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終わった世界をキャンピングカーで。~白と黒の少女の、気ままな終末紀行~  作者: 月夜るな


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Route:029『沈黙の城塞と、大回収の予感』



「ねえ、ルナ。これ何の施設だと思う?」

「ん……たぶん、自衛隊の基地?」

「だよね」


 公園でのキャンプを終え、さらに北上を続けていた私たちが行き着いたのは、森の中に突如現れた巨大なコンクリートの壁だった。

 『ポラリス』を停車させて見上げると、壁の向こうには監視塔らしきシルエットも見える。

 入口ゲート付近には瓦礫が散乱しているけれど、施設そのものは驚くほど綺麗に残っていた。

 一般の建物とは、造りの頑丈さが違うらしい。


「ここ、かなり広いね」

「ん。フェンスの長さから推測するに、東京ドーム数個分」


 地図データは相変わらず文字化けしているけれど、この威圧感は只者ではない。

 かつての国防の要、自衛隊基地(駐屯地)跡で間違いないだろう。


「行ってみる?」

「ん。何かいいものが補給できるかも」

「だね。これは期待大だよ」


 もしここが手つかずの基地なら、宝の山だ。

 真っ先に思いつくのは、食料――戦闘糧食レーションだ。以前別の場所で手に入れたものは、正直「食べられなくはない」レベルの味だった。

 けれど、当時の噂によれば、軍事予算を投入して開発された「最新型レーション」は、レストラン並みに美味しいらしい。

 もしそれが残っていたら、私たちの食卓は劇的に豪華になる。


「食料以外にも、色々と揃えられるかなあ」

「武器とか?」

「あー、武器……いる?」

「護身用」


 ルナが腰のホルスターをポンと叩く。私たちは護身用に拳銃を持っているけれど、これはあくまで対人用、あるいは小型動物用だ。


「今までは気にしてなかったけど、野生動物は結構いるもんね」

「ん。猪ならまだしも、熊が出たら拳銃じゃ止められない」

「だよねぇ。キャンピングカーを爪でガリガリされたら泣いちゃうし」


 日本だからと油断していたけれど、人間がいなくなった今、生態系の頂点は野生動物たちに戻っている。

 もし凶暴な変異種なんかがいたら、今の装備では心許ない。


「もしここが最新の基地ならさ、あれがあるかもよ」

「あれ?」

「ほら、ビームライフルとか、レーザーガンとか!」

「……SFの見過ぎ」

「いやいや、この時代ならあるでしょ! 実弾を使わないエネルギー兵器!」


 もしエネルギー式の銃があれば、弾切れの心配はなくなる。

 弾薬マガジンは消耗品だけど、電気なら『ポラリス』の核融合炉からいくらでもチャージできるからだ。

 これぞ、エコで最強のサバイバルツール。


「ん。でも確かに、高出力の携行兵器は欲しい。ポラリスから離れて探索する時の安心感が違う」

「でしょ? 銃刀法違反なんて、取り締まる警察もいないしね」

「ん。今は私たちが法律」


 無法者の理屈だけど、生き残るためには綺麗事は言っていられない。


 さて、問題はここが「何」の基地かだ。

 自衛隊には陸・海・空の三つがある。波の音はしないし、こんな内陸部に海上自衛隊がいるわけがないので、海は除外。

 ……残るは陸か空か。


「滑走路が見当たらないから、航空自衛隊でもなさそう?」

「ん。ヘリポートはあるかもしれないけど、多分、陸上自衛隊」

「お、いいね。それなら装備品が充実してそう」


 陸自の駐屯地なら、車両の整備工場や、燃料備蓄、そして武器弾薬庫があるはずだ。医療品だって、野戦病院並みのグレードのものが残っているかもしれない。


「今なら誰にも邪魔されず、選び放題だね」

「ん。……でも、油断は禁物」

「分かってる。何が潜んでるか分からないしね」


 自動防衛システムが生きているかもしれないし、あるいはここを巣にしている猛獣がいるかもしれない。

 私たちは顔を見合わせ、一度深く深呼吸をした。


 これより作戦を開始する。

 目的は、美味しいご飯と、強力な武器の回収。


「行こうか」

「うん」


 私は愛用の拳銃のセーフティを外し、ルナと共に巨大な鉄のゲートの隙間へと足を踏み入れる。沈黙を守る城塞……そこは、私たちの旅で最大級の「ダンジョン」になる予感がした。


(続く)

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