雷帝、お前に話があるんだ
「お前らすげぇよな。俺と同じ高校生なのに、テロリストと戦って、総理大臣とも懇意で、震災復興して、OUと本物の戦争まで始めちまった。ネットでお前らを見る時、いつも遠い世界の、映画でも見ているような気分で何も感じなかった。けど今日、お前らと八郎丸さんが話しているのを聞いて、自分が恥ずかしくなったんだ……」
堂島はうつむき、猛省するような表情になった。
「自分よりも弱い奴、それこそ超能力を持たない連中を脅して、従わせて、金をせしめて、支配者気取りだったけど、やってることは迷惑行為をばらまくだけのただの小悪党じゃねぇか……」
一瞬、何かの作戦かと思ったけど違うらしい。
堂島は、人生で初めての挫折を味わい、打ちのめされているのだろう。
――こいつなりに、改心したってことか。
「それで、こんなところで何していたんだ?」
「ああ、八郎丸さんの舎弟にしてもらおうと思ったんだけど断られちまった。そりゃオレみたいな半端もんいらないよな。そういうお前らこそどうしたんだよ? もしかして八郎丸さんをアビリティリーグにスカウトにでも来たのか?」
「いや、異能学園にな」
「へぇ、異能学園にスカウトなんてあるんだな。まぁ八郎丸さんほどの実力者なら当然か。まてよ、じゃああの人、来年度から東京に行っちまうのか? ならオレも異能学園に通うぜ! 留年するからもう一度三年生をやらせてくれ!」
八郎丸と同じ学校に通うために留年しようとする熱意は見上げたものだけど、そうはいかない。
「それが断られているんだよ。自分は九州を守るからって」
「は? なんだよそれ?」
「なんだって、お前話聞いていたんだろ?」
「いや、遠かったから全部は……」
恥ずかしそうに頭をかく堂島に、俺はことのあらましを説明した。
八郎丸が異能学園に懐疑的な事。
自分が異能学園に行けばじゃあ自分もとついてくる生徒がいること。
俺らではOUから生徒たちを守り切れないこと。
九州の超能力者は自分が守りたいと思っている事。
堂島は一切口を挟まず、最後まで話を聞いてくれた。
「そうか……八郎丸さん、そんなことを……」
頭をぼりぼりとかいてから、堂島は手を打った。
「よし、オレに任せろ!」
「任せろって、どういうことだ?」
「いいかいいから。あの人は九州に収まるような器じゃないんだ。オレが、八郎丸さんの本心を聞いてやる!」
そう言って、堂島はMR画面を操作し始めた。
◆
翌日の日曜日。
俺らは再び、八郎丸さんの家を訪ねていた。
鹿島さんの案内で通された俺らは、再び八郎丸さんと面会した。
「またお前たちか。言っておくが、三顧の礼は無い。何度来られても、俺の考えは変わらないぞ」
「いいえ、今日は、八郎丸さんを慕う人たちの声を聴いてもらいに来ました」
「何?」
怪訝そうな顔をする八郎丸さんに、俺は靴を履くように促した。
八郎丸さんが玄関で地下足袋を履くのを確認してから、俺はみんなでテレポートした。
「ここは?」
「新、異能学園都市です」
山の上部を削って作られた広大な学園都市は未だ建設途中だが、その光景は圧巻の一言だった。
クッションコンクリートで舗装された、一切の坂道が無い更地は、まるで仮想空間のような非現実感があるだろう。
そこに、無数の建設用ドローンが飛び回り、ビルやマンションが下から順番に生えていく。
まるで箱庭ゲームの世界に迷い込んでしまったような不思議空間に、さしもの八郎丸さんも動揺を隠せない様子だった。
「後ろ向いてください」
八郎丸さんの背後で建造中なのは、異能学園高等部の校舎だ。
コンベンションセンターのように立派な建物に言葉を失う八郎丸さんに、俺は移動を促した。
「こちらへどうぞ」
校舎の敷地内を歩き、設備を見て回りながら俺らが辿り着いたのは、アビリティリーグドームのバトルフィールドだった。
8万人を収容できるスタジアムを見上げ、瞠目してから、八郎丸さんは鼻を鳴らした。
「確かに素晴らしい建物だが、これがどうした? まさかとは思うが、設備の立派な学園に通いたくないですか? と物で釣るつもりではないだろうな?」
「いいえ、まさか」
名家でお坊ちゃまの八郎丸さんにそんな手が通じるとは思っていない。
俺らの狙いは別にある。
「言いましたよね、八郎丸さんを慕う人たちの声を聴いてもらうために来たって」
俺が見上げた先の客席に、八郎丸さんは目を丸くした。
そこにいたのは、九州中から集めた超能力者たちだった。
総勢、1000人を超える。




