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夢色
薔薇色の明日がほしいと、願うことはない
例え願いが叶おうとも、その先までもが同じ色ではないだろうから
そうであっても、一色の中で流れるのは窮屈であるから
故に私は望まない
海に沈むような深い碧であれ
炎に焦がれるような激情の紅であれ
森に抱かれるような安らぎの翠であれ
私を満たすことはない
極彩色の中に佇み
人の色に染まるフリをする
艶やかでありながら虚しい極楽鳥の翼の内に
私の色を潜ませて
誰かに侵されるのを
私は良しとしない
此処にいる自分が私であるし
この手にある色が私だから
私は私の色を持つ
それを作るのは私だけ
けれどもあなたが零したインクは
滲みと一緒に溶けていく
私の中に、あなたと共に
誰もを弾いた油の色は
いともたやすく染められた
あなたの色は、すぐに私の色になった
まるでまぶたを閉じたとき
脳裏を掠める色のような
懐かしいような新鮮なような
何処にもない
けれど確かに存在する
私とあなたの色
いつかこの色を
誇って二人微笑めたら
幸せだろうね
『夢色』




