雷帝の力
終わったと思うも、どうにも様子がおかしい。
周囲の不良たちはにやにやと不気味に笑っている。
それに、堂島ものけぞったまま倒れなかった。
「ぷぁー! なーかなかいい電撃だったぜ。だけどな、オレの能力はウナギじゃねぇ、電気ウナギなんだ。同じ電撃使いでも、電撃を生み出すテメェと違って、体そのものに電撃を生み出すオレに電撃は効かねぇ。つまり、オレはテメェの上位互換なんだよ!」
堂島の尻尾が地面を打ち払い、反動で跳びかかって来た。
巨大な口がガバリと開き、喉の奥に黒い稲妻が生じている。
「八郎丸さん!」
「楽しみの邪魔をするな」
援護でテレポートを発動させようとする俺に右手をかざして制した。
直後、八郎丸さんの左手から特大の、極太の雷光がノーモーションで放たれた。
雷撃の激流に堂島は飲み込まれ、姿を消した。
雷光が地面に吸い込まれ、四散したあと、残っていたのは変身が解け、白目を剥いたまま痙攣して動かなくなる堂島の姿だった。
「お前は勘違いをしている。電気ウナギは電気を無効にするわけではない。実は自分で自分の電気に感電している」
――え? そうなの?
「それでも電気ウナギが感電死しないのは、分厚い脂肪の鎧で自分を保護しているからだ。つまり、電撃【無効】ではなく電撃【耐性】。故に耐性力を上回る電圧をかけられれば死ぬ。そして、とっとと起きろ」
八郎丸さんが指を鳴らすと、堂島の体がビグンと跳ね上がり、目を覚ました。
「今後、超能力の使用を禁止する。そのウナギ顔を次に見かけたらその瞬間かば焼きにしてくれる。チンパンジー並みの知能で理解できたら一生地元に引きこもっていろ!」
「ひぃいいいいいいいいいいい!」
「あ、待ってください堂島さん! 堂島さぁあああん!」
他の不良たちも蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。
超能力者の腕自慢をこうもあっさりと。
かつて、アイスキネシスの使い手である坂東を一方的に倒した桐葉を彷彿とさせる実力に、背筋が震えた。
――これが、雷帝と呼ばれる男の実力なのか。
俺が感心していると、八郎丸さんが振り返った。
「俺は、力を持つ者には責任が伴うと考えている」
真摯な声音に、思わず聞き入った。
「強いからこそ、軽々に動くことはできない。俺は大勢から慕われている。俺が異能学園に行くなら自分も、そんな風に思う人もいるだろう。だが俺は異能学園には懐疑的だ。はっきり言えば、危険だとさえ思っている」
眼光鋭く、釘を刺すようにして八朗丸さんは言い含めてきた。
「表向きは安全の為、超能力者を保護するためと言っているが、一か所に集まれば一網打尽にされる。それにOUが宣戦布告してきた以上、九州に何かあったら俺が九州の超能力者たちを守りたい」
「何よあんた、アタシらの強さナメてんの? アタシらがいままで何回OUを返り討ちにしてきたと思っているのよ!」
反発したのは、もちろん茉美だ。
「全国に散らばっているよりも一か所にまとまってもらったほうがアタシらとしても守りやすいのよね。ていうか九州はアンタが守るって、テレポートも使えないアンタがどうやって長崎や佐賀や福岡の超能力者を守るのよ!」
「安い挑発だな」
あくまで冷静な八郎丸さんに、茉美は攻め手を変えた。
「あっそう、じゃあ決闘しましょうか。アタシらがアンタよりも強いって証明できたら文句ないでしょ? 言っておくけど、ヒーラーのアタシと互角のアンタじゃ逆立ちしたって勝てないような猛者がこっちにはゴロゴロいるわよ!」
――微妙に人任せだなおい。
「もちろんアンタが望むなら、またアタシがやってもいいわよ」
――やっぱりイケメンだなぁ。
けれど、八郎丸さんは動じなかった。
「そういう子供じみた話ではない」
「な、何よ、らしくないわね」
「俺もいつまでも中学生ではない。喧嘩の強い奴に従う、そんな子供じみた倫理では動けない」
「なっ!?」
茉美がほのかに顔を赤くした。
かつての強敵が大人になっていて恥ずかしいらしい。可愛い。
「我が家は鎌倉時代までさかのぼれる武家の家系だ。元寇に参戦し、先祖代々九州の危機に立ち向かって来た。俺は九州のために動く。お前たちの顔を立てるために今日は面会したが、誘いに乗ることはできない。引き取ってくれ」
「う、う……」
茉美は一歩二歩と下がって、真理愛に頭をなでられ始めて縮こまった。可愛い。
「だとしても、なんで反異能学園コミュニティなんて作ったんだ? 本当は異能学園に行きたいのに、お前が反対するから行けない。そんな生徒がいるかもしれないじゃないか」
自身の影響力を考えるなら、それだって問題のはずだ。
けれど、八郎丸さんは即答した。
「言っただろう。俺は異能学園に懐疑的だと。とてもではないが、OUから超能力者達を守り切れるとは思えない」
「そこは信頼して欲しいな。実際、茉美の言う通り俺らは今までに何度もOUを退けてきている。もちろん世の中に100パーセントなんてないし、100パーセントの安全を保障する奴がいたら逆に怪しい。だけど、普通の学校に通うよりは安全だろ?」
「そのおごりが問題だな。お前たちはなるほど、確かに今まで何度もOUに打ち勝ってきたのかもしれない。だが、相手は一国だ。それも、世界最大の国土と人口、経済力に軍事力を持つ超巨大国家群だ。対するお前たちはどこまでいっても所詮は一介の高校生に過ぎない」
小さな子供の夢物語に呆れるような眼差しで、八郎丸さんはため息を吐いた。
「これまでお前らが無事だったのは、悪いがOUが本気ではなかったからだ。現実とアニメは違う。一国が本気になった時、お前らで対処しきれるものか」
「おっと、ハニーちゃんをなめないほうがいいっすよ。その気になればOUのお偉いさんたちを全員宇宙空間に飛ばせるんすから!」
八郎丸さんの視線が冷めきった。
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