表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/384

試験結果

 試験二日目。


 7月24日の火曜日。


 ついに、全ての試験が終わった。


 一応、全ての問題を解きはした。


 でも、尋常ではない問題の数に、答えが正しいかの再確認ができない問題がいくつかあった。


 強い不安が頭にのしかかり、俺は重たいため息をついた。


 他の生徒たちの口からも、次々ため息が漏れた。


 俺と違って、安堵のため息が多い。


 けれど、緊張の糸が緩むのは数秒だけ。


 昔と違って、今の生徒たちは、定期テストが終わったからと言って、解放感を感じる暇はない。


 何故なら、採点は機械が一瞬で自動採点してしまうため、結果はすぐ出るのだ。


 教室に、担任の女性教師が入ってくると、すぐさま俺ら全員の前に、画面が開いた。


 自分にしか見えない、不可視モードのMR画面に、テスト10科目の名前が表示された。


「この三か月、よく頑張りましたね。では早速ですが、テストの結果を発表します」


 空中に展開された、MR画面の各科目の横に、次々得点と平均点が表示されていく。


 現代文、古文、数学、化学、生物、物理は平均点以上を取れた。


 でも俺が目指すのは特進コース。これぐらいは当然で、安心はできない。


 続けて、地理、歴史、公民、英語も平均点を越えた。


「一年生は全員で306人。成績が102位以上で特進コース、204位以上で進学コース、205位以下は総合コースになります。では、順位を発表します」


 緊張で、胸に手を当てなくても、心臓の鼓動が聞こえてくる。


 俺が手に汗を握り、息を呑むと、画面に順位が表示された。



 58位



 まぶたが持ち上がって固まった。


 見間違いではないかと思って、つい、何度も見直してしまう。


 間違いない。

 画面には58位、余裕で特進コースに入れていた。


 よしっ、とばかりに、俺は右手でガッツポーズを取った。


 気づけば、桐葉たちみんなの視線が俺に集まっていた。


 そして、俺のガッツポーズから、俺の特進コース入りを察してくれたらしい。


 みんな、笑顔で祝福してくれた。


 そこへ、一部の生徒が声を上げた。


「はぁつ!? オレが110位!?」

「ぐっ、先生、このテストは不公平です。中学2年生レベルの授業なんてわかって当然じゃないですか。けど、問題数が多くてそもそも解く時間がありませんでした!」

「そうですよ。これじゃ知識はあっても問題文を読むのが遅い奴は不利です!」


 三人の生徒が抗議をすると、女性教師はやや厳格な視線を向けた。


「君たちは、確か宿題の提出期限を何度も破っていましたね」


 その指摘に一瞬怯むも、生徒たちは言い返した。


「だからなんなんですか? あんな量やってたら、放課後何もできないじゃないですか!」

「そうですよ。だいたい解けて当然のことをやってなんの意味があるんですか? あんな宿題無駄ですよ!」

「じゃあ先生は1桁の足し算問題100万問の宿題を出されたらやるんですか?」


 女性教師は、眼鏡の位置を直して言った。


「そんなことを言っているから、頭の回転が遅いのです」


 冷たい言葉に、三人の生徒は言葉を失った。


「成果が同じなら、より短時間で行った人のほうが優秀なのは当然です。この三か月、どうして小学生レベルの授業をやっていたのか。それは基礎力をつけるため、頭の回転を速くするため、勉強の習慣をつけるためです」


 先生の言う通りだ。


 それは、俺自身が強く実感している。


「高校数学に足し算の問題なんて出ませんが、数式を解くには四則演算は使います。だから、頭の回転を速くすることはすなわち、高校レベルの勉強につながります」


 先生の視線はさらに鋭く、声には重みがました。


「なのに、君たちはそれを疎かにした。そのせいで頭の回転が鍛えられず、この程度の問題レベルと数に、時間が足りなくなるのです。事実、全学試では君たちよりもずっと順位が低いのに、今回の試験では特進コースに入った生徒は何人もいますよ」


 寒烈な言葉の数々に、三人の生徒は何も言えず、席でうつむいた。


 それから、先生は声と表情を優しく緩めた。


「では皆さん、二学期は新しいクラスに分かれ、中学三年レベルの勉強で準備体操をしつつ、それが終わり次第、それぞれのコースに合った高校レベルの勉強をします。三か月お疲れさまでした。来週からの夏休みは心と体をリフレッシュしつつ、二学期に備えてくださいね。宿題はきちんとありますから」


 最後に浮かべた笑顔に、生徒たちは重たいため息をついた。


 みんな、宿題地獄から解放されると、期待していたらしい。


 俺も、桐葉のことを思うと、ちょっと残念だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ