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終わった世界をキャンピングカーで。~白と黒の少女の、気ままな終末紀行~  作者: 月夜るな


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16/18

Route:016 - 朝の光と、使用期限

ゆうべはおたのしみでしたね()



「……ん、朝か」


 目を覚ますと、カーテンの隙間から差し込む太陽の光が、埃の粒子をキラキラと照らしていた。

 スマホの時計を見ると、7時30分。

 健康的な起床時間だ。


「なんか寒い……って、あ!?」


 シーツから出ている自分の肩を見て、私は慌てて布団を被り直した。

 いつもなら着ているはずのパジャマがない。

 というか、下着すら着けていない。生まれたままの姿だ。


「ルナ……」


 恐る恐る横を見れば、私と同じように何も纏っていないルナが、私の腕を枕にしてすやすやと寝息を立てていた。

 白い肌に、キスマークみたいな赤い痕がいくつか残っているのを見て、昨夜の記憶が一気にフラッシュバックする。


「あー、うん。一線超えちゃったかー」


 三大欲求の話をして、勢いで告白して、そのまま……。

 詳細を思い出すと顔から火が出そうになるけれど、不思議と嫌な気持ちではなかった。むしろ、隣で無防備に眠るルナの体温が愛おしくてたまらない。


「……意外とルナ、激しかったなぁ」


 普段は大人しいのに、スイッチが入るとあんな風になるなんて。

 新しい発見だ。


「……とりあえず。シャワー浴びて着替えよう」


 余韻に浸っていたいけれど、昨夜の汗やあれやこれやがそのままだ。

 さすがにこのまま二度寝はできない。


「ルナ、起きて」

「……んぅ」


 肩を揺すると、ルナがうっすらと目を開けた。

 ぼんやりとした金色の瞳が、私を捉える。


「……ゆき?」

「はい。愛しのユキさんですよ」

「!」


 自分で言っておいて恥ずかしいセリフだけど、昨夜のことを思えば間違いではないはずだ。

 ルナの顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。


「ゆ、ユキ……その」

「お話はあと。まずはシャワーね。さっぱりしてから着替えよう」

「ん……いっしょ?」

「……もちろん」


 朝のシャワーを浴びて、ドン・ペンギン(仮)で手に入れたお揃いの新しい服に着替えた私たちは、リビングのソファに向かい合って座っていた。

 コーヒーの湯気が立つ中、少しだけ気まずい、でも甘い沈黙が流れる。


「その、ごめん。昨日はちょっと暴走した」

「いや、謝らなくて大丈夫だよ。それにもう私たち、お互い両思いだと知った訳だし」

「うん……好き」

「うんうん。私も好きだよ」


 テーブル越しに身を乗り出して、チュッと軽いキスをする。ルナは驚くことも嫌がることもなく、自然に受け入れてくれた。

 昨夜のようなディープなものではなく、挨拶みたいなキス。これからは、これが私たちの日常になるんだ。


「ま、これで晴れて付き合う? ことになった訳だけど」

「ん。恋人」

「だね。でも、私たちの目的はこの世界を旅することだし、やることは変わらないよね」

「うん」


 そう。関係が変わったとて、旅の目的は変わらない。

 むしろ、心も体も繋がった最強のパートナーとして、この終わった世界をどこまでも進んでいける気がする。


「さて、と。出発前に何か補給すべきものってあったっけ?」


 私は気持ちを切り替えて、タブレットの在庫管理アプリを開いた。


「うーん。ちょっと待ってて」


 ルナが立ち上がり、収納棚の方へ向かう。


「水は昨日入れたし、食料もまだ余裕あるよね」

「ん。特に不足はない。……強いて言うなら、薬関係?」

「薬?」


 ルナが救急箱を持って戻ってきた。中には綺麗に整頓された瓶や箱が並んでいる。


「使用期限が近いものがあるから、それを入れ替えるか、追加するか」

「あー……そうだよねぇ。薬も長持ちするとはいえ、永遠じゃないもんね」


 少し前にも話題に出たけれど、薬には使用期限がある。

 包帯やガーゼは劣化しなければ使えるけれど、化学薬品はどうしても成分が変わってしまう。

 昔の薬は2~3年だったらしいけれど、最終戦争前の技術革新で5年~10年持つものも増えた。おかげで私たちもこうして恩恵に預かれているわけだけど。


「一番期限が近いものは、こっちにまとめてある。痛み止めと抗生物質、大体あと半年くらいで期限切れ」

「半年かあ。意外と早いね」

「うん。だから、新しいのを見つけておきたい」


 ルナが優秀すぎる。

 ちゃんと期限ごとにラベリングして、古い順に取り出しやすく並べ替えてくれているのだ。この几帳面さが、私の大雑把さをカバーしてくれている。


「ルナとしてはどう思う? この町で探す?」

「ん。まだ期限があるとはいえ、備えあれば患いなし。追加で期限が長いのを回収したほうがいい」

「りょーかい。じゃあ、今日はドラッグストア巡りデートだね」

「……デート?」

「ふたりで出かければ、なんだってデートだよ」


 私がウィンクすると、ルナは呆れたように、でも嬉しそうに小さく笑った。


「ん。じゃあ、行こう」


 恋人繋ぎで手を重ねて、私たちは朝の廃墟へと繰り出した。


(続く)

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