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終わった世界をキャンピングカーで。~白と黒の少女の、気ままな終末紀行~  作者: 月夜るな


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22/28

Route:022『メイド服とホバークラフト』


「……ルナさんや」

「ん?」

「これは?」

「メイド服」

「うん、それは見れば分かる」


 休憩ポイントとして見つけた、川岸の開けたスペース。

 私たちは『ポラリス』を降りて、整備作業の準備をしていたのだが……。


 今の私たちの格好を、誰かに見られたら何と思われるだろうか。(まあ、誰もいないから関係ないんだけど)

 二人して、フリルのたっぷりついた、クラシカルなメイド服を着ているのだ。

 以前、あのドン・ペンギン(仮)の店で、ルナが「作業着にいい」と言い張って持ち帰ったやつだ。


「なんで私たち、この寒い川辺でメイド服なの?」

「ん。これから大作業だから。エプロンがあるから汚れてもいい」

「作業着ならツナギとかあったじゃん……」

「……」


 ルナが視線を逸らす。確信犯だ。


「それに、水に入るなら水着の方がよくない?」

「ダメ。今の気温何度だと思ってるの? 死んじゃう」

「……確かに」

「あと、そもそも私たち水着持ってない」

「あー、そうだった」


 生きるのに必死で、レジャー用品の回収は後回しにしていたんだった。この秋風が吹く中で水着は自殺行為だし、服が濡れるのも困る。

 そう考えると、動きやすくてエプロンのあるこの服は、あながち間違いではない……のか?


「まずは水上モードと水中モードの点検。詳しく見たいから、地面を這ったりして汚れるし」

「まあそうだね。命を預ける機能だし、本格的に見るなら気合入れないと」


 これから行うのは、『ポラリス』の水陸両用機能のテストだ。

 長らく使っていなかった機能だから、いきなり本番で川に突っ込むのはリスクが高すぎる。まずは陸上で変形機構のチェックを行い、問題なければ無人で入水させる手順だ。


「メイド服でやる意味……」

「ん、可愛いから正義。……ユキ、似合ってるよ。わたしの専属メイド」

「もう専属でしょ、私たちお互い」

「ん……///」


 私がサラッと返すと、ルナが耳まで赤くして黙り込んだ。

 可愛い。

 まあ、ルナが喜ぶならメイド服での整備も悪くないか。


「よし、じゃあ始めようか。まずは水上モードから」

「ん。水上モード、移行シークエンス起動」


 ルナがタブレットを操作すると、『ポラリス』の車体からプシューッという排気音が響いた。

 四つのタイヤがウィーンと機械音を立てて、車体の内側へと格納されるように九十度回転し、地面に対して水平になる。

 SF映画でよく見る、空飛ぶ車の変形シーンみたいだ。


「メインスラスター、出力安定」


 横を向いたホイールの中心から、高圧のエアが噴き出す。

 砂利が巻き上げられ、数トンの重さがあるキャンピングカーが、ふわりと地面から浮き上がった。


「おー、エアホバリング。動いてるね」

「ん。動作良好」


 詳しい原理は割愛するが、いわゆるホバークラフトの超進化版だ。強力なエアクッションで水面(あるいは地面)に浮く。

 実はこのまま陸上走行も可能なのだけれど、燃費(バッテリー消費)がタイヤ走行の比ではないので、普段は封印している機能だ。


「よし、目視点検いくよ」


 私は浮き上がった車体の下に潜り込み(メイド服のスカートが邪魔だけど気にしない)、変形したアーム部分や、防水シールの状態をチェックしていく。

 ルナはシステム側から、エラーが出ていないか監視する役割だ。


「駆動系よし、油圧よし……パッキンの劣化も、見た感じ大丈夫そう」

「ん。システムオールグリーン。エラーなし」

「OK。じゃあ、いよいよ入水式といきますか」


 私は車体の下から這い出し、服についた砂を払った。


「タブレットでの遠隔操作に切り替え。……ポラリス、発進」


 ルナが指先で画面をスライドさせる。

 誰も乗っていない『ポラリス』が、滑るように川へと向かっていく。

 固唾を呑んで見守る私たち。もしあそこで沈んだら、私たちは家も物資も全て失うことになる。一応保険はかけているけど。


 バシャァッ!


 大きな水しぶきを上げて、車体が川に着水した。

 沈まない。

 エアの力で、水面に見事に浮いている。


「……浮いた!」

「ん。水平維持、安定してる。浸水アラートなし」

「成功だね!」


 私たちは顔を見合わせて、ハイタッチ(手は油で少し汚れてるけど)をした。


「よし、水上はクリア。次は……」

「ん。本番」


 水中モード。つまり、潜水艦としての機能。

 これはただ浮くのとは訳が違う。完全密閉が破れれば、即座に溺死だ。


「……一回、お茶休憩してからにしない?」

「ん。賛成」


 川面に優雅に浮かぶ鉄の塊を眺めながら、二人のメイドはとりあえず休憩することにした。


(続く)

超技術(?)

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