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3話 不死のギャンブル

不死のギャンブル


 夢は終わり、また退屈な日常が始まる。最悪な夢よりも現実の方がマシだと夢から醒める事を選んだ筈だった。しかし、結果だけを言うと夢は醒めなかった。


 薄々、勘づいていた事ではあったが夢にしては現実味がありすぎた。ミーティアを名乗る人っぽいナニカが出した謎の弓を見て、そこから無理矢理夢だと断定したが、それ以外の要素がここは現実だと告げていた。


 そして今、夢は醒めなかったが目を開ける事もできなかった。と言うよりも、体を一切動かす事ができない。右手、左手、瞼。どれに力を込めてもまともに力が入らない。全身麻酔を受けた時はこんな感じなのだろうか。


「いや、呑気か。何が全身麻酔だよ。どっちかっていうと金縛りだろ。違う、落ち着け。そんなのはどっちだって良い。落ち着いて、深呼吸……って口も動かねえ」


 息ができない。口や鼻は塞がれてはいないはずだが、体が動かないのと同様に呼吸器官が動いていない。しかし、不思議な事に息苦しさは感じない。そこで気づく。自分はミーティアに痛みもなく殺されたのではないかと。


「は?あれは夢で、目を開ければくだらない日常に戻れるんじゃ」


『戻れません』


「…………壊したはずのすまほがいつまで口出ししてくんだよ」


『私がスマートフォンではないからです。これからあなたは選択しなければなりません。このまま何も残さないまま、何も成せないまま死ぬか。それとも自ら蘇生を望み、神の遊戯に参加するか。()()どちらでも構いませんが、少なくともあなたは』


「俺は退屈だった。何に対しても夢中になりきれず、結局は全てから逃げた結果が今だ。このまま死んだって思い残した事なんてないし、伝えなければいけない事がある友人や家族もいない。けれど、俺は例え惨めでも生きたい。こんな俺でも何かを残せる可能性があるのなら」


『生きる意思を確認。パッシブスキル 引き戻しを発動。成功しました。30秒後に蘇生が完了します。蘇生に伴いスキル 差し切りを発動。対象をミーティアとし、決着が就くまでの間、ステータスを徐々に増加させます。……このままでは生存の可能性が低いと判定。更にスキルを使用する事を推奨します』


 声が一体何を言っているのかわからない。早口で喋るヲタクみたいに単語を並べられても、最後に何かをおすすめされた事しか聞き取れなかった。


「もうなんでもいいから、やれる事はやってくれ」


 あまりにも非現実な事が続きすぎた結果、勝の頭はパンクしていたのだった。幾ら知らない単語が並べられ、爆音パチスロでイカれた耳だったとしても普段なら聞き取れてはいたのだが、既に頭がパンクしてしまっていた勝には声のほとんどが届いていなかった。


 もう死んでしまったのだからどうでもいい。というのが今の勝の本心だ。ただ、自分の人生を振り返った結果、自分を否定するネガティブな感情が溢れてしまっていた。


「今更、何をしたった変わらない。俺はどうしたって碌な人間にはなれないんだから放っておいてくれよ。あの女を心配したのだってその時は自分に余裕があったからで、余裕がなければ他人を手を差し伸べるなんてできないクズだ。だから……もう」


『そういう訳にはいきません。私はあなたを導き助けるためにあるのです。例えあなたが自分を諦めようとも私は煉瓦 勝を助けますよ』


「一体……お前はなんなんだ」


『私はハロ。あなたを導く為に神からあなたを任されたあなたの一部。私はあなたの味方です』


 味方。そう言いながらも未だに姿を見せない存在に向けて文句の1つでも言ってやろうとした時、急に耐えきれない眠気が体を襲う。


「な……眠…………い」


『それではいきましょう。諦める事が許されない、死ぬまでギャンブルの日々を楽しんでください』

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