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やっとたどり着いた ~オードリーの生きる場所~  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 電子2/10


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第8話 ミラー子爵家からランディアの王都は

 ミラー子爵領からランディア王都は比較的近距離。

 途中一泊か二泊、宿に泊まって、馬車に乗っていけば着くとのこと。

 だけど、今回は船を使って川を上っていくルートで行くと言われた。


 ミラー子爵家から少し北に行くと、西のほうからの大きな川があって、船での行き来も盛んらしい。

 その川を上っていくと、王都の北側の位置に出る。そこから馬車に乗ればすぐ王都中心部。

 出会ったばかりの人間が、二日も三日も同じ馬車に同乗していれば気づまりになるかもしれないというルーク様の配慮っぽい。ありがたいと言うか、紳士だなあ……。


 船旅は、快適だった。

 まだ春先で、船の甲板に出ていれば、風が少し寒い。寒いけれど、耐えきらないほどではないし、それよりなにより初めて見るランディア王国の風景や建物をルーク様がいろいろと解説してくださるのを聞くのが楽しかった。

 移動というより、もはや観光。


「わあ……! あの建物は何ですか? もう、王都のお城に着いたのかしら?」


 川の向こう側に見えたのはかなり大きな宮殿のような建物。


「ああ、あれはですね……。ラドフォード侯爵家の別荘ですね」


 どこかで聞いたことがある……、あ。


「ヴィクトリア・アン・ラドフォード……侯爵夫人」

「ご存じでしたか?」

「レシュマ先生が、ヴィクトリア・アン・ラドフォード侯爵夫人にも、保存花を贈りたいと……」


 伝えたら、ルーク様はちょっと考え込んだ。


「レシュマにとっては……親しくさせていただいている高位のご夫人……でしかないのかもしれないが……。ちょっと、気をつけていただきたいのです」


 気を付ける? 気難しいご夫人とかかな? でもレシュマ先生の知り合いなのだから、多分良い人だとは思うんだけど……。


「ヴィクトリア・アン・ラドフォード侯爵夫人は、再婚してラドフォード侯爵夫人となったのですが、再婚前はアルウィン侯爵夫人だったのです」


 再婚したご夫人だから、そのあたり気を配れってコト?

 とりあえず、ラドフォード侯爵夫人イコール元アルウィン侯爵夫人ね。ふんふん。


「で、レシュマは以前、そのアルウィン侯爵令息と婚約を結んでおりまして。まあ、いろいろあって、婚約は解消したのですが……」

「は⁉」


 以前ということは……。え、ええと……。


 ラドフォード侯爵夫人がアルウィン侯爵夫人だったときに、レシュマ先生は、アルウィン侯爵令息と婚約を結んでいた。

 でも、今はその婚約は解消……。


 つまり、レシュマ先生にとってのラドフォード侯爵夫人って、元婚約者のお母様。

 それなのに、仲良しなの?

 花を贈りたいなんて、ふっと思い付くくらいに?


「元婚約者の令息は、今は男子修道院にいるとかで」

「ええ?」


 アルウィン侯爵夫人は、離婚して、再婚して、ラドフォード侯爵夫人になって。

 レシュマ先生の元婚約者のアルウィン侯爵令息が、男子修道院にいる?


 聞くのが怖い。絶対何かあったに違いない。


「それから、レシュマに認定魔法使いの家庭教師をつけてくれたのも、アルウィン侯爵夫人の身分だったときのラドフォード侯爵夫人で」


 認定魔法使いの家庭教師……。子爵家ではかなり金銭的負担になるだろう。

 侯爵家なら……、うん、余裕は余裕だろうけど。


「その家庭教師……ウォルター殿が元々は最年少認定魔法使いだったんですが」

「あれ? 今は……」

「はい。レシュマが認定魔法使いになったので、最年少はレシュマになりまして」

「わあ……。世代交代」

「なんだかんだありまして。レシュマは……、ウォルター殿と……結婚を……。なので、」

「は、はいい?」

「なので、ラドフォード侯爵夫人がレシュマとウォルター殿を結び付けてくれたようなものでして……」


 ええと、ええと……。

 つまり、元婚約者の母親が、夫となった人を紹介してくれた……ってこと?

 なのに、レシュマ先生は、元婚約者のお母様と仲良し……。


 まあ、貴族の身分の皆様にはいろいろある……。

 触れないほうがいい……かも。

 余計なことを知ることで問題を引き起こす……のは怖い。


「あまり、深く突かないほうが、良い案件……ですね?」

「はい。しかし、全く知らないでいるというのも……」


 危険かもしれない。貴族には派閥とかもあるし。

 アルウィン侯爵夫人は、離婚して、再婚して、ラドフォード侯爵夫人になったということは、アルウィン侯爵家とラドフォード侯爵家の間になんらかの確執があるかも?

 無いとしても……敵対派閥までじゃなくても、それなりに線を引いたお付き合いとか? う、うーん。侯爵家同士が反目していたら、派閥の伯爵家、子爵家、男爵家……と、線が引かれまくっているかもしれない……。


 ミラー子爵家は……、ラドフォード侯爵家派閥寄りかな? 中立かな?


 知識は仕入れて、触れない……というのがベストかしら。

 うっかり触れて、大惨事になったら……。

 また別の国に逃げるのも……まあ、いいと言えばいいのだけど。


 クライヴ・ユーバンク・クリス様への借金をお返ししてからにしたい……。


 これほどまでにお世話になっているというのに、借金を踏み倒して逃げるのは人としてやってはいけないでしょう。


 マイケル様、金払え! と主張した私だからね。

 クライヴ・ユーバンク・クリス様にもきちんとお支払いをせねば!


 つまり、私はなんとかランディア王国もしくはエルミス王国でなんとか生きて行かないと。だったら、ある程度のことは知らなくてはね。


「……ルーク様。申し訳ないのですが、ランディア王国におけるタブーですとか、私が聞いてよい範囲でいいからいろいろ教えてください……」


 のんびり楽しい船の旅……なんていう場合ではなくなった。

 他国で暮らしてきた私には、ランディア王国の常識的なことは全く分からない。

 近隣諸国だから、言語を含めて生活習慣はおおむね似ている……としても。


 貴族の、限定的なルール的なことも、それぞれの国では違うだろう。


 平民だから、貴族の派閥や事情とは無関係です……なんて、言えない。

 私は商人だ。

 商売をして生きるつもりだ。

 というか、商売以外に生きるすべを知らない。

 自分で立って歩く。足場を固める。生きていくためには金銭が必要。

 だったら、郷に入っては郷に従え。知識は自分を守る武器にもなる。知らないということは、極寒の地で下着一枚で過ごしているようなものだ。


 ルーク様にいろいろ教わっているうちに、船はランディア王都北の船着き場に到着。

 馬車に乗り換えて、ミラー子爵家のタウンハウスへ向かう。その馬車の中でも、わたしはあれこれと尋ね、ルーク様は面倒がらずに丁寧にいろいろと教えてくれた。

 ホント、ありがたい。ルーク様にもいつか必ず恩をお返ししよう。







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