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終わった世界をキャンピングカーで。~白と黒の少女の、気ままな終末紀行~  作者: 月夜るな


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Route:049『眠らない摩天楼』



「おー! これは大都市!」

「ん。主要都市だと思う。……規模が違う」


 いつものように雪の残る国道を南下していた私たちは、突如として視界を埋め尽くした巨大なシルエットに息を呑んだ。

 都市自体はここまでの経路で何度も見てきたけれど、ここまで摩天楼が密集し、かつ形を保っている場所は初めてだ。

 北海道では自然の中ばかり走っていたし、青森に入ってからもここまでの都会には出会わなかった。


 一応遠目では北海道でもビルっぽいのは見えてたが、そこに行くことなくあの連絡大橋にたどり着いた。


「青森県の主要都市かな?」

「たぶん。地図データは相変わらずバグってるけど」


 道路沿いの看板は風化して読めないけれど、目の前に広がる光景がかつての繁栄を物語っている。

 鉛色の空に突き刺さるような高層ビル群。

 ガラスのカーテンウォールを持つ現代的なビルや、幾何学的なデザインの商業施設が、墓標のように、あるいは記念碑のように立ち並んでいる。


 崩壊したビルや、植物に飲まれた建物もちらほらあるけれど、中心部は驚くほど綺麗だ。

 道路のアスファルトも、ひび割れこそあるものの平坦さを保っていて、『ポラリス』のタイヤが滑らかに回る。


「あれって、新幹線の線路?」

「……ううん。たぶん、リニアモーターカー」


 ルナが頭上を走る高架橋を指差した。

 コンクリートのチューブに覆われた、近未来的な軌道。

 実用化されるまでには、地域との揉め事や予算問題で相当な時間がかかったと聞くけれど、完成したそれは今も威容を誇っている。

 もちろん、音速で走る車両はもう来ないけれど。


 もしかしたら以前の無人電車が走っていた駅のように、無人運行のリニアモーターカーが走っている可能性もゼロではないけど。


「すごいね。ここ、電気系統が全部生きてるよ」

「うん。消えている街灯のほうが圧倒的に少ない」


 日が沈みかけて、薄紫色に染まり始めた街並み。

 それに呼応するように、街灯やビルの航空障害灯が次々と点灯していく。光量センサーが生きていて、正確に「夜」の訪れを感知しているのだ。

 誰もいない交差点の信号機が、規則正しく赤から青へと変わる。まるで、透明人間たちがそこで生活しているかのような錯覚を覚える。


「……きれい」

「ん。宝石箱みたい」


 廃墟の夜景。

 人の営みが生み出す温かさはないけれど、無機質な光の群れには、冷たく静謐な美しさがある。


「あのビルとか、登れそう」

「ん」


 ビル群の中でも一際高く、そして非常に綺麗な状態で残っているランドマークタワーが目に入った。

 ガラス張りの外壁が夕日を反射して輝いている。中層階や上層階の窓にも、ちらほらと明かりが灯っているのが見えた。


「エレベーターとか、生きてるのかな」

「可能性は高い。このエリアの電力供給は安定してる」

「登ってみる? 屋上に」


 私はハンドルを切り、そのタワーへと向かう大通りに入った。

 高いところが好き、という子供っぽい理由もあるけれど、この街の全貌を上から見てみたいと思ったのだ。


「……ん。いいけど、上がれる保証はないよ。セキュリティロックされてるかも」

「それはその時さ。階段で登る体力はないけど、行けるところまで行ってみようよ」

「なら、いい」

「それなら決まりだね。それに……」


 ちらりとルナを見る。


「それに?」

「ロックがかかっててもルナがハッキングで解錠できちゃうんじゃない?」

「……否定はしない」


 私たちは顔を見合わせて笑った。

 目指すは地上数百メートル、天空の展望台。最高の景色が私たちを待っている予感がした。


(続く)

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