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43 百人一首をアレンジ3 あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

読みに来てくださってありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

 アルバンは宮廷音楽家として国王に仕えている。王は人格者でその政治手腕も優れており、名君と名高い人物である。


 その王が手厚く保護したのが、音楽だった。対照的に先代の王は好戦的で戦争を繰り返した。文官より武官を優遇し、芸術よりも武器産業を奨励し、牧場は食糧生産の場ではなく軍馬の育成の場とされた。


 先代の王が崩御し国の均衡が崩れると、今度は他国から攻め込まれるようになった。好戦的な父の跡を継いだ王は先代の王のような力押しの戦争ではなく、緻密な作戦によって戦争を速やかに終わらせるとともに、互いに不可侵条約を結び、監視のための兵を除いて全軍を撤収させた。


 兵はもちろん、兵の家族が喜んだ。特に徴兵によって兵役に就いていた者は、残してきた家族と生きて再会できたことに歓喜した。というのも、志願兵や職業軍人よりも徴兵された兵の方が捨て駒扱いされることが多く、死亡率が高かったためである。


 王は内政に力を入れた。特に傷病により退役した軍人と寡婦や子どもに対して職業訓練を行い、新たな人生を歩くための基盤作りに努力した。食糧生産量を増やすために、退役した軍人たちを農業従事者として各地に送り込み、男手が少なくなって荒れていた農地を回復させた。軍人たちの中には余りにも頻繁に出征していたために妻から離縁され、独り身の者も多かった。腕っ節の強い男に惚れた女性も多く、初婚・再婚・再々婚を問わず、退役軍人たちにとっても農村にとっても明るい話題が増えた。


 そんな王が次に力を入れたのが、芸術産業の振興であった。庶民が富を持つようになれば、それを消費させることで経済が循環するようになる。蓄積した富は宝石や不動産といったものに流れやすいが、王は芸術こそが究極の消費先だと考えた。絵画や詩などは形として残るが、音楽や劇は形として残らない。残らないからこそ、もう一度、更にもう一度と消費行動が起きる。その上、音楽は「楽器」が売れ、メンテナンスの「技術」が売れ、習得のために教室が開かれ、それらの発表会のためにホールの需要が生まれ、衣装を奮発する親がいて……という具合に、付随するものまで含むとその経済の循環の輪は思いのほか大きいものとなる。


 ピアノ1つとっても、弦は原料の金属、弦への金属加工、躯体を考えれば鍵盤は木工品で林業にも関わり、ハンマーにはフェルトが使われて羊の農場が収益を得られ、絵や象眼細工などが施されれば技術者が利益を得る。調律師が必要となり、演奏家が生まれ、憧れて学ぶ者が増え、それを教える教師が生まれる。それぞれの楽器にそれぞれの輪があり、それらが複雑な歯車となって巨大な産業という大きな歯車を回していく。国王はそういうやり方で国を富ませ、人々の心も掴もうとしたのだった。


 アルバンはそんな王によってピアノの技量を認められ、王宮音楽家として召し抱えられた音楽家の1人だった。ピアニストだけでも、アルバン1人ではない。ソリストとして招かれた者、伴奏者として招かれた者とあったが、アルバンは伴奏者として招かれたピアニストだった。


 ソリストと伴奏者では、演奏が異なる。自分の解釈を前面に押し出して曲のメッセージを伝えるソリストに対し、主旋律を奏でる楽器を下支えする伴奏者には、ソリストに「合わせる」技術も要求される。伴奏は簡単だ等と思っている者もいるが、伴奏者の技術がソリストに見合っていなければ、伴奏はただの伴奏になってしまう。よい伴奏は、ソリストを最大限に生かしつつ、ソリストと一体感のある曲に仕上げられるような演奏だ。


 そんな、「他人を立てながら全体をほどよくまとめる」技術が、アルバンは他よりもずば抜けていた。


 実はアルバンは音楽学生の時、コンクールの伴奏をするアルバイトで学費を稼いでいた。王が本選を観覧したあるコンクールでアルバンの演奏を気に入った王から直々に宮廷音楽家となることを求められ、まだ学生だと言えば卒業後は予約したと大きな声で笑われた。予約が就職内定という意味ならいいがと思っていたアルバンだったが、翌日、王から卒業までの学費が全て支払われたという連絡を受け、お抱えになるとはこういうことかと感激したことを覚えている。


 アルバンにとって幸せだったのは、素晴らしい演奏家たちとセッションできることだった。国1番のテクニシャンとたたえられるバイオリン奏者、哀愁漂う演奏なら右に出る者はいないとされるチェロ奏者、とぼけたような音ともの悲しさをない交ぜにできるオーボエ奏者、温かみのある演奏が得意なクラリネット奏者……刺激を受けないものなど誰もいない。音楽家にとっては切磋琢磨する場であり、至高の演奏に触れられる最高の場所でもあった。


 ピアノ伴奏者としての経験値を積みながら、毎日無我夢中で過ごしていたある日。アルバンは上司に呼び出された。宮廷音楽家たちを統括し、ソリストと伴奏者のペアリングを決める立場にある上司は、3曲分の楽譜と一緒に次の演奏についての指示を出してきた。


「次はフルート曲の伴奏だ」

「フルートですか」


 フルートの伴奏は、コンクールでも定番だ。楽譜のアナリーゼだけではなく、フルート奏者がどんな解釈をしたか、どんな音を好むのか、それを研究した上で自分の演奏を組み立てる必要がある。つまり、一緒に演奏するフルート奏者の情報が必要なのだ。


「それで、一緒に組むのはどなたですか?」

「新人なんだよ。マーヤという子なんだが、知っているか?」

「いいえ」

「先日陛下が地方を視察した際、見いだして都へお連れになったということでね、ひがみもあって女性の伴奏者とは組ませられないのだよ」

「まさか、陛下のお手つきですか?」

「マーヤは貴族ではないから後ろ盾もない。陛下がマーヤを側室とにするため、実績を作らせようと宮廷音楽家として召し上げたのではという噂もある。あくまで噂だ」

「その子は平民なんですか?」

「平民ならここまでの反感を買わなかっただろうね。マーヤは旅の音楽一座で横笛を吹いていた娘だ。街角で興行しているところに出会した陛下が冗談半分でフルートを噴かせたら、聞いたことのないような音が出たらしく、それを陛下が気に入ったということらしいんだ」

「はあ……聞いたことがないような音ですか。繊細な音ではなかったのでしょうね」

「よく分かるな」

「庶民の音楽は、繊細さや美しさよりも、踊りたくなったり歌いたくなったりする、元気だ明るい陽気なものですから。ということは、他の伴奏者は彼女の音が気に入らないでしょうね」

「わかるか? 我らの持つフルートの楽曲は、繊細な美しさを追求したものばかりだからな。彼女の底抜けに明るく大きなフルートの音は、その常識に囚われている者にとっては不快に感じられることもあるだろう」

「それでピアノ伴奏者はみんな貴族出身のためにどなたも拒否してしまい、結果として平民の自分に回ってきたと、そういうことですか」

「すまない、アルバン。だが、マーヤの演奏日は1ヶ月後と決まっていて、伴奏者の準備を考えるともうギリギリなのだよ」

「はあ、分かりました。今日中にアナリーゼしますから、明日マーヤさんと音合わせできるよう手配していただけますか?」

「助かるよ、アルバン」


 その日、与えられた3曲について、アルバンなりにアナリーゼを行い、自分なりの解釈とイメージを作り上げた。そして、それを曲想の指示を確認しながら自分の解釈とすりあわせ、一通りの形に仕上げた。


 翌日、朝10時にマーヤと3号練習室で落ち合うことになっていた……はずだった。だが、マーヤが来ない。アルバンはいらいらしても仕方がないと、練習t室のピアノで練習を始めた。1曲目の「小鳥の歌」はイメージしやすい。2曲目の「流れゆく雲」も問題ない。しっかりと打ち合わせが必要なのは3曲目の「魔術師の恋」だ。魔術師のイメージ。そんな魔術師がする恋とはどのようなものか。それをすりあわせて伝えたいメッセージを揃えられなければ、作るべき音も音楽も決められない。


 1時間ほど遅れてマーヤがやってきた。


「あ、もう来てたの?」

「10時という約束だったはずだが?」

「ええ~そうだったあ~? ま、いいじゃん、会えたんだし」


 ニカッと笑ったその表情は、よく言えば屈託も裏表もない、悪く言えば上品さの欠片もないものだ。


「あたし、マーヤ。アルバン、よろしくねっ!」


 いきなり呼び捨てかよ。


 アルバンは少々気分が悪いと思ったが、陛下のお気に入り、もしくは秘密の恋人であるならば、ここは我慢するほかないだろう。


「アルバンだ、よろしく頼む。早速だが、アナリーゼのすりあわせを始めよう」

「ねえ、そのアナリーゼって何? 誰も教えてくれないんだけど」

「曲の分析だよ。この曲の作者は何を伝えようとしているのか、楽譜から読み取る作業だ」

「ええ~、訳わかんないよ~。楽しく吹けりゃいいじゃん」

「楽しい曲ならそれでもなんとかなるだろうが、今回陛下から指示された曲は」

「知ってる。だってあたしが決めたんだから」


 思わず「は?」と言う言葉が口から飛び出してしまったアルバンに、マーヤは得意げに言った。


「陛下がさ、好きに吹いてみろって楽譜をたくさん持ってきたから、いくつか吹いたのよ。そしたら、あたしが吹いた中でどれが好きだったかって言うから、この3曲だって言ったの」

「マーヤ、君、3曲目の『魔術師の恋』をどうやって吹いたんだ?」

「ええ? 吹いてみよっか」


 マーヤはフルートをケースから取り出すと、一度息を吹き込んだだけですぐに「魔術師の恋」を暗譜で吹き始めた。


 これがフルートの音か、とアルバンは背筋が寒くなるのを感じた。荒々しい音は、マーヤの息を受け止めきれずに漏れ出した音。アルバンが「夢見る気分」と考えていた部分を、マーヤは甘えるように柔らかくかわいらしい音で。魔術師の怪しさと、それでも恋する1人の人間なのだというマーヤのメッセージが、痛いほどに伝わってきた。


 アルバンは思い知った。これが天性の才能なのだ、と。理屈ではない、マーヤには感覚的に分かってしまう。だから、そんなものを話し合う時間など必要ないし、もったいないのだと。


 吹き終わったマーヤに、アルバンは言った。


「マーヤ、君の演奏に合わせる。だから、他の2曲もまず吹いてくれないか?」

「いいよ!」


 マーヤは機嫌良く「小鳥の歌」と「流れゆく雲」を吹いた。アルバンはひたすら楽譜にメモしていく。それは、アナリーゼの時に書き込んだものよりも大雑把な指示書きだが、マーヤの演奏をよく捉えたものだった。


「わかった。じゃ、合わせてみないか」

「ねえアルバン、本当に伴奏してくれるの?」


 今更何を言うのかという顔でマーヤを見ると、不安そうな顔をしていた。


「だって、ここに来てから、誰も一緒に演奏してくれなかった。フルートも、ピアノも、みんな」

「自分は、マーヤの演奏について行けるか、そちらを心配していたが」

「そっか。ありがと。じゃ、合わせてみよっか」


 マーヤのフルートに合わせながら弾くのは、なかなかに骨が折れる作業だ。


「ねえ、今のところ、もっと優しい音じゃない?」

「あのさあ、怪しいって分かる?」


 マーヤのお眼鏡に敵わぬピアノだったらしい。マーヤからビシビシと指摘が入る。


「だからさあ、そこは恋する人間の感情なんだから、もっとちがう音になると思うんだけど」

「悪いな、自分は恋をしたことがない」

「はあ? 嘘でしょう? 誰も好きになったことないの?」

「ない。音楽を続けるためには奨学金が必要で、奨学金のためには勉強して、ピアノを弾き続けて、一定以上の成績を収めなければならなかったから、余裕がなかったんだ」

「ねえ、アルバン。余裕がないと、音楽って人に届かないよね」

「知っている。だから、自分は、1人では演奏できない。伴奏者として自分の弾くべき方向性を見つけないと、弾けないんだ」

「かわいそうだね」


 マーヤの言葉に、カチンときた。


「かわいそう? 宮廷音楽家になって、それなりに評価されている。平民だからってバカにあされたこともない。それのどこがかわいそうなんだよ!」

「そういう所だよ。みんな余裕がないから、いや、陛下に褒められることばっかり考えているから、みんな同じような演奏ばかりになる。陛下はそれがつまらないって言っているのに」

「すまない、今日はここまでにさせてくれ」


 アルバンは立ち上がると、ピアノの蓋も閉めずに部屋を飛び出した。


・・・・・・・・・・


 数日間、アルバンは悩み続けて部屋から出ることができなかった。ようやく吹っ切って部屋から出るまでに、一週間が経っている。


「ああ、またやってしまったな」


 悩むといつまでもくよくよと考え込むのがアルバンの悪い癖である。吹っ切るのに時間がかかるので、いろんな意味で難しい男なのだ。


「もっと愛情込めてよ」


 マーヤの言葉が頭の中でエンドレスリピートしていた状態から脱却したアルバンは、ろくに食事も取れなかったためにボロボロになっている。


 なんとか食堂に辿り着いて軽めのものを食べていると、目の前に影ができた。見上げると、マーヤが腕組みをして仁王立ちしている。明らかに怒っている。


「ねえ、なんで練習に来なかったのよ」

「具合が悪かったんだよ、連絡してもらったはずだが?」

「聞いてない。だいたい、ボス経由じゃない伝言が、あたしのところに無事に届くとでも思ったの?」


 そう言えば、マーヤは遠巻きにされ……いや、仲間はずれに近い状態にされているのだった。マーヤの言い分は正しいが、ではどうすればよかったというのか。


「悪かったよ。まだ完全復活とは行かないんだ。明日からでいいだろう?」

「だめよ! 本番まであと3週間を切っているのよ? 食べたら3号練習室に来てよ、いいわね!」


 アルバンはプンプンと怒りを振りまきながら去って行くマーヤに、思い切りため息をついた。


「大丈夫か? あいつ普通じゃないからさ」


 クラリネット奏者の男がアルバンの横に座った。


「木管グループでも、話し合いがかみ合わないんだよ」

「仕方ないよ、ああいう天才肌は自分のような凡人には理解できない」

「天才だって? あいつの演奏は、ただの自分勝手だ。他の人に合わせようとしない」

「だからソリストなんだろう?」

「あれ、聞いていないのか? 陛下の意向で、合奏にも挑戦中なんだよ」


 ああ、とアルバンは再びため息をついた。マーヤの良さは、ソリストとしてでなければ発揮されない。子どものオーケストラで、時々1人だけ上手な子がいると、その子の音が異質な音、耳障りな音に聞こえてしまうことがある。上手すぎて下手に聞こえるのだ。おそらく、マーヤの音も、同じ現象が起きているに違いない。


「マーヤの音は、合奏には向かない、陛下はきっと、協調性を身につけさせたいのだろうが、せめて違う方面でやらせないと、彼女の才能が潰れるぞ」

「アルバン、お前随分と彼女の肩を持つんだな」

「肩を持つと言うより、打ちのめされたよ」

「は? 努力の鬼のアルバンが、キャラバンの女に負けたのか?」

「ああ、負けた。絶対に勝てない。無理だ」

「アルバンがそう言うのなら、そうなんだろうな」


 クラリネット奏者のこの男は、学生時代の先輩だ。だから、アルバンがどれほど努力してきたか、よく知っている。


「名君であらせられる陛下のお考えは、我々のようなものには分からないということなんだろうな。まあ、彼女のお守り、頼んだぞ」


 なぜこの男から頼まれねばならぬのかという疑問も湧いたが、アルバンはとりあえず頷いた。


 3号練習室に辿り着くと、マーヤがフルートとは思えない大音量で「魔術師の恋」を吹いていた。


「どれからやる?」

「マーヤがやりたいものからでいい」

「じゃ、『魔術師』。これが一番合わせづらいと思うんだ」


 そのとおりだ。マーヤの表現は、一週間前よりも明らかに複雑になっている。


「魔術師なんだからさ、シンプルに人間だって部分と、変に考え込むか変な方向に考えが飛ぶか、ってことがあると思うのよ。だから、そこを調整してみたんだ」


 マーヤはアルバンにそう説明してくれた。


「分かった。やってみる」


 何回か合わせていくと、時々ピタリと何かがはまったような気分になる時がある。


「そう、今の感じ。タイミングもバッチリだったよね」


 最初のとげとげしさは消え、マーヤは少しずつアルバンにも心を開いている。それが分かって、アルバンも少しだけマーヤを意識するようになった。


 日を追う毎に、2人の演奏の息が合っていく。そうしている内に、視線が合うだけで何を考えているのか分かるようになってきたアルバンは、マーヤに会うたびに切なく苦しく思うようになっていった。


・・・・・・・・・・・・


 演奏本番の日。アルバンとマーヤの演奏が始まった。


 3曲目の「魔術師の恋」の演奏が始まった。マーヤの様子に合わせて、弾き方をコントロールする。妖しげな雰囲気、恋する1人の男の思い。


 アルバンははっとした。自分が感じていた切なさや苦しさは、恋だったのだと気づいたのだ。


 それからのアルバンの演奏は、いつも以上に情熱的なものになった。曲が終わると、聴衆は惜しみない拍手を送り続けた。


 楽屋に戻ったアルバンは、マーヤに思い切って告白しようと思った。何も気づかないマーヤは、「アルバンさ、演奏中に急に化けたよね。何かあった?」と無邪気に聞いてくる。


「実は……」


 その時、楽屋をノックする音が聞こえた。陛下がマーヤに会いにやってきたのだ。マーヤは陛下の顔を見るとうれしそうに賭けより、そして抱きついた。


「どうでしたか?」

「ああ、よかったよ。やはりマーヤはソリストの方がいいようだ」

「でしょ? だから、合奏は止めさせて」

「そうだな、合わないのなら仕方がないな」


 2人の世界に入っている。アルバンは口から飛び出す寸前だった告白を飲み込んだ。そして、何事も無かったように、マーヤと別れた。


 あの日以来、アルバンの心にマーヤが住み着いて離れない。陛下と特別な関係なのだと分かった以上、アルバンの手では届かない人だし、マーヤ自身も陛下を愛しているのがよく分かったから、2人の間に割って入るようなことはしたくなかった。


 ただ、アルバンは思う。


 山鳥は雌雄が別に生活する生き物らしい。自分とマーヤも山鳥のように離れて暮らしている。山鳥の長い尾のように、長い長いこの夜を、恋心さえ打ち明けられずにひとりさみしくこうやって眠るしかないんだな、と。

読んでくださってありがとうございました。

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