合コンは心理戦です
最近、私はよくこう思う。
「奏だけずるいよ! お姉ちゃんも彼氏ほしいよ!」
「だから、雛村は彼女じゃないから! だったら、作ればいいだろう!」
リビングのソファでそう叫ぶと、いつのまにか奏が学校から帰って来た。
キッチンへ行って、冷蔵庫からアルプスの天然水のペットボトルを取り出す。
「いやいや、作れといってもねぇ…… そう簡単に行かないのが世の中なのさ」
「17歳の女子高生にそんな長年世の中渡ってきた中年のような言葉言われたくないよ」
奏は、コップに天然水を入れて、ごくごくと飲む。
私ははぁ、とため息をつくと、奏が持っている大きな袋に気付いた。
「奏君、奏君。お姉ちゃんがこの前の弟姉モノの漫画の続き買ってあげるから、その袋をすみやかに渡しなさい」
「田舎のおばあちゃんのような口調で脅迫するな。これは、雛村からもらったやつだよ」
雛村…… 彼女さんか!
しかし、未来の義妹なら彼女さんはないな…… よし、つぐみんでいいか!
「つぐみんの差し入れなら、私ももらわないとね!」
「もうあだ名よびかよ…… まあ、とりあえず彼氏作るなら迷惑かけないようにしろよ……」
奏が私に袋を渡してくる。
大丈夫! かける気アリアリだから!
*
「ということで! かくかくしかじかだから、合コンしよう合コン!」
「ごめんね、楓。何となく説明したっぽくなってるけど、かくかくしかじかとしか言ってないから。私、そんなエスパーな能力持ってないから」
久遠寺学院高校2年A組。
4限目が終わり、お昼休みになったので私は普段行動を共にする風水雪葉と一緒に、机をくっ付けてお昼を食べていた。
黒髪のストレートロングで、首あたりの低い位置で一部をお団子にして後は綺麗に後ろに流している。和風美人、的な!
「私が弟の部屋のベッドの下にいたら彼女さんといちゃつき始めた時にそう思ったんだよ!」
「合コンよりまずそっちの方を説明を説明したほしいかも」
お姉ちゃんは説明が面倒だから大嫌いなんだよ!
取り敢えず、雪葉の口にカレーパンを押し込み食べている間に合コンのやり方を考える。
「夏目ー。夏目ー。何でも知ってる夏目ー! 今すぐ私に合コンのやり方を教えなさい。じゃないと、可愛い女の子紹介してあげないよ!」
「いや別にいいから。それに、俺が合コンのやり方なんて知ってるわけがないだろ!」
この役立たずがぁぁ!
と言おうとしたけど、夏目と一緒に食べていたクラスメイトA君(名前忘れた)が、私に話しかけてきた。
「なになに、月雲ちゃん、合コンやるの?」
「そうだよ、クラスメイトA!」
「東雲千里! 名前ぐらい覚えてもらいたいかな!」
東雲君は、苦笑いで告げた。
「えーと、じゃあ、東雲君。合コンどうやるのかな!」
「セッティングしてあげようか~?」
東雲君は、多分地毛だろう琥珀色の若干長い髪を結びながら言う。
ぶっちゃけ合コンとかやり方もしらないし、超助かる! お姉ちゃん超幸せ!
「頼んます!」
「………… 容赦ないよな、楓って」
それを横目で見ながら、夏目はため息をついていた。
失礼だな!
*
「とういうことで、奏! お姉ちゃん、日曜日出かけるから留守番よろしく!」
「いや、俺も出かけるんだけど」
片手をあげながら、奏に告げると向こうも若干引いたような表情でそう言った。
合コンも色々予定が決まり、今週末の日曜日にカラオケのパーティールームという、たくさん人数が入れる場所で開催することになった。
両方からそれぞれ男子2、女子2の人数で男子4人女子4人の合コンらしい。
こっちは、女子は私と雪葉、男子は夏目と東雲君が出る。
ちなみに、夏目と雪葉はお姉ちゃんが無理矢理誘ってきました。FIN。
「まったく使えない弟め……」
「その言葉そのまま返してもいいよな!」
*
「楓さんの登場ですよ!」
ついに日曜日。
雪葉と近くの駅に待ち合わせして、夏目たちとは会場の駅前で落ち合うことになった。
私が1番気に入っているTシャツ『ふっかつのじゅもんがちがいます』Tシャツにジーンズを合わせる。
「楓…… そのコーデは残念すぎるよ…… そして、そんなトラウマをえぐるTシャツを!」
淡いピンクのフリルのワンピースに黒いパンプス。髪飾りは黒いマーガレットの花をあしらったものだった。
さすが楓……! 学園美少女ランキング(統計私)でトップをかざるほどはある!
「とりあえず、着替えよう! そこの服屋さん入ろう」
何故か握力が強い雪葉に引っ張られ、お姉ちゃんはなす術もありませんでしたとさ。
*
「これがかっこいいの!?」
白いゆるふわニットという腰くらまであるものを着せられ、黒いレギンスをはかされ、黒いタンクトップを着せられ、ショートブーツをはかされ。
さっきの『ふっかつのじゅもんがちがいます』Tシャツの方がよっぽどかっこいいというのに……!
「楓のファッションセンスってずれてるよね……」
「いや、皆のファッションセンスがずれてるんだよ!」
「世界は楓を中心にはまわってないよ」