やはり彼女の計画は失敗する
合コンは、心理戦という。
盛り上げ役、ノリ役等の役割が個人個人に化され、その役の人間は与えられた役をこなさなければならない。
………… ならないんだよ。ならないんだよぉぉぉ!
「何この見事な内輪ノリ!」
久遠寺学院と青藍学園、見事に別れてるよね!?
青藍学園のこげ茶髪読書少年(一条零というらしい)にいたっては一言も喋らないし!
夏目と東雲君は、何か雑談してるし! 雪葉は、無言でごはん食べてるし!
黒髪眼鏡少女(宮名江名ちゃんという)は、無言で参考書解いてるし! 奏とつぐみんは、いちゃついてるし!
「いや、だってあたしは江名に誘われて来ただけですし。奏君は、人数合わせのために仕方なく引っ張ってきただけで」
今まで奏に腕に無理矢理ひっついていたつぐみんが、一旦離れて不機嫌そうに告げる。
「私は、東雲君に頼まれて仕方なく許可しただけよ。全く、彼の女性好きにはあきれるわね」
話を振られた宮名さんは、パタンと参考書を閉じて、口を開く。
「え、えぇ!? 俺!? そもそも、月雲ちゃんがやりたいって言うからセッティングしただけなんだけど……」
うんうん、と夏目と雪葉がうなずく。
失礼な!
「うん! 全ては私に責任があるということだね!」
「自覚してるなら、何とかしろよ……」
つぐみんに散々ひっつかれて疲れた顔の奏が、さらにげんなりとした表情て言った。
「あー、もういい! 今度、再び、改めて! 合コンしよう、合コン!」
「楓、このメンバーでやっても今と同じようになると思うけど……」
雪葉が相変わらずのうつむき&小声でゆっくりと告げる。
いいや、雪葉、カラオケでやったからダメだったかもしれないじゃないか!
カラオケといえば、歌う歌によって、その人の趣味傾向が分かっちゃうからね! やりにくいかもしれないんだよ!
お姉ちゃんだって去年、文化祭のクラスの打ち上げでカラオケに行って、アニソンを歌ったら男子はおろか女子にさえ引かれてたからね!
あはは! あはは、あはははは! ……………… やばいです、悲しくなってくる。
「ええ、その案には賛成ね。メンバーは変わらなくとも場所を変えることによって、変わることもあると思うわ」
「おおお、分かってくれますか、えなちー!」
「えっ、えなちー? 何なのかしら、それは」
あああ、1番に賛成してくれたこともあってか、興奮してさっき決めた心の中での宮名さんのあだ名が出ちゃったじゃないか!
宮名江名。みやなえな。えなちー。
宮名さん…… 面倒だからもう、えなちーね。えなちーは、珍しく冷静な表情を崩して焦ったよう顔になる。
も、もしやこれは、クール+デレのクーデレとやつですね。分かります。
「いやいや、何でもないよ! じゃあ、また日を改めてやろう!」
何となく張り切っていこうと思い、思いっきり拳を宙に突き出す。
シュッ、という音が静かな部屋に響いた。
………… 楓さんは、寂しいですよ。
「あたしのつぐみんといい、お義姉さんのネーミングセンスってアレですよね」
「はい、まったくです」
今までまったくと言っていい程、会話がなかったつぐみんと夏目が変なところで意気投合してました。
第弍話終了