ」
「………関係なくはないだろ。誰にやられたんだよ」
「うるさい! どっか行けって言ってんでしょ! あたしは今機嫌が悪いの!」
「っ、んなこと知るか! いいから答えろよ!」
「なんであんたがキレんのよ!」
「うるせえ! お前が柄にもなく泣いてんのが悪いんだよ!」
「………」
「………」
「グス、あたしだって……泣きたくて泣いてるんじゃないわよ」
「…………………もういいから話せよ。どうにかしてやるから」
「………本当に?」
「ああ」
「嘘ついたら針千――億本飲ますわよ」
「なんで増えた。まあいい」
「絶対?」
「しつこい。で、なんで泣いてんだよ」
「………」
「………」
「……………花粉症よ」
「………は?」
「昨日発症したのよ、人生初の花粉症に。こんなに辛いものだと思わなかったわ。目も鼻も喉も全部やられて……ホント、最悪よ」
「………」
「………」
「………」
「………」
「返せ!!」
「何をよ?」
「何かをだよ!」
「はぁ? 意味わかんないだけど」
「るっせえ! バーカ! 」
「………」
「………」
「…………………なによ、あの嘘つき」
はじめましてorお久しぶりです。jadeです。
最後に投稿するリハビリ作ですが、書いたのはこれが最初だったりします。
地文が書けないなら会話文だけ書けばいいじゃない、という暴挙がこの結果です。
そして、こんな感じの気持ち悪い会話文があと6回くらい続きます。気を付けてください。