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終わった世界をキャンピングカーで。~白と黒の少女の、気ままな終末紀行~  作者: 月夜るな


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47/60

Route:047『Side:L / 欲張りな航路と、移動する要塞』



 ユキとAIが運転している『ポラリス』。

 この車は、ただのキャンピングカーじゃない。

 核融合炉をメイン動力として、燃料補給なしで地球を何周でも走り続けられる。車内の空調、水循環、電力供給。全てが半永久的に稼働する、すごいやつ。


 わたしは、運転席でハンドルに手を添えているユキを横目で見る。

 基本はAIの自動運転だけど、彼女は念の為といって、常に前方やモニターを注視している。真剣な眼差し。綺麗な横顔。


 ……ユキは隠しているつもりかもしれないけれど、わたしは知っている。

 この『ポラリス』には、過剰とも言える高度な防衛機構セキュリティが搭載されていることを。

 動体検知センサー、自動追尾タレット、高電圧の電撃ネットランチャー。どれだけのお金とコネを使ったのか、それとなく聞いても教えてくれなかったけれど。


 でも、わたしには分かる。ハッキングしなくても、システムログを見れば一目瞭然だ。


 だから、ここは世界一安全な場所。移動する要塞であり、わたしたちだけの甘い城。


 タイヤが雪道の段差を越え、車体が小さく揺れた。

 サスペンションが衝撃を殺し、車内には心地よい揺れだけが残る。静かな走行音は、まるで子守唄みたいだ。


 外の景色は相変わらず、雪と枯れ木と廃墟の繰り返し。代わり映えしないはずなのに、ユキと一緒なら、ただの雪景色が宝石箱の中みたいに輝いて見える。


「……ふふ」


 自然と、笑みがこぼれた。


「どうしたの? なにか嬉しいことでもあった?」


 ユキが不思議そうにこちらを見る。


「うん。ユキと一緒で、嬉しいなって」

「……それはそれは。私も同じだよ」


 ユキが少し照れたように鼻をこすった。こういう素直な反応が返ってくるのが、たまらなく好きだ。


 わたしは手元のタブレットに視線を戻す。

 青森県に入ったのは確定しているけれど、南下するにつれて、北海道の時と同じように地名データが欠損し始めている。

 ここから先は、古い地図データと推測で進むしかない。


「ねえ、ユキ」

「ん?」

「秋田と、岩手」

「……うん?」

「ユキは、どっちがいい?」


 わたしは地図を表示させた画面をユキに見せる。


「その問いの真意は……」

「現在地は青森の南端。ここから南下するルートは二つ」

「なるほど」

「西へ行けば秋田県、日本海側。東へ行けば岩手県、太平洋側」


 日本海側は雪が多いけれど、海鮮が美味しいかもしれない。太平洋側はリアス式海岸の絶景が続いているはずだ。通常なら、どちらかを選んで最短ルートで東京を目指すところだけど。


「あ、そゆこと。……別に、どこでもいいかなぁ」


 ユキが楽しそうに口角を上げた。

 にしし、と悪戯っぽく笑う。


「なんなら、両方行っちゃう?」


 ……やっぱり。

 ユキならそう言うと思った。わたしは呆れたような顔を作ってみせたけれど、内心では同じことを考えていた。


「それもいいかも。どうせ秋田と岩手は隣接してるし、ジグザグに進めばいい」

「でしょ? 急ぐ旅じゃないし、見れるものは全部見ておきたいじゃん」


 旅に終わりはない。

 誰かが待っているわけでも、締め切りがあるわけでもない。だったら、欲張りに全部楽しんでしまえばいい。


「りょーかい。ルート再検索。……欲張りな船長さん」

「ふふ。優秀な航海士さんがいて助かるよ」


 わたしたちは顔を見合わせて笑い合った。

 『ポラリス』は分岐点を迷うことなく直進する。まずは日本海側、秋田へ。その次は山を越えて岩手へ。気ままなジグザグ飛行が、ここから始まる。


(続く)

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