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二日酔いと仕事

こんにちは。

ここに訪れて、ありがとうございます。


ハードボイルド、流行らないですよね。

時代はソフト&ソフト。

固めが許されるのは、とんこつラーメンとアルデンテのパスタくらいでしょうか。


でも、世の中にはハードボイルドが実は溢れてるわけですよ、実は。

苦みばしった大人の物語が。鉄砲もなければ人も死なない。そんなハードボイルドな人生もあるんです。人生で味わう、ちょっとの悔しさや切なさ、挫折、悲しみとか。


そういう気持ちを思い起こさせる話を書きたいな、と思い筆を取った次第です。

良かったら、最初だけでも読んでみてください。

 スマホの着信バイブで目が覚めた。

 シカトした。

 二日酔いだ。

 吐き気がする。昨日は少し飲みすぎたかもしれない。

 横浜の野毛にある居酒屋でビールをジャッキで五杯に、ハイボールを二杯、そして熱燗を四合。その後はバーに行きバーボンをロックで二杯。そして最後は深夜営業している中華料理店で瓶ビールを二本。

 その間食べた物は、漬け物にだし巻き卵、あとは最後の中華で麻婆豆腐を少々。飲んでるときは、しっかり食べないと酔いやすい、という話もあるが、それがなんだと言うのだ。酔うために酒を飲んでるのだ。飯なんか食う必要はない。


 俺はベッドから起き上がり、トイレで昨日摂取した物を吐き出した。そんなに食ってないから、それほど出ない。そのあとキッチンの水道の蛇口をひねり、水道から直接水を口に入れうがいをして、さらに水をがぶ飲みした。


 俺はスマホを手に取った。

 着信が十三回。

 ため息。

 俺は、着信先に電話をした。

 相手はすぐ電話に出た。

「やっと、電話に出やがったぜ」少し甲高い男の声。吉井だ。

「朝から元気だな」

「朝? 今は二時だよ。昼の。十四時だ。酷い声してるぞ、大丈夫か?」

「で、どうした?」

「この前の原稿の修正だ、赤城」

 もう一度ため息。電話の相手に聞こえるように大きく息を吐いたが、吉井は気にも止めないで、話を続けた。

「予定していた骨董の特集ページ、一部ボツだ。撮影で貸してくれる予定だったんだがな。富岡のジジィが急にシブりだしてた。金寄越せって言いやがる」

「出せば良いだろう」

「うちみたい零細編集プロダクションが、撮影する度にいちいちお礼の金出してたら、やっていけないの。本に載ったという自己欲求を満たすだけで満足してくれって話だよ」

「いくら要求してきたんだ?」

「十万」

 俺はあまりのスケールの小さな話にウンザリした。

「そのくらい出せるだろう」

「一度出したってなると、今度やるときも出さなきゃならくなる。他の奴らに噂が広がり、どいつにも出さなきゃならなくなる。

 一回出したら終わりなんだよ。今回だけ特別に、なんて綺麗事は通じない。特に生き馬の目を抜く海千山千が集まる骨董業界の人間はさ。

 古美術骨董関連の仕事も少なくないからな、うちは。線引きしておいた方が良いんだよ。金の交渉になったら、絶対勝てっこねえんだから」

 この出版社の行方が心配になった。十万円をシブる会社。俺のギャラが無事支払われるだろうか?

「修正文のギャラはもらうぞ。一度納品した原稿だ」

 俺は原稿の修正内容を聞きメモをして、そのメモを読んで確認した。

「問題ない」

「いつまでに必要だ?」

「三時間後。校正とレイアウトの調整を入れるとそれがデッドだ」

「二時間後に渡すから、少し待ってろ」

 そう言って俺は電話切った。


 シャワーを浴びながら葉を磨き、冷蔵庫からハイネケンを出して一気飲みしてゲップをした。

 迎え酒だ。

 二日酔いだったが、それでいくらか気分がマシになった。単に二日酔いを麻痺させてるだけだが、楽になることはなる。

 髪をタオルで拭きながら、俺はパソコンに電源を入れ、原稿の修正を始めた。

 タバコを吸いたかったが禁煙中だった。先日体調が悪くなり、近所の顔見知りがやってる小さな病院に行ったら「タバコと酒やめた方が良いな。無理ならどっちかだな」と言われたのでタバコをやめた。

 俺は修正した原稿を吉井にメールした。きっちり二時間後。校正後の修正は任せる、と言葉も添えた。

 

 仕事をして少し気分が良くなったので、外へ出かけることにしよう。

 ベランダに干してあるジーパンとTシャツをとり、それを着た。ベッドの上に脱ぎ捨ててあるマッキントッシュのステンカラーコート(シワシワのクタクタになっている)を羽織る。サイドゴアブーツを履き、街に繰り出した。

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