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受け取ったぜ!お前の気持ち!

「言いましたよね、八郎丸さんを慕う人たちの声を聴いてもらうために来たって」


 俺が見上げた先の客席に、八郎丸さんは目を丸くした。

 そこにいたのは、九州中から集めた超能力者たちだった。

 総勢、1000人を超える。


「八郎丸さん、聞きましたよ。異能学園に反対していたの、オレらのためだって」

「確かにあたしたち、八郎丸さんが異能学園に行くならついていきます!」

「でもそれで八郎丸さんが我慢することありませんよ!」


 生徒たちの呼びかけに、八郎丸さんは顔をしかめた。


「我慢だと? 俺がいつ我慢をした?」


 否定する八郎丸さんに、生徒たちは呼びかける。


「しているじゃないですか! 二年前からずっと!」

「そうですよ! 俺らを差別やイジメ、不良超能力者から守ってくれながら言っていたじゃないですか、俺が日本最強の超能力者だって」


「なのにいつからか最強を誇示しなくなって、決闘を受けなくなって、あたしたちのためにだけ力を使うようになって!」


「アビリティリーグを見ている時の八郎丸さん、目が輝いていました!」

「本当はアビリティリーグに出たいんですよね!」

「本当は東京で、全国の猛者たちと覇を競い合いたいんじゃないですか!?」


 八郎丸さんはわずかに眉根を寄せ、奥歯を噛むようにしてかぶりを振った。


「よしてくれ。俺はいつまでもそんな子供じゃない。最強に何の価値がある? 戦国時代じゃないんだ。腕っぷしの強さを誇示することに意味はない。そもそもお前たちはどうやって集まった? おい奥井育雄、お前こんなことにみんなを巻き込んだのか? やり方が卑怯なのではないか?」


「オレだよ」


 のっそりと顔を出した堂島に、八郎丸は目つきを険しくした。


「お前、まだ懲りていなかったのか?」

「懲りるわけないだろ。オレを目覚めさせてくれたヒーローが苦しんでいるのによ」

「なんだと?」


「オレがSNSで全員にコンタクトを取ったんだ。それで、みんなに異能学園のことをどう思っているのか、八郎丸さんはどんな人か、詳しく聞いた。その結果がこれだ。みんな八朗丸さんを慕って九州に残ろうとしている。だけどみんな、自分の為に八郎丸さんがやりたいことを我慢するのが嫌なんだ。オレだって同じだ。みんなで一緒に異能学園に、それがオレの夢だ」


「…………っ、ばかやろう」


 囁くような小声。

 だけどそこには、八郎丸さんの本心がにじみ出ていた。


「八郎丸さん」


 俺が呼びかけると、彼は顔を上げた。


「みんなの気持ちは分かった。だが、やはり全員で異能学園に行くのは危険だと思う。一か所に集まれば、一網打尽にされかねん! そこで、やはり九州で俺が守る以上に、異能学園が安全であると言う保障が欲しい!」


 両手で拳を固め、全身に紫電をまとった。

 八郎丸さんはやる気だ。


「ええ。保証をしてあげますよ。八郎丸さんよりも強い生徒が、うちには在籍していますから! 桐葉!」

「オーケーだよハニー!」


 これで最初の作戦通りだ。


 桐葉が最初からブライダルモードでヒート・ヴァイブロ・ブレード、ヘカテーを構えた。


 八郎丸さんの体にも、みるみる雷光が充溢していく。


 一触即発の空気に、俺らはその場を離れようとした。


 そこへ、鋭い関西弁が割って入る。


「待ってぇな!」


 声の主はもちろん、奈良県民の糸恋だった。


 胸の前でちっちゃく拳を作りながら、糸恋は声を震わせた。


「その試合、ウチにさせてくれへんか?」


 俺は桐葉と顔を見合わせた。


「糸恋、気持ちは分かるけど、いまは我慢してくれないか?」


 役に立ちたい気持ちは分かる。

 だけどいまは、何が何でも八郎丸を仲間にしないといけない局面だ。

 言い方は悪いけど、糸恋の個人的な想いを優先することはできない。

 けど。


「そうやない、そうやないんや……」


 糸恋は痛切な声を上げながら、言葉に迷いながらも訴えてきた。


「ハニーはんの言いたいことはわかるわ。ウチは、みんなの役に立ちたい。生徒会メンバーやのに、いつも全部ハニーはんたちに頼り切りで、桐葉はんの下位互換で……ハニーはんは優しいから気にせんくても、ウチは気にする、気にしてしまうんや! けどな、これは決してウチだけの問題やない」


 一気にまくし立ててから、糸恋は視線を桐葉と八郎丸に移した。


「ブライダルモードの桐葉はんは強い。悪いけど、八郎丸はんが100人いたかて瞬殺や。けどな、ワントップの最強様が強さを示して、意味あるんか?」


 桐葉の表情が変わった。


「なるほど、糸恋の言う通りだね。ようするに、ボクが勝ったところで、ゾウという例外を持ち出して草食動物はライオンよりも強い、とか言うようなものってことだね?」


「せや。それはハニーはんでも同じこと。なら、異能学園メンバーの強さ、防衛力を誇示するんやったら、ハニーはんでも桐葉はんでも美方はんでも守方はんでもない、ブライダルモードになれへん二流選手、完全獣化がせいぜいのウチが勝利せなあかんと違う?」


 糸恋に水を向けられて、八郎丸は首肯した。


「君の言う通りだ。例外的な最強戦力を以って防衛力の証明をされても納得はできない。針霧一人頼みの防衛なら、彼女さえ封じてしまえば異能学園は丸裸同然だ。だけどいいのか? たとえそうだとしても、俺に勝ってさえしまえば、君らの得意な口八丁手八丁で俺を丸め込めるかもしれないぞ?」


「前に早百合はんが言うてたわ、そないな方法で得たもんはすぐに失われる。結局のところ、ほんに大切なんは人の心や!」


「…………ふっ」


 糸恋の真摯な眼差しに、八郎丸は口元を緩めた。


「いいだろう。その勝負乗った!」


★本作はカクヨムでは433話まで先行配信しています。

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