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やっとたどり着いた ~オードリーの生きる場所~  作者: 藍銅 紅@『前向き令嬢と二度目の恋』2巻 電子2/10


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第13話 夜会

 夜会。夜に開かれる社交的な集まり。

 ルーク様は子爵家の令息なのだけど、たとえば王太子妃様御主催の晩餐会などなど、ものすごく格式の高い集まりには参加したことはないらしい。

 今まで参加したのは、ほとんどが下級貴族の集まりだった……と聞いていたから、私はあんまり緊張はしていなかった……のに。


「……すみません、オードリーさん」

「はい?」


 いきなりルーク様が謝ってきた。


「小規模な知人の集まりに一度か二度、参加してもらうだけのつもりだったのですが……」

「はい」


 ルーク様は、招待状と思しき封筒を、私に手渡してきた。

 ……封筒に使われている用紙がすごく立派。

 嫌な予感がする……。

 まず、差出人を見てみたら……。


「ヴィクトリア・アン・ラドフォード侯爵夫人⁉」


 え、え、え⁉ しかも招待状にはルーク様のお名前だけじゃなく、私の名前まで記載されていますが、どうして⁉


「……レシュマからなんらかの話が行ったのでしょうね」

「レシュマ先生……」


 いや、確かに手紙を書くとか言っていましたけど。思わず頭を抱えたくなった。


「マダム・クリスのお店でのプリザーブドフラワーの評判を聞いたのかもしれません。耳の速い方でしょうから」


 今、私は週に一回、私はマダムのお店にプリザーブドフラワーを運んでいる。

 売り上げは上々らしい。プリザーブドフラワーがセットされた商品は一日にだいたい十から二十くらいの数が売れているとのこと。

 ガッツリ贈り物仕様の宝飾品をガラス箱に入れて、プリザーブドフラワーを添えてお買い上げのばあいもある。

 予想外に好評なのは、宝飾品ナシの、ガラス箱とプリザーブドフラワーと敷く布の三点セットのみのお買い上げ。

 自分で刺繍したハンカチなんかを友人・知人に送る時の包装用の箱&装飾的な感じで使い勝手がいいらしい。

 なるほど……。

 装飾が施された紙製の箱……とか、木箱とか。蔓で編んだ籠とか。あることにはあるけど。

 ハンカチくらいの小物を、手土産程度に送るのにも、きちんとしたプレゼント! 的に送るのにも、ガラス箱とプリザーブドフラワーのほうが見栄えが良いよね。うんうん。

 好調。おかげで私の収入もなんとか安定しそうって安心していたのよね……。


 あとはマダムのご指摘通りにもっと自然な感じのプリザーブドフラワーを作ることが出来たら、それを持ってヴィクトリア・アン・ラドフォード侯爵夫人にお目通りを願おう……と思っていたのに。


 ラドフォード侯爵夫人の動きのほうが早かった……。素早すぎる……。さすがは高位貴族というべきか……。


「や、夜会は……十日後ですね……」


 さすがにそれまでに自然な感じのプリザーブドフラワーができるのか……。


 いや、実験はし始めているの。

 手順は元々の、レシュマ先生から習ったものと大差はない。

 アルコールが主成分の脱水液に漬けて水分を抜いて、それから、着色液に漬ける。その着色液を、赤や青の色を付けるのではなく、透明な色を付ける感じで……。


 正確に言えば、色を付けるのとは少し違うのだけれども。


 そう……ね、たとえば家具。木材を切って、やすりをかけて滑らかにして、組み上げて、完成前にニスを塗る。

 木材用の塗料は花には塗れないけれど、イメージとしてはニス塗り的な感じ。つまり花を透明な膜で覆って、元々の花の持つ色をちょっと輝かせる感じ。


 今、オレンジ色のラナンキュラスとガーベラ、いろいろな色のチューリップなんかを使って実験を繰り返している。


 ラナンキュラスは比較的うまくいったけど、ガーベラは花はともかく茎が柔らかくて、どうしてもくたっとしてしまう。


 まだまだ試行錯誤を繰り返しているんだけど……。

 侯爵夫人に差し上げるのなら、安めの花ではなく、薔薇とかユリとか、高貴感漂う花にしないと……。


 急いで作っても失敗する。

 でも、とにかく丁寧に頑張ってみた。


 今までの色目が均一な花と実験中の自然な発色の花。並行して作る。どんどん作る。

 作っては乾燥させ、作っては乾燥させ……を、繰り返す。


 必死になって作っていたら。


「あの……花はもちろんなのですが、そろそろオードリーさんの夜会用のドレスを……」


 申し訳なさそうに、ルーク様に言われた。


 きゃああああああああ! 忘れてないけど後回しにしていた! マズい!


「あの! ミラー子爵家の懇意の商会に、ダークブラウンのシンプルなドレスを一着、注文させてください! それからベルト代わりに腰に巻くリボンを! リボンはオレンジ色で!」

「シンプルな装いですね。それなら既製品に手を入れればすぐに用意が出来ますが……。えっと、宝飾品とかは……」

「要りません! 髪にオレンジ色のプリザーブドフラワーを飾るので! ドレスはシンプルなほうが良いんです! だから、ネックレスとか、そういうものも不要です!」

「あ、なるほど……」


 宣伝大事です! そのためにオレンジ色の花を……と思って、急いでいたの!

 花に気を取られていたわー。あああああ。


 急いでもらって、なんとか夜会の三日前にドレスの試着!


 侯爵家の夜会に参加するにはさすがに地味すぎる感じなので、ドレスのスカートの裾とか袖とかに、レースをつけてもらった。

 レースを縫い付ける糸の色は金。

 ダークブラウンとオレンジに合わせて金色を選んでくれたのだろうけど……。

 ルーク様の髪の色って金だよね……なんて、ちょっと意識をしてしまったり。


 あわわわわ……。


 パートナーにしていただくからって、意識しすぎ! 

 今は愛だの恋だのなんだの方面よりも、自分で稼ぐこと優先!

 マダムのおかげで定期的な収入はある程度は確保できるようにはなったけど。

 だけど、まだ、ミラー子爵家のタウンハウスにお世話になっている状態。


 プリザーブドフラワーを作って保存しておけるほどの広さの部屋を、王都で借りられるほどの稼ぎじゃない。


 愛だの恋だの浮かれるような感情は、ちゃんと自分の足で立ってから!



 だと言うのに。

 まさか、夜会の場で、あんなことを言われるとは……。














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