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メモ帳  作者: 榎本あきな
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2 人間は面倒

このお話のあらすじ


※残酷描写、流血、簡単に人が死にます。ご注意ください。


人間は面倒だ。人間関係を気にしたり、修羅場になったり、媚を売ったり……面倒すぎる。そんなの、自分のしたい様にすればいいじゃない。動物の方がよっぽど簡単に決まっている。

なぜ私がこんなことを言っているかというと…転校初日から、私にずっとくっついてくる馬鹿が面倒だからだ。隣の席だからって、私に友達がいないことを気にする必要はないっていうのに…。

そもそも、私は自分から望んで一人でいるんだから、邪魔しないでよね。



これを書いたときの自分の精神が情緒不安定すぎる。

 人間は面倒だ。


 修羅場になったり、媚をうったり、友達ごっこをしたり。


 本当に面倒だ。動物の方が簡単すぎる。だって、食べて寝て子孫残して死ぬ。それだけだもの。

 まあ、たまには人間みたいに、メスをめぐって争うこともあるけど、彼らは戦って決着をつける。面倒ないじめもしないし、そもそも、一番面倒な女性が男性を取り合うというのに発生しないのが楽だ。

 女性という生き物が、人間で一番面倒だから。


 そんな私にも今、面倒な相手がひっついている。

 隣の席の……えーと、江藤…だっけ?まあ、その佐藤君とやらが、私にずっとひっついている。


 なんでも、その内藤君が言うには、ずっと一人で本を読む私が可哀想なんだと。

 あんたが一番面倒だ。と言ってやりたいが、それを言うと、彼の取り巻き女子達が面倒だ。


 何せ、加藤君は、ハーレム系のものにありがちな、鈍感系主人公のような奴なのだ。しかも、それは恋愛だけであり、その他の事に関しては、お前鋭すぎるだろとツッコミたくなるほど、すごい。


 それに、これ以上取り巻き女子のいじめが発展すると、さらに対処が面倒になる。

 今は、雑巾を絞った水をかけられるとか、教科書を破られるとか、靴がなくなるや、移動教室の場所を誤って教えられるといった、簡単なものだが、これが、鋏で服をビリビリにされたり、校舎裏でボコボコにされるとかだと、教師に見つかって面倒なことになる。


 まあ、私の大事な文庫本に被害が一つも行ってないというのが幸いだけど。


 これに被害が及んだりしたら、私自身の怒りを止められる気がしない。と思いながら、文庫本を読む。その間も、面倒な隣の人は、私にかまわず、私に話し続ける。

 会話しない会話の何が楽しいのだろう。そう思いながら、本を読み続ける。


 弱気な先生が注意する声も無視し、本を読み続ける。


 すると、キーンコーンという、下校のチャイムがなった。

 日直の子が「起立っ!」という声にも従わず、座ったまま本を読み続け、皆が「さようなら」を言って帰ろうとランドセルを背負ったときに、私も本を片手に持って読み続けたまま、ランドセルを背負い、教室から出る。もちろん、歩く時も読みながら。


「おーい!待ってよ~」


 その無邪気な声に足を速めるが、クラスで一番足が速く、なおかつ走っている工藤君から逃げられるはずもなく、文庫本を持っている腕を掴まれた。

 舌打ちしながら振り返ると、そこには、将来イケメンになること確実の、小さい子が好きなお姉さんだったら発狂しそうなほどの整った容姿をした少年が、いつものように無邪気な笑顔を見せて、私に言った。


「一緒にかえろ?」


 その、小首を傾げたかわいらしい動作に、ここで断ったら、「一緒に帰ってくれなかった…」と悪気もなく、取り巻きの女子達に報告し、そして私のいじめが、さらに悪化するんだろうな…と思い、面倒だと思いつつ、私は彼の腕を振り払った。


「ご自由に」

「わーい!じゃあ、帰ろっか」


 私と一緒に帰れることが、そんなにご機嫌なのか、後藤君は、鼻歌を歌いながら私の後ろから隣へ、スキップで移動してきた。

 そして、唐突に話し始める遠藤君を、無視して、本を読みながら歩き続ける。


 横断歩道のとこまで来て、赤信号だったので、止まった。

 すると、その赤信号と同じような赤が、私の目の前を舞った。


 血だ。この鉄のにおいは、血だ。


 そう思い、文庫本をランドセルにしまう。血で汚れたら、嫌だし。

 横を見ると、突然の事に絶句しているらしい周りの人々。そして、目の前で人が死んだという事が、受け入れられていない様子の矢藤君。


 その彼の腕をつかみ、路地へと連れて行き、その最奥へ無理やり座らせる。突然の事に目を白黒させている斉藤君に、私の、血のように赤いランドセルを放り投げ、忠告する。


「ここから、絶対出ないで。自分の命が大切なら」

「えっ、ちょっと、待っ!!」


 近藤君が言い終わる前に、私はその路地から飛び出し、人目ないところで高く舞い上がり、屋根へと着地する。

 そして、周りが青紫色で、真ん中が狐色という炎を九つ、手のひらから空中に出し、私の目の前で死んだ人を殺した犯人を捜させる。


 しばらくすると、炎の一つから、反応があった。

 場所は…学校か。今日は、早く終わりそう。そう思いつつ、学校に向かって空を舞うように飛ぶ。飛ぶといっても、跳躍しているだけなんだけど。


 一回の跳躍では学校につくことはなかったため、2、3回ほど屋根を蹴り、跳躍する。

 いつものように跳び、ものの数十秒で学校についた。そのころには、あたりは夜そのものみたいに真っ暗になっており、月は真っ赤(・・・)に輝いていた。


 これは、周囲に影響を与えないようにするために、私の仲間が結界を張るために起こる現象である。結界を張ると、必ず昼夜が反転し、太陽は青色、月は赤色に変化する。

 また、結界を張る術者によっても、その色は微妙に違う。緋色や赤紫などだ。今回は朱色だから、私の知人であることは間違いない。


 結界が張られ、人気がまったくなくなったこの町に、叫び声があがる。三藤君の叫び声だ。彼は、私の忠告を無視して、路地裏から出てしまったらしい。


 彼は、私をどれだけ面倒事に巻き込めば気が済むのだろうと思いながら、仁藤君を残した路地裏へ戻ろう―――としたところで、後ろに殺気を感じ、そのまま前に跳ぶ。

 跳んで地に足をつけ、後ろを振り返ると、そこには、人のように立ち、鋭い眼光をぎらつかせ、牙を剥き出しにしている、体が全身、体毛に覆われた……いわゆる、人狼がいた。


「オレ、オマエ、コロス」


 片言の言葉を、結構な距離がある私の所まで聞こえる大きさでいい、その直後、一般人では目にも止まらぬ速さで私との距離を詰めてきた。

 まあ、私が一般人だったら、殺されてたと思う。一般人だったら(・・・・)


「犯行予告を言ってくれて、ご親切に、どうもありがとう。けど―――」


 私の目の前で、人狼の動きが止まる。いや、私が止めたんだけど。

 人狼は、心臓がある所を、私の周りにただよう、槍のように姿を変えた炎に貫かれていた。もちろん、刺された所は炎で焼かれて、血が出ないようになっている。血の後始末って、面倒だし。


「―――あいにくと、私は一般人じゃないの」


 そういって、人狼の胸から、槍に姿を変えた炎を抜く。やっぱり、この炎、ほんとに便利。なんでも姿を変えられるし、私の意志で動かせるから、取に行ったり自分で持ったりする必要がないし。まあ、他の物質に姿を変えられないってのが、少し残念だけど。


 そう思いながら、人狼に背中を向け、井藤君の叫び声が聞こえた路地裏へ向かおうとしたとき…後ろの人狼……もう馬鹿でいっか。後ろで、馬鹿の最後の叫びが上がった。


「オオオオォォォォゥゥゥウウウウァァァァアアア!!!!!」


 それは、きっと、馬鹿の最後の力を振り絞った攻撃だったのだろう。敵わないと悟りながら、けれど、それでも、最後まで諦めずに戦う姿に、私は純情にすごいと思った。

 私だったら、敵わないと悟った瞬間に、逃げる。だから、私は彼を評価しよう。


「グハッ!!」


 彼の心臓を、再度貫く。グリグリと、今度は、手加減なしで。彼を貫いた物体は、あの炎の物体ではなく、私の後ろに生えている、九つの、狐色の尻尾。その一本がまっすぐに伸び、彼の体を貫き、彼の体を再起不能にするために、体の中身をグルグルと掻き混ぜる様に抉る。


 ある程度掻き混ぜたところで、彼の体を貫いていた尻尾を引き抜き、振り返る。

 すっごい。この状態でも、まだ意識があるんだ。…まあ、焼いちゃうんだけど。


「お前は……たま……も…の……ま………え」


 そういって、立っていた彼の体は、その巨体を地面に倒した。

 私は、死ぬ間際に残した彼の言葉が気に食わなくて、訂正を申し出た。


「私を、あんな悪女…いや、悪狐と一緒にしないで。訂正をお願いしたい……って言っても、もう死んでるんだけど」


 そう呟きながら、九つの炎を一つにまとめ、巨大な炎にする。それをゆっくりと、死んだ人狼に近づけていく。


「もう聞いてないだろうけど、冥土の土産に教えてあげる。私は―――」


 人狼に、巨大な、外側が青紫、中央が狐色の炎を引火させる。その炎は、人狼の足元から徐々に腰、胸、首…と、すさまじい速さで人狼を燃やし尽くしていき、最後には、何も残らなかった。


「―――九尾狐」


 まあ、燃え尽きちゃったから、冥土の土産にならなかったけど。

 そう呟いて、伊藤君が叫び声をあげた所へ、のんびりと、屋根を伝っていく。なんで急がないかって?だって、もう手遅れだろうし。


 私の予想通り、恵藤君は、私が指定した路地裏の、少し外で、死体になっていた。彼の体は、酷いくらいぐちゃぐちゃになっていて、普通の人がみたら失神ものだろう。頭が残っているのが奇跡なくらいだ。

 そんな彼の顔は、整ってはいるものの、恐怖と驚愕に目を見開いたまま、そして、口が叫び声を上げた時のままになっている。叫んだあと、口を閉じ忘れるくらい、怖い目にあったのだろう。


 とりあえず、所々血で汚れている私のランドセルを取る。中を確認すると……よかった。本は汚れていない。

 ほっと一息つくが、これから…いや、彼の対処をどうしようと考える。


 確実に、あいつから「一般人を巻き込むとは、どういうことだ!」って怒られるだろう。でも、私の今の力じゃ、蘇生できても、完璧にできないから、人間じゃなくてゾンビになるしな…。

 しかも、栄藤君の無事なパーツは、今目の前にある、頭部だけ。これじゃあ、首だけゾンビになる。蘇生できても、心が人間の彼は、心を壊して妖怪になる可能性が高い。


 妖怪が増えたら、私の仕事が増える。それだけは嫌だ。めんどくさい。

 ……しょうがない。後で怒られるだろうけど、あいつに怒られるよりはマシだ。と思い、着ているフード付きパーカーのポケットから、私達だけが読める文字が書いてある、お札みたいな紙を取り出し、目だたなそうな、彼の首の後ろに、ペタリと貼る。


 少し離れて、力を解放するために、いつもは隠している狐耳と、九つの尻尾を出す。そして、九つの炎…狐火をだし、形を変え…転生用の陣を形作る。

 よし、後は、言葉を言っている間に、彼の体を創造するだけか。


「我らが慈母、天照大御神よ―――」


 うーん…。まあ、無難に人間でいいよね。あっ、でも、人間を創造するのは初めてだしなー…。

 確か、一番最初に創造したのは、猫だっけ。修行不足で、意志はつけれなかったから、そのままどっか逃げちゃったけど。


「―――彼の者を蘇えらせ、彼の者に新たなる肉体を与えたまえ―――」


 そういや、同期の子が創造したのは、同じ猫でも猫又だったっけ。確か、籠められた妖力が強いとできるっていう。

 自慢してきたから、ムカついて、ボコボコにしたっけ。いやー…あのときの私は、本が大嫌いだったから、まだまだ精神が未熟すぎた。


「―――そして、彼らに、理不尽な現実に対抗するための…力を!」


 今じゃあ、猫又くらい作れるけど。私も、この二年で力も強くなったしね。

 ちなみに、今言っていたのを要約すると「神様。彼を蘇えらせて、新しい肉体を与えてあげてください。あと、彼が死ぬ原因になったことに対抗する力も与えてあげてください」ってこと。一番最初に教えられたときは、なんとも神様に対して厚かましいと思った。


 陣がピカリと光り、それに合わせるように、そして、光が衛藤君の首を包み込むように、歌藤君の首も光り始めた。

 小藤君の体が徐々に出来上がり……そして、そこに変な物体ができ始めているのを見て、失敗したと思った。


 そういや私………いらないこと、考えてたね…。


 私が後悔している間にも、光はどんどん、阿藤君の体を作っていき……宇藤君の頭に、三角の物体を作り上げたところで、弾けるように光が消えた。

 そして出てきたのは……五藤君。そして、+αとして、………猫耳と付け根で二つに分かれている猫の尻尾がついていた。


 目を閉じていた古藤君は、その瞼を押し上げ、目を開けた。その無垢な瞳が、状況をつかもうと、きょろきょろとあたりを見回す。

 ゆらゆら揺れる自分の尻尾に気が付かづ、私に目を止めた木藤君は、嬉しそうに声を上げた。


「あっ、尾裂狐(オサキ)ちゃんだ!よかった~…。どこ行っちゃったのかと…。ところで、さっきの狼男みたいな人は、どうなったの…?」


 不安そうに聞く彼は、猫耳と尻尾もあいまって、まるで子猫のようで……。とてつもなく面倒だ。すっごい関わりたくない。なんで、彼の新しい肉体を作るとき、猫又なんか思い出したんだろう…。

 そう。彼は、猫又になってしまったのだ。私が、無駄なことを考えていたために。だが、本人は未だに気が付いていなかったりする。

 彼は、私が少し顔をしかめてたのに気が付いたのか、恐る恐る、私の様子を窺いながら、問いかけた。


「……もしかして…あだ名で呼ばれるの…嫌いだった?」

「はい。できれば、苗字で呼んでいただきたいです」


 君が面倒です。とはいえないので、とりあえず適当に言っといた。まあ、そのあだ名を呼ばれるのも、なんだかあいつに呼ばれている気がして、嫌だったのだが。

 私がそういうと、原因がわかったからか、ほっとしながら、改めて聞いた。


「…で、尾乃ちゃん。狼男は…どうなったの?」

「殺しました」


 私が表情も動かさずに言うと、驚きで、金魚のように口をパクパクさせていた。

 声が出ないようだ。だが、それよりも……彼は気が付かないのだろうか。…面倒だが、言っといたほうが、後で楽だろう。


「え、それっ「紀藤君」え、僕?…僕、水島なんだけど…」

「後ろ」


 私が指摘すると、「え?」と言って、後ろを向く。水……江君のの視線に入ったのは、ゆらゆら揺れる尻尾。それをつかみ、水野君の視線が、徐々に降りていき……尻尾の付け根をじっとみた。


「え。えっ、えぇええええ!?」


 驚いてぎゅっと握ると、痛かったようで手を放す。こちらを見た水谷君は、少々涙目だった。


「あの、えっと、これは……どういうこと?」

「まあ、それよりもまず……服を着たら?」


 とたんに、水屋君の表情がカチン。と音を立てて固まり、ギギギギと音がしそうなほどの速さで、下に視線を移していき………。


 赤い月と黒い空が、もうすぐで赤い太陽と青い空に変わるというとき、少年の、羞恥の叫び声が、この町に木魂した。


***


 あの後、私は九尾狐だとか、水乃君は、私の式神転生ミスで、人間ではなく、猫又に転生させてしまったこと。あとは、私のような妖怪は、暴走する妖怪を駆除するために、色々な地域に派遣されていること…などかな。


 まあ、私の式神として転生してもらった彼には、私の狩りを手伝ってもらわなければいけないのだけれど……。


「ねぇねぇ、尾乃ちゃん」

「何?」

「僕たちって、式神とその主人って関係でしょ?だから、裂狐(サキ)ちゃんって呼んでいい?」

「右斜め後ろ、300m地点に狂鳥」

「はーい」


 私の横に、同じように屋根の上を走りながら、後ろを見ずに正確に空気の刃を飛ばす。狐火で確認すると、狂鳥の体は、きれいに、それでいて、血を周りに飛び散らせないような切り方で、殺されていた。

 それを狐火で燃やしてから、私の方に視点を戻す。


「ねぇ、いいでしょ?ダメなら尾裂狐ちゃんって呼「裂狐で」やったぁ!」


 無邪気に鼻歌をを歌いながら、それでいて一つも敵をもらしたことがない、この斬撃の精度はすごいものだが、それに反するぐらいに、扱いが面倒だ。

 これなら、仕事が多くても、一人でやってた時のほうが楽だ。


 溜息をつきながら、夜空に浮かぶ赤い月を、屋根から屋根へと飛び移りながら見上げる。





 人間は面倒。けど、こいつは妖怪になっても、面倒です。

きづいたら、いつの間にか書いていた。

ちょっと残酷描写が入っていますが、たぶん、このお話が連載になったら、もっと残酷描写が酷くなる気がします。

そういや、歌からインスピレーションを抱いたものって、書いても大丈夫なんでしょうかね?大丈夫なら、書きたいんですけど…。


次回は、できたら、歌から想像したもの。できなかったら、適当に。


それでわ。

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