Route:031『満載のポラリスと、甘味の宝石箱』
「これで全部?」
「ん。ラスト」
基地跡での回収作業を終え、私たちは数往復して運んだ段ボールの山を前に、満足感と少しの疲労感に浸っていた。
『ポラリス』のカーゴスペースは、戦利品で埋め尽くされている。
今回の収穫は、まさに「大当たり(ジャックポット)」だ。
まずは武器関係。小型のビームガン二丁に、アサルトライフル型のエネルギー兵器二丁。専用の充填器と、予備のエネルギーパックも確保した。
これで、熊が出ても、あるいは装甲車が出ても(戦うつもりはないけど)撃退できる。
「これでまた当分は、補給の心配はないねぇ」
「うん。そもそもまだ前の在庫も使い切っていないし」
「あはは、まあそうだね」
貧乏性……もとい、慎重派の私たちは、見つけたものを「念には念を」と回収しすぎてしまう癖がある。
次いつ補給できるか分からない恐怖があるからだけど、今回は少し張り切りすぎたかもしれない。
そして、メインディッシュの食料だ。冷凍保管庫で見つけた『携行型食糧Ⅲ型』は、私たちの食生活を劇的に変えるラインナップだった。
第1冷凍庫からはType-A、第2冷凍庫からはType-B。そして以前見つけたType-C。
パッケージの記載によれば、内訳はこうだ。
Type-A:海鮮料理系(サーモンのクリーム煮、シーフードピラフ、鯖の味噌煮etc)
Type-B:肉料理系(ハンバーグ、ビーフシチュー、照り焼きチキンetc)
Type-C:カレー類(ビーフ、ポーク、グリーンカレーetc)
「海鮮系があるのは凄いね」
「ん。技術革新の賜物」
一昔前なら、魚介類は長期保存に向かないから缶詰くらいしかなかった。でもこのⅢ型は、特殊な調理法と真空パック技術で、生に近い食感を何年も維持できるらしい。
肉料理も、昔の「ゴムみたいな肉」じゃなく、ちゃんとジューシーな肉汁が出る仕様だとか。
「食糧のバリエーションが一気に増えたね」
「ん。毎日ごちそう」
と言っても、私たちは一日二食の小食コンビだ。これだけの量を消費するのに、一体何ヶ月かかるだろう。
「そういえば、データにはType-Eまであるって書いてあったけど……」
「ん。DとEは見当たらなかった」
「どんなのだったんだろうね?」
幻のDとE。
流動食とか、超高カロリーの緊急用ブロックとかかな? まあ、ないものは仕方がない。
食料と武器の他にも、医療品や生理用品も大量に確保した。女性二人旅において、生理用品は水と同じくらい必須アイテムだ。
どんなに世界が荒廃しても、体のサイクルは待ってくれないからね。
「……そろそろ、キャンピングカーも手狭になってきたかも」
「確かに。収納棚がパンパン」
「回収しすぎたかな……いやでも必要だし」
「ん。でもとりあえず、今は大丈夫」
ちょっとこの先の補給計画は見直す必要があるかもしれない。
私たちの消費スピードに対して、供給(回収量)が多すぎるのだ。贅沢な悩みだけれど、車が重くなりすぎると燃費(バッテリー効率)にも響く。
「次からは、ちょっと選別を厳しくしようか」
「ん。賛成。本当にレアなものだけにする」
そんな反省会をしつつも、私の顔はにやけていた。だって、基地跡で「最高のレアアイテム」を見つけてしまったから。
そう! デザートタイプの携行型食糧!
正式名称は『携行型食糧・補助Ⅲ-S型』
通称「スイーツパック」だ。
「これを見つけた時は震えたね」
「ん。奇跡」
無骨な段ボールに入っていたけれど、中身は乙女の夢が詰まっている。こちらもAからCまで種類があった。
Type-A(和): 羊羹、抹茶カステラ、みたらし団子
Type-B(洋): ガトーショコラ、チーズケーキ、ブラウニー
Type-C(果): フルーツコンポート、マンゴープリン
特にType-Bの洋菓子セット!
ガトーショコラなんて、濃厚なチョコの香りが袋の外まで漂ってきそうな雰囲気だ(実際は真空パックだけど)。
疲れた時に甘いものを食べられる幸せ。それは何にも代えがたい。
ちなみにさっきの携帯型食糧Ⅲ型はDとEがないと言ったが、Ⅲ-S型については、Cまでみたいなので、全部あったということになる。
「今日は早速、Type-Bのガトーショコラを開けちゃおうか」
「ん! コーヒー淹れる」
ルナが今日一番の速さでキッチンへ向かう。殺伐とした基地の跡地で、優雅なティータイムが始まりそうだ。
(続く)




