勘違い少女の油売り
『で、俺はどうすれば良いんだ?』
『とりあえず、この前の作戦でお願い☆~(ゝ。∂)』
超高速でメールを打つと、すぐに返信が返ってくる。
私的には都合が良いんだけど、夏目は前回といい休日にずっと家にいるの?
え、もしかして、夏目、友達いない!? …… いやいや、考えろ、楓。最低でも東雲君という友達がいる。
はっ、もしや、東雲君、こういうことか!?
『休日は、女のコとデートとかで埋まってるから男友達と遊んでる暇なんてないんだぁ~、ごめんね奏~。ぷぷっ』
くそおおお、東雲君、ちょっと顔がいいのを鼻にかけてなんて酷いやつ!
大丈夫、夏目、君には私という友達がいる! ……………… 幼馴染って友達枠なのかな。うん、多分、幼馴染兼友達で合ってるはず!
『その顔文字、凄いアレなんだが』
はっ! もしや、その反対か!
夏目って客観的に見たらイケメンだから、女子にモテすぎて男からの嫉妬で友達出来ない、みたいな!
それだと、同じイケメン友達の東雲君なら嫉妬なんてものはなく、対等に接してくれる! もしかしたら、東雲君って案外いい人なのかもしれない! ごめん、ごめんよ、東雲君!
『とりあえず、よろしく!』
『分かったよ……』
さっすが夏目! 長年トラブルに巻き込んできたおかげで、私の扱いに慣れてるね!
『ピンポーン』
もう既に移動していたのか、メールを贈った直後にインターホンが鳴る。
ふふふ、さあさあ、行きない! 奏、一条君、○○君よ!
「あ、俺、ちょっと下行ってくる」
「りょーかい、じゃあ、オレも下行ってテーブルの上にあるクッキーでも食べてくるわ。零は?」
「………… 行く」
うおっしゃぁぁぁ! 神は、ここにいたんだよ! つぐみんみたいに下に行かないってことはなかったよ! よし、2人が完全に出た後に部屋を出よう!
ガタッ、ドン。
3人が立ち上がり、部屋を出て行く音がする。続いて、ドアを閉める音。
………… よし、多分、部屋から出て行ったな。
そーっとベッドの下から這い上がり、部屋を見渡す。そこには案の定、奏達はいなかった。
良かったよ、つぐみんの時みたいな惨劇は起こらなかったよ! 小躍りしそうになるけど、とりあえず部屋から出て行くことが先決だ。
「あーーーっ!」
あああ、思わず声が出ちゃったよ。
いやね、だって、本棚にこれから1巻置いて全巻揃えてもらおうと思っていた漫画が既に全巻揃ってるんだもん!
今日は闇鍋パーティーしようと思ってたから学校の課題は全部終えたし、奏達がいるからテレビも見れないし!
……………… 10巻くらい、借りていっても罪にはならないよね!
背伸びして本棚の1番上の漫画を一気に10巻取る。無理したのか、ぎっしり詰まっていた周りの本がパラパラと床に落ちた。
早く拾わなければ!
こんなところで油を売っている場合じゃないんだよ! 早く拾わないと、奏達がぁぁぁ!
その時。
『ガチャ』
ドアが開く音がして、お菓子が入ったお盆を持った奏が1人。
「………… 楓?」
………………………… 見つかっちゃいました。