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温度
気付いたら、私は虚空を眺めていた
そこには誰かがいたはずで
私の知る場所にいたはずで
けれども私は、その人を
知らないフリをする
不器用だねと周りは笑う
その通りだと、私も笑う
みんな、不器用なんだと
誰かがいたはずの場所
今は空いている場所
そこには誰かがいたはずで
そこには誰かがいるはずだ
けれども誰かは
いないのだ
スッと通り抜けていく沈黙
誰かの言葉を待ったまま、止まる
私は笑う
誰もいないのに返事を待つのかと
残酷かも知れない
無慈悲かも知れない
けれど誰かが
そう言って笑わなければいけないから
ならば私が笑うだけ
お節介でも要らぬ世話でも
私はやりたいようにしよう
だから
君もやりたいように
すればいいのさ
不器用なんだね
私らみんな
けれども不器用は不器用なりに
わかることがあるのさ
誰かのいない場所は
まだあたたかいから
大丈夫
戻ってきても
あたたかいさ
そして
不器用なりに
誤魔化しながら
笑おう
このぬくもりに
身を任せて
『温度』