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え、お前ワンシーン要員じゃなかったの?

 八郎丸さんの視線が冷めきった。


「そして代わりの者が上層部となり同じことの繰り返しだな。それとも、OUの政界人を

一人残らず宇宙にテレポートさせる気か?」

「それは……」

「何よりもお前たちは人間だ。24時間は戦えない。七日七晩ミサイルが降り注ぎ、戦闘機と戦艦が迫り続け、数百万、数千万の兵隊が日本列島のあらゆる海岸から同時に攻め込み続けたらどうする? 断言してもいい。いつか必ず限界が来る」

「ッ…………」


 俺が言葉に詰まると、八郎丸さんは語気を強めた。


「本当に守ろうとするならば、お前の能力でOU中にミサイルをテレポートしてOU軍全員を宇宙に放り出し、OUという国を完膚なきまでに滅ぼし尽くす必要があるだろうな。そして、日本は世界中から大量虐殺の戦犯国家として千年先までそしられ続けるだろう。それが、お前の目指す超能力者の未来か?」


「……違う」


 そんなのは、俺の目指す未来じゃない。

 だからは、俺は、震災後にOUが攻めてきた時、誰も殺さず、全員無力化させたんだ。


「政治家の仕事は対話で平和裏に戦争を回避すること。そのことを龍崎総理に伝えておいてくれ」


 そう言って、八郎丸さんは俺らに背を向け、立ち去った。

 その背中にかける言葉が無くて、俺は悔しくて握り拳を震わせた。



   ◆



「難しい相手だな」


 あとに残された俺らは、作戦を考える為にも一度家に戻り、作戦会議を開いていた。


 リビングで真理愛が給仕してくれた紅茶とクッキーを食べながら、みんなで知恵をしぼった。


 けれど、一向にいい案は浮かばなかった。


「ごめんハニー、アタシのせいで」


 今までになくしおらしい態度に、俺は優しくなぐさめた。


「茉美は悪くないだろ? らしくないぞ」

「でも、アタシが喧嘩に勝てば言うことを聞くタイプ、なんて言ったから」


「逆に高校生のあの仕上がりがおかしいんだよ。完全に海千山千の知恵者の風格じゃないか」


「そうだよ茉美さん。それにあの調子じゃ、私や桐葉さんの論破も通じないと思うし」


「美稲の言う通りだね。それにあいつの言うことも間違ってはいないよ。ボクらがいくら強くても24時間防衛はできない。こっちから打って出てOUを滅ぼせば、必ず禍根を残す。それが現実の辛いところだよね」



 桐葉がクールに吐き捨てると、詩冴は唸った。



「う~ん、ハニーちゃんと桐葉ちゃんと美稲ちゃんと美方ちゃんと守方ちゃんがフル稼働したらOUを更地にできるんすけどねぇ。力があっても奮えないのが歯がゆいっすぅ! こうなったらマリアちゃんの念写能力でOU上層部、いや、政界人と財界人全員のお宝フォルダと女性議員の全裸をネット上に晒すっす」


「それも戦後人権系の問題にされるだけだろ? 今の時代は、正義が悪党を倒しても批判される大クレーム時代なんだ」


 実際、殺人事件の現場で警察が拳銃で犯人を撃ち殺すと、


『警察の人殺し』

『殺人犯を殺人してもいい理屈はない』

『無力化できたはずだ』

『殺人犯を出すような社会が悪い』

『殺人犯も社会の犠牲者だ』


 などという論調が声高に叫ばれ、ワイドショーが白熱する。


「どうすれば」


 万策尽きたような表情で俺が頭を悩ませていると、糸恋が声を上げた。


「どうすればもこうすればもないわ。ハニーはん、ともかくもう一度、八郎丸はんの元へ行きましょ。言葉を尽くす。それのみや!」


 糸恋の訴えに、俺も頷かされた。


「糸恋の言う通りだな。考えても仕方ない。こうなったら粘り強く交渉し続けよう。案外、足しげく通っているうちに、向こうの考え方が変わるかもしれないしな」


「せや!」


 糸恋の呼びかけに、みんなも頷き合い、立ち上がった。


「じゃあみんな、また九州に行くぞ」


 俺らは玄関に移動して靴を履くと、一斉にテレポートした。



   ◆



 八郎丸の家の前にテレポートすると、さっき見たばかりの顔があった。


「あれ? 堂島?」

「ん、あーさっき八郎丸さんと一緒にいた奴か」

「アンタ、まだこのへんウロチョロしていたわけ? て、八郎丸さん?」


 茉美の疑問に、堂島は胸を張った。


「ああ、オレは八郎丸さんに負けて世界の広さを知ったんだ。あれはまるで雷に打たれたような衝撃だったぜ」


 ――いや、物理的に雷浴びているんだよ。


「オレは今まで、自分が凄く強くて、偉くて、何も考えていないクズだった。何が福岡を仕切っている総番だ。オレなんてただの高校生なのに」


 さっきの茉美以上にしおらし態度に、俺は違和感を覚えた。


「随分ものわからいがいいな。何があったんだ?」

「俺らの?」


「ああ。実はあの後、勝ったと思って油断しているところに奇襲をかけてやるつもりで、こっそり戻ったんだ。それから高速道路の柱に隠れてお前らの話を聞いていたんだよ。OUとのこと。ネットで見たよ、お前ら、あの超能力者四天王のハニーに真理愛、美稲に詩冴だろ?」


「まぁ、な」


 そういえば俺らって有名人だっけと、いまさら思い出す。


「お前らすげぇよな。俺と同じ高校生なのに、テロリストと戦って、総理大臣とも懇意で、震災復興して、OUと本物の戦争まで始めちまった。ネットでお前らを見る時、いつも遠い世界の、映画でも見ているような気分で何も感じなかった。けど今日、お前らと八郎丸さんが話しているのを聞いて、自分が恥ずかしくなったんだ……」


 堂島はうつむき、猛省するような表情になった。


「自分よりも弱い奴、それこそ超能力を持たない連中を脅して、従わせて、金をせしめて、支配者気取りだったけど、やってることは迷惑行為をばらまくだけのただの小悪党じゃねぇか……」


 一瞬、何かの作戦かと思ったけど違うらしい。

 堂島は、人生で初めての挫折を味わい、打ちのめされているのだろう。


★本作はカクヨムでは432話まで先行配信しています。

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