籠の隙間の足
ああ……なんて気持ちいいんだろう……
紫魔子の足に頬擦りしながら私は、悦びに酔い痴れていた。大きな鳥籠の中に閉じ込められている紫魔子。その籠の隙間から伸ばされた足は日に当たっていないのか、病的なまでに白く透き通っている。そして血など通っていないかの様にひやりと冷たく、まるで死人の様な紫魔子の足に私は溺れていた。
「紫魔子……紫魔子……」
一頻り紫魔子の足に頬擦りし、今度は足の指をしゃぶる。
そして唾だらけになった紫魔子の足を見て、私はひどく満足した。それが終わったら、ふくらはぎの愛撫に移る。
ああ、また他の奴につけられている……っ。
すらりとした紫魔子のふくらはぎには、幾多もの歯跡が刻まれていた。
紫魔子は私のモノなのに……っ。
嫉妬に任せて嚙み付けば、
紫魔子の甲高い声が漏れる。
いつも無表情の紫魔子が眉を寄せる。
更に1回2回と嚙み付けば、
また声を漏らした。
私と紫魔子の至福の時間。けれど秒針は止まる事はない。
「お客さん、時間ですよ」
腰の曲がった老婆が告げる。
それを合図に紫魔子がひたり、と私の顔を踏み、
「またのお越しを……」
そう一言さよならを言う。
もっと紫魔子の足と戯れていたい……
その想いをぐっと堪え、老婆に金を払う。
「お気をつけて……」
老婆に外まで見送られて、前から来た男と擦れ違う。
「いらっしゃいませ、お客様」
老婆がその男に話す声が聞こえる。
次はあの男が紫魔子の足と……。
私は後ろを振り返り、男と老婆が入って行った小屋を睨む。
もう限界が近い気がする……いつかあの老婆を殺して、紫魔子を攫って行きたい……。
近頃その想いが心を占める。
紫魔子……紫魔子……待っていて……もうすぐ君を、そこから出してあげるからね……。
完
