17 『枕草子』「中納言参りたまひて」をアレンジ
今日は『枕草子』から「中納言参りたまひて」をアレンジしてみました。「海月の骨」の話と言えばお分かりになる方も多いかしら。
元が短いので、とっても短いです。
王妃様のご実家は、たいそうな権勢のあるお家です。そういうわけで、いろんな珍しいものが手に入ります。
あ、私ですか? 王妃様の教育係兼侍女のクララと申します。一応私も貴族の出なんですよ。私の実家は代々王族の教育係としてお仕えする学者の家なので、家には専門書もたくさんありますし、将来は貴族向けの家庭教師となるべく勉強してきました。そんな中で、私の噂を聞いた王妃様のお父上様である宰相様が、私を王妃様付きの教育係兼侍女にしてくださったのです。ふふ、すごいでしょ?
ということで、私、最初から「才女」として王宮に上がったんですね。最初は「生意気!」なんて言われることもありましたが、私、負けるのが大嫌いなんです。ついつい知識を使ってやり込めてしまって、相手の方が泣いてしまうのよね。弱い奴らばっかり。
でも、王妃様は本当に素敵な方。王妃様の弟君もとってもいい人なんです。だから、頑張れてしまうんですよね。お仕えする主が素晴らしい方で、私、本当に恵まれているわ。
さてさて、「王宮でこんなことがありましたよ!」シリーズから今日お話しするのは、「扇子の骨」のお話ですよ。
ある時、王妃様の弟君がいらっしゃって、こんなことをおっしゃったの。
「誰も見たことがない素晴らしい扇子の骨を手に入れたんです。王妃様に献上しようと思って、今、その扇子に貼るのにふさわしい絹を探しているんです。染めでもいいし、織りでもいいですが、骨に負けないくらいの素晴らしいものを探そうとすると、なかなか見つからなくって大変です」
王妃様はご興味をもたれたわ。
「どんな骨なの?」
弟君は自慢げにおっしゃったわ。
「とにかく、見た人がみんな『こんなの見たことありません!』って言うくらいなんですよ」
扇子は元々東の国から輸入されたもの。向こうの国では竹や木(香木性は高価なんですって!)を骨にしている槽なのだけれど、我が国では象牙や鼈甲を骨にした扇子が貴族女性に好まれています。
「象牙や鼈甲でも、香木などでもないのね?」
「そんな聞いたことがあるようなものではありませんよ。この世に2つとない骨なんですから」
私は首を傾げました。
「この世にまたとない骨ですか? それならばその骨はもしかして、あの伝説のユニコーンの角でできているのでしょうか?」
弟君は目を丸くし、そして大声で笑いました。
「いいねえ、この世にあり得ない骨だから、ユニコーンの角から作った扇子の骨! それ、僕が言ったことにしておいてよ!」
そういうことではないのです。ちょっと揶揄っただけなのです。
「じゃ、ユニコーンの角から作った骨にふさわしい布が御用意できたら、持って参りますね!」
弟君が機嫌良くお帰りになりました。話を聞いていたみんなが、「ねえ、今日の話、あなたのエッセイに書いておきなさいよ!」と言うんです。私、自画自賛みたいで嫌なのですけれど、みんながあんまり言うから書いておきましたわ(と謙遜しておこうかな)。
読んでくださってありがとうございました。
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今年1年、私の作品を読みに来てくださって、見つけてくださってありがとうございました。
みなさまよいお年を!




