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メモ帳  作者: 榎本あきな
3/4

3 レインボー☆ウィッチ

このお話のあらすじ


祖母譲りの金髪と、父親譲りの眼光の鋭さで、喧嘩もしたことがないのに不良だと恐れられてしまっている俺は、学校にも行かずにブラブラと小川の土手で散歩をしていた。すると、土手に倒れている白いまんじゅうみたいな物体。もちろん、無視をしようとしたが、そいつは何故か、俺に勝手に契約をさせた後、俺を怪人と戦わせやがった。何故か女の姿にして。事情を聞く限り、色を集めてほしいだとかなんだとかで契約をしたらしいが……。……せめて、せめて……女にするのはやめてくれぇ!!


次の杯で「変身」もので頑張ろうと、前から考えていたコメディを書いたものの……自分じゃ、コメディはかけないようです。なのでこちらの方にアップ。……「光」ものシリアス路線で頑張ります……。

 いつも歩く、見慣れた小川の土手。

 石を蹴りあげつつ、一歩一歩、のんびりと進んでいく。


 下をずっと見つめ続けていた視線を、気まぐれに上げてみる。

 すると…………なんか、白いまんじゅう(?)みたいのが、少し先の地面に、ポテリと落ちていた。

 だが、近づくにつれそれが……少々透けている白い蛍光灯と、背中におもちゃのような羽、あと、手の役割をしそうな、小さいまんじゅうがついているのがわかった。


 よし。スルーしようか。

 そう決めて、俺は横を通り抜ける。なんかしゃべりそうな気がするから、少々小走りで。


 少し離れたところで後ろを振り返ると、白いまんじゅうは、未だにあそこに落ちたまま。しかし、動く気配もなければ、しゃべりだす気配もない。

 何もなくて、よかった。そう思いつつ、前を向いて足を進める。


「ちょっとぉーー!待って!!待ってよ君!!」

「ひょえ!?」


 突如後ろから聞こえてきた、少々高めの、子供のような声。その声を認識した数秒後、俺の足に、冷たく、なんだか柔らかいものが三つほど押し付けられた。

 というか……この柔らかさ、気持ち悪ぃな!!思わず変な声を出しちゃったじゃねぇか!!


 瞳に怒りの色を浮かべ、後ろを振り返ると、そこには誰もいず。

 頭に疑問符を浮かべていると、下から「こっち!こっち!!」と声が聞こえた。まさか……と思って下を見ると……、そこには、先ほどまで道端に落ちていた白いまんじゅうが。


 理解不能で意味不明で摩訶不思議な事が起こり、正直言って頭が混乱して、とりあえずどん引いていた俺に、何を思ったのか、奴は言った。


「道端に天使のような人が倒れてたら、助けるものでしょ!!」


 え。お前、天使なの?というか、人ですらないだろ。というツッコミを、とりあえず飲み込む。というか、飲み込みざるを終えない。だって、この白まんじゅう、マシンガントークしかしねぇから。

 今こうやって考えている間にも、「僕の名前かい?ふっふっふ……。それは内緒だよ!え?どうしても知りたい?いやーモテる男は困っちゃうなー」とかなんとか、ずっとしゃべり続けている。


 お前の話しなんて、誰も聞かねぇよ!


 声高らかにそう叫びたい。むしろ叫ばせてくださいと、どこかの誰かに頼み込みたい。だが、そんなこと叫んだ暁には、俺は変人のレッテルを貼られるような気がする。そして、こいつはそんなこと気にせずにしゃべり続ける気がする。


 と、なんだか思考停止しそうな頭で、悶々と考えていた俺は、突然の事に逃げられなかった。


「じゃあ、契約しようか!」

「…………は!?」


 薄らと頭の片隅で聞こえていた声。その声が、突如として、突拍子もない単語を紡いだ。

 ってか、契約ってなんだ!もしかしてこの白まんじゅう、悪徳商法の使いとか、詐欺系の奴だったのか!?なんなんだよコレ!!


 俺がそう思って動けない間にも――というか、本当に金縛りにあったみたいに動けない――契約っぽいものは進んでいく。


 白まんじゅうの頭の上にある、透けている蛍光灯。その蛍光灯が一際強く光り輝き、その光だけが蛍光灯から離れて、宙に浮いた。

 その光が、俺の目線の高さまで浮き、ゆっくりと、俺に近づいてくる。どんどん、どんどん、どんどん……まぶしっ!目の高さだから、近づいてこられると眩しいんだけど!!


 眩しさに、思わず目を瞑る。すると、目の前にあった光は、どこかへと消えた。

 なんだったんだ?と、思わず頭を捻っていると……何かが高速で、目の前に落下した。そして、その落下したものは……落ちることなく、俺の首で止まり、光り続けた。

 …………なんか、色々と嫌な予感がするんだけど。


「契約、完了っ!!」


 目の前の白まんじゅうが、声高らかに宣言すると、俺の金縛りがとけ、俺の首で光っていたものも、光るのをやめて落ちた。

 ……だが、首に何かがはまっているよーな違和感は取れない。……首輪じゃないよな。絶対。そう信じたい。


 わずかな希望を胸に抱いて、俺はその輪っかを手にとる。

 だが、この世界は、俺の希望を打ち砕くのが、大好きなようだ。


 手に取ったのは、真っ白い、首から外れない金属製の輪っか。


 ……希望が粉々に砕け散った……。こんなんつけて家に帰った日には、妹から「狂犬様が誰かの飼い犬になったの~?」とか、ニヤニヤ顔で言われるに決まってる……!

 ただでさえ、目つき悪い上に先祖返りで金髪なのに……。喧嘩なんてしたことないのに、喧嘩強いとかで、他校の不良生徒が俺のとこ来たり、勧誘されたりするのに……。皆、何故か俺と視線を合わせると、全員どっか行くんだけどさ。


「おー!!なんか、狂犬を飼い犬にした気分だねー!!」


 こいつ、俺の気にしてることを……!!今すぐにでも掴んで、川に放り投げてやろうか!!

 いつもの俺だったら、そんな物騒なこと!とか思うことを考えていた俺には、またまたマシンガントークの中に隠れていた言葉に、反応できなかった。


「変身、しよー!!」

「はぁ!?」


 契約とか変身とか……魔法少女か何かか!!と、ツッコム暇も与えられず、俺は、首につけられている輪っかの光に、飲み込まれた。


 ……今後の展開、言わなきゃいけない?正直言って、俺の男としての威厳が無くなるんだけど。いや、そもそも威厳なんか、俺にあるのか知らねーけど。

 まあ、一言で言うと……テレビでよくある、魔法少女の変身シーンだ。ほら、白い光で細部が見えない裸になって、そこから服がポンッ!とかいって装着される奴。あれが起こった。


 ……羞恥心で死ぬかと思った……。ほんと、あれが一秒の間だけですべて行われているって聞いて、安堵したよ……。

 あと、もう一つ重要なことがある。



 な ん で お ん な に な っ て る ん だ ! ?



 俺も途中でおかしいと思ったよ!視線が低くなってくし、肩とか腰とか丸くなってくし、髪の毛は重くなってくし!!

 なんでと聞こうとしたとき、白まんじゅうが俺の目の前に手をかざし……手を振った。……何をやってるんだコイツは……?


「ちっちっち。君の言いたいことはわかってるよ……。ズバリ!なんで女になってるのかってことでしょ!!」


 ふっふーんと言いながら、手を横に振り続ける白まんじゅう。……もしやこれ、指を振ってるのか……?指ねぇから、まったくもってわかんねぇ。そして、なんかコイツに指摘されると、ムカつく。

 そんな風に思っている俺を無視して、目の前の白いのは、話を進める。


「なんで女になってるのかというと……。……そりゃあ、誰だって男が女装した姿、ましてや、男の返信シーンなんて、みたくないに決まってるじゃないか」


 正論だが、コイツに言われるとすっげぇムカつくんだが、俺は正常か!?正常だよな。……とりあえず、一発殴っていいか。

 後で殴る。と決意しつつ、俺は本音を叫ぶ。


「じゃあ、なんで女子にしなかったんだよ!」

「だって、一週間待っても、散歩してるおばさんか、ホームレスしか通らないんだもん。もういいやって思って☆」


 なにが「思って☆」だ!!こんなとこに白いのが倒れてたら、警戒心強めの女子なんて、一歩たりとも近づかないに決まってるじゃねぇか!!そして俺で妥協すんな!

 もう殴る。そう決め、右の拳を握りしめ、振り上げる。しかし、それは白いのに当たることなく空ぶった。


「あ!さっそく怪人が出たよ!!」

「怪人!?」


 白いのが指し示す方向を、慌てて見据える。そこには……はい。完全なエビフライです。ありがとうございました。

 ……なんでエビフライだよ!ここはもうちょっとかっこいいのじゃないのか!!


 そんな言葉が喉元から出そうになるほど、怪人とやらはまったくかっこよくなかった。等身大のエビフライにただ足が生えただけ。むしろかっこ悪い。


「なんであんなエビフライ怪人なんだよ……」

「エビフライじゃないよ!エビフレァだよ!」


 なんか無駄にかっこいいというか……そんなに変わりないけど、ただのエビフライにその名前はもったいないような気がする。


「ちなみに、種類はブラックタイガーみたいだね」


 その情報はいらない。


「……で、怪人って言うからには、あいつを倒さなきゃならないのか?」


 俺の言葉に、「うん」と頷き、怪人のエビフレァ……エビフライを見つめたあと、俺の方へと顔を向け、叫んだ。


「さあ!今こそ、フローラルホワイトの力を見せる時だよ!!」


 ああ。今こそ、フローラルホワイトの力を……って、フローラルホワイトってなんだよ!!

 ……あやうく、場の空気に流されるところだった……。危ない危ない。とりあえず、色にフローラルな香りなんて、一切ないと思うんだが……。

 ……なんか、この状況に慣れ始めて、それでもいっかとか思い始めてる自分が怖い。


「どうしたのさ!早く、あの怪人にホワイトハリケーンの力を見せつけてやろうよ!」


 ホワイトハリケーンってなんだよ!ただの竜巻じゃねぇか!!

 だが、だんだん状況に慣れ始めているのか、白まんじゅうが「さあ!さあ!」と急かすたびに、ホワイトヘリケーンだかソリケーンだかを打たなければいけない気がしてくる。


 ……ええい!やけくそだ!!もうやってやる!それに、目の前の怪人を倒さなきゃ、一生女のままのような気がする!


 そう思い、いつの間にか握っていたステッキを、右手でクルクルと回す。

 クルクルと回し続けたまま、俺は右手を後ろへとやり、反動をつけて、怪人めがけて、ブーメランのように投げつけた。


「ホワイト……ハリケーン!!」


 ただ投げただけで、ハリケーンでもなんでもないけどな!!

 ステッキはそのままエビフライめがけて飛んでいき……コンッ!といういい音をたてた。そして、その音を立てたところから、どこからともなく風が吹き荒れ、エビフライの立っている所だけ、竜巻が巻き上がった。


 エビフライは、涙目になりながらその巨体を竜巻に持ち上げられ、空へと飛ばされた。

 空の彼方へと、キランという効果音がつきそうな感じに飛んで行ったエビフライの後を、追うように竜巻も消えて行った。残ったのは、俺の手元に戻ってきたステッキと、エビフライが立っていたところにある、茶色い球体。


 ……その名の通りだった……。ほんとに竜巻出てきたよ……。まさかの展開にびっくりしすぎて声が出ないよ。


「初!怪人倒し、おめでとー!!でも、茶色かー……。残念。ハズレだね」


 ああ……。まあ、怪人倒せてよかった……って……ん?ハズレって……なんだ?


「なあ、ハズレって……」

「あれ?言ってなかったっけ?僕が天界に帰るには、虹の橋を七色の球体を使って書き、それで出来た橋を渡って帰るんだけど、その色が盗まれちゃったから、こうして変身して貰って、取り返してもらおうとしてるんだ。だから、虹の七色以外は使い物にならないんだ」


 え……?じゃあ、俺があいつを倒したのは無駄だったっていうことか……?……というか、それじゃあ俺は、女になり損じゃないか!!

 ってかさ……結局、こいつが色を盗まれたのが原因じゃねぇか!!


「……自分の失態は、自分で落とし前、つけやがれー!!」

「やーだよ!」


 そういって、俺が伸ばした手を、軽々と避ける白まんじゅう。そのあとで、俺が男に戻っても、こいつは捕まる気配を見せない。

 と、突然、こいつが空中で止まり、驚いた俺は地面に倒れ込んでしまった。

 呻きながら手をつき、立ち上がろうと上を向くと、白まんじゅうがいい笑顔で俺を見下ろしていた。


「今思い出したんだけど、その契約、色が全部集まるまで、解けないから♪」

「…………?……ッ!?」


 その後、家に帰ると、妹が「さっき叫び声が聞こえたんだけど、兄さんなにか知らない?」と聞いてきたが、無視した。

大変期間が空いてしまいました。すいません。

歌から考えたものを書いていたのですが、なんか違うと思って、全部消しまして……。次は……まあ、自由気ままに書いていきます。

たぶん、次もだいぶ空きそうです。


ちなみに、このお話群は、続編を考えられるものの集団なので、考えられないものは短編としてアップします。ご了承ください。

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