表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

インスタントシリーズ

離れた気持ちは戻らない

作者: 井村吉定

 照れ隠しとは厄介だ。本心とは真逆なことを言ってしまうのだから。


「ごめん、私ケンのこと、そういう風には見れない」


 その一言が、私から好きな人を奪った。いや、突き放してしまったのだ。


 本当は飛び跳ねたくなるくらい嬉しかった。幼馴染の彼と両想いであったことに。


「そっか……」


 思い上がっていた。


 勇気を出して告白してくれたのだから、あっさり諦めることはないだろうと勘違いをしていた。


 それ以降、私はケンと話すことが極端に少なくなった。


 内心焦りが募った。でも私は何もしなかった。


 お姫様のように待ち続けていた。彼がまた、私に告白してくれることを。


 今にして思えばこれが私の2つ目の過ち。すぐに伝えるべきだった。私の気持ちを。


 それができなかった理由は下らない。好き――という言葉を口にするのが恥ずかしかったから。


 私にとってケンは、一緒にいて当たり前の存在。わざわざ好意を声に出す必要はないと、妙なプライドがあった。


三奈(みな)、俺彼女できたんだ」

「え?」


 だからなのかもしれない。告白から数ヶ月もしない内にケンに恋人ができたと知った時、それが現実だと思えなかったのは。


 私は気付いていなかった。ケンを狙っている女子がいることに。


 彼は私から誤解されないように、異性を意図的に遠ざけていたのだ。それで私は、ケンはモテない男子だと勘違いをした。


「なんで!? なんでなの!? 私のこと好きなんじゃないの!?」


 私は1人部屋のベッドで泣きじゃくった。


 逆恨みも甚だしいのだけれど、私は彼に怒りさえ覚えていた。傍から見たら、相当見苦しい。


 このままケンを憎んでいれば、まだ気が楽だったと思う。でも、私の心は折られてしまった。


 見てしまった。彼が恋人と幸せそうに手を繋いで歩いているところを。


「……あぁ」


 よく見かける男女のデート。ありふれた光景なのに、胸が引き裂かれそうになった。


 ケンの恋人が羨ましくて仕方がない。本来であれば、彼の隣にいるのは私だったのに……。


 後になって友達から聞いた。ケンは私にフラれた後、もう一度告白するチャンスを窺っていたらしい。


 しかし、今のケンの彼女がそれを止めた。脈なしだから諦めた方がいい、と。


 彼はそう言われ、私への想いがなくなってしまったようだ。そしてケンの彼女はじわじわと、彼の心に空いた穴を埋めていった。


 私は後悔している。あの時素直になっていれば、ケンとずっと一緒にいられた。


 大好きだった幼馴染は私の傍にもういない。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

お試しで書いたすれ違い(?)ものですが、いかかでしたでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] すれ違いでは無いような、気がします。 男主人公の幼馴染ざまぁもので、で女性側のモノローグのような?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ