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終わった世界をキャンピングカーで。~白と黒の少女の、気ままな終末紀行~  作者: 月夜るな


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Route:032『ブロックの味、旅の味』



 基地跡での大回収作業を終え、私たちは再び『ポラリス』に乗り込んだ。ずっしりと重くなったカーゴスペースの感触を背中に感じながら、アクセルを踏み込む。

 宝物庫だった城塞が、バックミラーの中で小さくなっていった。


「ふぅ……一仕事したね」

「ん。大戦果」


 ほどよい疲れと共に、空腹がやってくる。

 私はコンソールボックスに入れてあった開封済みのパッケージを取り出した。銀色の袋に入っているのは、長方形に固められたブロック状の物体だ。


「……はむ」


 片手でハンドルを握りながら、ブロックの端を齧る。

 口の中の水分が一気に持っていかれる独特の食感。微かなチーズの風味と、ビタミン剤っぽい後味が広がる。


「このブロック型の食糧ってさ、便利だけど……飽きるよね」

「ん。否定はしない」


 助手席のルナも、同じものを齧りながらミネラルウォーターで流し込んでいる。これは『携帯型食糧Ⅱ型』。私たちがこれまで主食(兼おやつ)としてきた、高圧縮栄養ブロックだ。


「手軽に栄養補給ができる。運転しながらでも食べられる。腐らない」

「利点はそこだよね。まさに『燃料』って感じ」


 行儀が悪いかもしれないけれど、咎める人はいない。

 このⅡ型は、味のバリエーションとして「チーズ味」「フルーツ味」「チョコ味」なんかがあるけれど、ベースの粉っぽさが強すぎて、最終的には全部「ブロック味」に感じるのだ。

 あとは時々食べていたレトルトのシチューやクラッカーと言ったものもあったが、味はこのブロックと同じような感じ。同じとは言い難いか……まだこっちのほうが食事をしている感じがある。


「さっき回収したのがⅢ型だと考えると、こっちは一世代前のモデルなんだろうね」

「ん。Ⅲ型は『食事』だけど、Ⅱ型は『補給』」

「うまいこと言う」


 Ⅲ型は、ハンバーグやシーフードといった「料理」をそのまま真空パックにしたようなものだし、それと比べるとこのⅡ型は効率化の権化みたいな存在だ。

 でも――。


「まずくはないんだけどね」

「ん。食べ慣れた味」


 なんだかんだ言って、このパサパサしたブロックが、私たちの旅を支えてきたのだ。雨の日も、風の日も、何もない廃墟の夜も。

 これを半分こして齧りながら、地図を広げて次の目的地を相談したりもした気がする。そう考えると、少しだけ愛着が湧いてくるから不思議だ。


 長らく使っているものとか、そういうものってやっぱり古くても愛着が湧いちゃって中々捨てられないってこともあるよね。これはきっと私だけではないはず……。


「新しいご馳走(Ⅲ型)が手に入ったのに、わざわざこれ食べてるのも変な話だけど」

「ん。在庫処分。古いものから消費する(先入れ先出し)のが鉄則」

「だよねぇ。腐らないとはいえ、風味は落ちるし」


 私たちは苦笑しながら、ブロックの最後の一欠片を口に放り込んだ。


「夜は、Ⅲ型のハンバーグにしよっか」

「ん! 賛成。あとデザートも」

「ふふ、もちろん」


 口の中に残る粉っぽさを水で流し込みながら、私たちは夕食への期待に胸を膨らませて、秋の空の下を走り続けた。

 不味くはない「旅の味」を、噛み締めながら。


(続く)

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