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私達の森が燃えている、美しい緑の森が人間たちの野蛮な焔に包まれていく。

燃え盛る火の粉はこの神の森の中心部へと近づいており、このままではこの場所も燃えてすべて灰となる。

「……こんな形で《《第二の故郷》》を離れることになるとはね」

私はそう呟きながら以前から研究していたノートを開く。

それは違う世界へ転移する方法を求めて200年続けてきた研究であり、すでに基礎理論の構築は出来ているし動物での実験も成功してる。

問題は実験で転移させた動物一匹などよりもはるかに沢山の同胞を同時に転移させられるのか?ということだけ。

(でも、やるしかない)

そうしなければこの森は燃やされ、同胞は死に絶える。最悪どこぞの《《漫画》》みたいに性奴隷……なんてのもあるだろう。

今の私は12氏族を率いる長だ。まずは12氏族を存続させる。

私はすべてのエルフ達に向け、魔力も込めた声で宣言を出す。


「諸君、我々は生き延びるために《《この森ごと転移する!》》」


空中に向けて魔方陣を映し出すと、エルフ12氏族の郷が全て入るように転移魔方陣を発動させる。

「魔方陣に力を捧げよ!復讐の時来るその日まで、我々が休める安息の地へ行くために!」

10分ほどで空中に飾られた魔法陣がほんのりと赤く光る、さすが魔力自慢のエルフが千人も居ればこの規模の魔法もちょちょいのちょいという事らしい。

「人間よ!この神の森は滅びぬことは無い、きみたちの行いは百年後千年後己や己の子孫に降りかかる事であろう!」

行先は一つ。

私の一つ目の故郷・日本だ。


*****


色々な景色が瞬きながら消えていく。

日本の実家や学校の風景、旅先で見たものたち、日本の両親や友人たちの顔、神の森に転生した直後に見た神の森、エルフの同胞たちと遊んだ風景、そして燃え行く神の森。

『水緒、もう起きなさい』

そう呼ばれた気がして、ふと目が覚めた。

(水緒って呼ばれるの久しぶりだな)

当然だ、今の私は 翡翠眼(ひすいがん)のシーヴァ。神の森のエルフ12氏族を束ねるリーダーだ。

私は飛び上がって建物を飛び出せば同胞のエルフ達が弓や剣を持ったまま数人倒れこんでおり、彼らの首元に指をあてると脈があった。

転移の際に魔力を使いすぎたせいで気を失っているのだろう、しばらく寝ていれば地面から魔力素を吸収して自然回復するので問題ない。

周囲の生き物の気配を探ればそのほとんどはエルフ達のものだ。遠くにクマやシカの気配もある。

鑑定魔法を起動させて現在位置を探らせれば、【日本国青森県田子町】と出てきた。地図に変換したところ青森県・秋田県・岩手の県境に当たるエリアの青森県側らしい。


「……転移に成功したんだ」


そして目の前にはエルフの森のご神木。

屋久杉といい勝負な超巨大樹の前に跪いて「ご神木様のお力添えに感謝いたします」と祈りをささげれば、いいって事よという風に葉擦れの音がした。

こうしてエルフは民族の消滅を逃れ、日本へと逃亡した。

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