コラム。現代石鹸の異世界利用について
結論として肝である苛性ソーダを素人が作るのはかなり難しいようです。
作者がネットで調べた限りでは「石鹸を作るために市販石鹸を購入する」という方法を教えているサイトが少なからずありました。
また「苛性ソーダを購入する(劇物注意!)」と紹介されているサイトがほとんどです。
電気分解などで作成できるのですが副産物で塩素を発生させたりする(しない方法もありますが)ので、「不可能」とさせていただきました。「可能」になった場合トート先生の解説はかなり違うものになるでしょう。
一応、魔法で再現可能だとは思いますが(実際、地下の小人さんたちこと『シー』たちもそうしています)、
「魔法で解決」は物語として基本的に反則なので(そりゃそうだ)、作中では「謎の小人さんたちがつくっている」事になっています。
でも地下で苛性ソーダなんか造っていいのかっ!!
実際の現実世界での石鹸の代用物についても調べてみました。
髪の洗浄は日本やアジアでは米のとぎ汁が利用されています。
この世界には米は一応ありますが、気候条件から主食の地位にはありません。
外国ではヘンナを髪の洗浄と染色に用いていたようです。
食器の洗浄には重曹(昔から世界各地にあります)、灰(物理的に焦げを取るだけではなく、ほぼ炭素であるため酸素を二酸化炭素化するらしい)、塩(物理的に除去します。殺菌も)が古来から使われています。
主成分にサポニンを含む石鹸の実というのが実は古来からあります。
ムクロジ(リタ、ソープナッツとも)、サイカチ、トチノキなどが利用されています。
昔見たTVでうろ覚えですが、この実の成分と泡を消火器の原料にしたと聞いた覚えがあります。
入手手段が確保可能ならばトート先生の次の発明はコレですね!
ただ、この世界は中世ヨーロッパと同じく、半氷河期になっており、こういった植物が育つのかかなり疑問です。
トチノキならばセイヨウトチノキがスイスに自生しているので大丈夫だと思います。
麻や亜麻、絹、羊毛等の脱色や、主に毛織物などの洗濯に使われたようです。
ただ、マメ科の植物は細菌と共生関係にあるので、異世界での自生はかなり注意したいところです。
余談ですが作中に新作物として大豆を出したかったのですが、日本から「痩せた土地でも育って栄養豊富!」とヨーロッパに喜んで持ち帰った学者さんがいまして、菌の関係でまったく育たなかったという悲しい逸話があったので、「なし」になりました。
その関係でトチノキは保留となりました。
とりあえずあるにはあるが、洗濯や脱色に使われ、「体を洗う目的では一般的には使わない(その習慣がない)」と言うことにしておきます。
「糞のような理想のために」でトート先生が指摘していますが、中世ヨーロッパの気候(現代でも地方によっては恐ろしく寒かったりする)ではそもそも気温と日光が足りないので、「排泄物を発酵させて肥料を作る」ことができなかったりします。
我らの日本は温暖湿潤気候かつ、台風の通り道なので、豊富な水資源、植物資源があるのですが、
こっちの世界は結構寒いのでそういう植物があるのかなぁ……と判断。
とりあえず「ない」としました。
あるかも知れませんが、暖かい異国や、エルフなどの妖精族の領域だと思います。
チーアがいう「甘ゴケ」は水質浄化作用がありますが、石鹸の代わりにはなりません。