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お姉ちゃんは、ベッドの下。  作者: 紗楽
其の讀 闇鍋は、一生するものじゃありません。
16/19

鍋奉行は語らない

カチン、という音と共に部屋の電気がすべて消される。

それを狙ったかのように、ぽちゃりという音がして夕君が具材を入れたのが分かった。

「出来たぁぁっ! 」

ぐぅぅ、ぼんやりとは分かるから形と音から何を入れたか想像してやろうと思ったのに……!

電気を消す係だったせいで、立ってたから分からなかった! よし、次のえなちーの時には着席済みだから絶対想像、いや特定するぞ!

「出来たわ」

部屋にえなちーの静かな声が響き渡る。そうだよね、誰も喋ってないもんね!

でも、音がまったくしないから固いものじゃなくて柔らかいものなのか……? お豆腐とかマシュマロみたいな。いや、でもえなちーの性格からしたら慎重に入れるだろうし、固いものでもありえる!

「出来ましたよー」

えなちーの声が響いた瞬間にぽちゃん、という音がしてつぐみんが声をあげる。

この音は多分、固形物を上から落とした、みたいな感じだね! つぐみんの正面に座っている私の手に返り汁が来たし、うん!

小さいものをたくさん入れたみたいな感じだから、クッキーとかのお菓子類かな?

「出来たぞ」

お次は奏。うん、想像してた通りまったく音がしねえ! 慎重だもんね、うん!

しかし、奏ならまともな具材しか入れないから安心! 伊達に17年お姉ちゃんやってるから弟の味覚の正常さくらい分かる。

「………… 出来た」

ボソッとつぶやくように告げる一条君。ぶちゅぶちゅー、という音がしたんだけど、これは調味料だね! ケチャップとか、そういう類の!

「出来たよー」

東雲君ののほほんとしたような声が響く。

つぐみんと同じようにぽちゃんという音がしたけど、これはまた違う。高いところから落とすようにじゃなくて、低い位置からやった音だ。

だけど、大きすぎて音が出てしまうみたいなものなんだよ!

「出来たんだが」

次は夏目だね。東雲君と同じく音がするのを抑えて低い位置から投入したんだろうけど、楓さんには分かるよ!

丸いホールケーキを6等分したようなその形! ぼんやりと見える! ………… え、それで、これ、ケーキ?

「投入完了!」

やっと私の出番が回ってきたよ…………!

今回、1番驚かれるそうな具材、それは納豆! その強烈な匂いがすべての食材を邪魔し、この闇鍋の勝者になること間違いなしの具材!

ふっふっふっ、皆私に跪くがよーい! あはは、あはは、あはははは! ………… うんごめん、調子乗りすぎた。

「私も出来たよ」

最後に入れるのは雪葉! あの雪葉だし、まともな具材を入れるだろう!

けど、何でぽちゃんとかぽちゃりとかいう音がしないのかなあ? だばたばたば、とかいう音が聞こえてくるのかなあ?

液体投入してるよね、それぇ!


「じゃあ、私鍋奉行やるね! 今から煮るよ!」

「鍋奉行って自分で宣言するものなのかな!?」

雪葉が律儀にツッこんでくれた。うん、雪葉いい人。本当いい人!

手探りでスイッチを捜し、火をつける。これから、具材に十分に火を通すんだったんだよね!

「じゃあ、火が通るまで何か話しましょうや。恋バナとか!」

「それは、男子がいるところでやるものなのかしらね……」

えなちーが困惑したような声ぶりで話す。大丈夫、お姉ちゃんは弟がいちゃついてるところも弟の友達のエロ本探しも乗りこえた女だ!

「まあまあ! ええとじゃあ、この中の誰もが気になっているであろう話題を。夕君、どうぞ!」

「ずばり、委員長と久遠寺学院の…… 確か、楓さんの幼馴染の友達の関係についてだな!」 いやいや、違うから! 奏とつぐみんの関係だから!

空気読もうよ、ねえ!? そこは何か関係性とかあるんだろうけど、えなちーとか冗談はきかないし、皆踏みこまなかったのに!

奏とつぐみんならどんなこと言ってもまだ、冗談ですませられたのに!

「東雲千里! 月雲ちゃんの時といい、俺の名前ってそんなに覚えづらいかなぁ!?」

「いや、それは楓と七火さんが特殊なだけじゃないのか」

おお、夏目、ナイスフォロー! じゃあ、このどさくさに紛れ違う話題を!

「で、ズバリ委員長と東雲の関係はどうなんだ!?」

「家が隣なだけよ」

一瞬、口がぽかんとだらしなく開きましたよ。ああ、暗闇でよかった!

家が隣ってそれはつまり、お隣さん! 恋愛展開にはもってこいの設定じゃないかああっ!

「何年前から!?」

「え、えぇ? 5年前くらいかしら」

私の食いつき具合に若干、というか完全に引いているえなちー。いやだけど、それは興奮せざる得ないよ!

5年といえば、もう完全の幼馴染の領域! しかも家が隣! これで窓と窓で互いの部屋を行き来できるんだったらもうあれだね! ほとんど恋人だよね!

「窓つたいに部屋を行き来できる!?」

「ま、まあ、一応出来るけど…… 最近はしていないけれど」

「カップル誕生おめでとう!」

「い、委員長、噤ちゃんもそうだけど、クラスの可愛い子ちゃん選手権1位2位が彼氏持ちなんてオレは、オレはぁぁっ!」

「安心しろ夕、その内1人は彼氏いないから」

「あたし、奏君の彼女なんだけど!」

「話題それちゃってるから一応だけど、俺と 江名ちゃんは付き合ってないからね!?」

世界に絶望したような夕君の声がする。夕君、しっかりいわってあげようよ!

そして、奏も可愛い子ちゃん選手権の1位と2位を把握してるんだね! いやまあ、つぐみんなら見ただけで1位とってそうだけど! つぐみんも自分が1位だと自覚してらっしゃる!?

「………… 月雲楓、自分を棚に上げすぎる」

「え? 何で?」

今までずっと黙っていた一条君が突然声を上げる。お姉ちゃん、何を棚に上げてるっていうんだ!?

「………… 椿夏目との条件も揃っている。幼馴染、家が隣。奏から聞くには10年以上の付き合いだろう」

「え!? そうか、私と夏目のラブコメ幼馴染条件も揃ってたのか! 部屋が行き来出来ないから、ないと思ってた! そういえば、夏目とは15年の付き合いだね! ………… いや待て、夏目と幼馴染なのは奏もだよ! つまり奏も恋愛対象として」

「それこそ待て楓。奏とはまず性別から違うだろう!」

「そこは、まあ、あ、愛の力というもので……」

「楓、俺普通に女が好きだからな!?」

「いや、それは俺も同じだ」

奏と夏目が矢継ぎ早に言ってくる。いやまあ、お姉ちゃんだってそんなことは考えてないよ? ………… カンガエテナイヨ?

「結局、あやふやにされたわね…… さすが月雲さん」

「楓は話をそらすことには長けてるんです」

えなちーと雪葉が何か言っていたけど、とにかく失礼なことを言われたのは分かった!

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