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日本列島大改造論

「小1の頃から思っていたけど待ち時間長くね?」


 桐葉、美稲、詩冴、真理愛、舞恋、茉美、守方、糸恋と美方、の膝の上で取り合われる麻弥(猫みたいな扱い)の視線が俺に集まった。


 いつも通り、教室で俺の机を中心にみんなが集まっている。

 今更だけど、去年までは考えられなかったリア充っぷりだ。


「始業式とか終業式とか朝礼とか入学式とか卒業式とかとにかく教室に戻ったあと先生が来るまで待ってるこの時間てなんなんだ? 生徒が戻った教室から順次帰りのホームルームやればいいだろ?」


 美方の双子のイケメン弟、守方が眠そうな顔で言った。


「やっぱり他のクラスを待っているんじゃないかい? 僕らがこうして教室に戻っても他の生徒たちはまだ講堂に残っているわけだし」

「それはわかるけど、なんで鶴宮先生戻ってこないんだよ。先にホームルーム始めてもいいだろ」


 おかげで、小学生の頃から毎回この時間がヒマでしょうがない。


 中学の頃はてきとうな動画を見ていたけど、小学生の頃は校内で動画やソシャゲ禁止という謎のブラック校則があったため、ボッチの俺は時間が過ぎるのを待つしかなかった。


「せやねぇ、やっぱり足並みそろえる日本の文化やあらへん? 先に終わった生徒から帰ったらええなんてしたら他の生徒はんが妬むやん」


 糸恋がエセ大阪弁、ではなく奈良弁でもっともな説明をする。

 その隙に麻弥を奪われた。


「ぁん、いけずぅ」


 Fカップの美方とHカップの糸恋に挟まれて、麻弥は楽しそうだった。

 俺も、あれぐらい欲望のままに楽しみたいものだ。


 そして糸恋、お前は隣のクラスだよな。


 あまりにも自然に溶け込み過ぎて、違和感がなかった。


 加えて、廊下からは隣のクラスの生徒たちが孫を見守るおじいちゃん目線で糸恋を見守っている。


 愛されているなぁ。


「まったく、相変わらず日本人は融通が利かなくて非効率的ですわね。この世界最強の超能力者にして万物を灰にする灼熱紅蓮のマグマ使い、ボルケーノ貴美美方様が生徒会長になった以上、あらためさせようかしら」


 黒髪ドリルヘアーをみょんみょん揺らして小脇に麻弥を抱きかかえながら、美方は居丈高に提案した。


 昨日、早百合さんが総理なら美方はつい最近、生徒会長になったばかりだ。

 とはいえ、生徒会長にそんな権限ないだろう。


 ――マンガだと生徒会権力持ちすぎってのがあるあるだけどな。


「マンガの生徒会ならそれぐらいの権限があるんすけどねぇ」


 詩冴がセルフシンクロしてきた。

 流石は少年漫画の産湯に浸かった女子である。


「そんなことよりも、ハニー」


 桐葉が俺の右肩に抱き着いて、体重を預けてきた。


「クリマスの話しよっ。仕事が終わったらみんなでサンタコスしてパーティーだよ」

「そうっす、みんなでエロサンタコスをして聖夜を性夜にするっす!」

「茉美、コブラツイスト」

「ひぃっすっ! ……す?」

「……」

「茉美?」

「え? あ、ああコブラツイストね、うおりゃ!」

「ぎゃああ、俺じゃねぇ!」


 けれど、茉美の巨乳が俺の引き延ばされたわき腹にのしかかってきてかなり気持ち良い。

 わき腹って敏感だよな。


「わぁごめんハニー。大丈夫!?」

「な、なんとか」


 茉美は眉を八の字にして、申し訳なさそうに頭を下げた。

 ここ最近、ずっと感じだ。


 ――まだ、引きずっているんだな。


 彼女が自分のおっぱいの重さを測っていた時は俺も驚いたし、気にするなと言う方が無理だろう。


「はっ!? 不調のマツミちゃんなら簡単に胸が揉めひでぶぅっ!」


 茉美の裏拳が詩冴の顔面にクリティカルヒットした。

 ゲームみたいに、【Critical】の文字が見えた気がする。


「守方、貴方はいつものようにトナカイのコスプレをしてワタクシを乗せて写真を撮りますわよ」

「え、今年は滑川ちゃんとデートする予定だからヤダ」

「なっ、貴方いつの間にそんなことに!」

「姉さんが寝ている間かな」

「ムキィー!」


 ――滑川って、確か摩擦を操作する能力者で、糸恋の親友で生徒会の書記だったかな?


 体育祭では糸恋の相棒、生徒会選挙では糸恋の後援者をしていた。

 結局、選挙は美方の勝利だったけど合併。

 美方が生徒会長、糸恋が副会長、守方が会計で、滑川が書記をしている。


「姉よりも先に恋人を作るなんてナマイキですわよ!」

「なら姉さんも作ればいいじゃないか」

「ワタクシに釣り合う高貴な男なんていませんわ!」

「いるよ。年収1兆円超えで日本を救った英雄で女の子のために体を張って戦えて、姉さんとおない年の男子が」

「はんっ、そんな男がいたら今すぐ結婚して差し上げますわ!」


 腰と口元に手を当て美方がのけぞると、守方はまっすぐ俺を指さした。


「ほら、しなよ、結婚」


 美方が無言で拳を放った。守方はひらりと避けた。


「避けるなぁ!」

「避けるよ。痛いもん!」


 それから美方が二発、三発とジャブジャブストレートを打つも、守方は軽やかに避けていく。


 その動きは熟練の達人そのもので今までの人生でどれだけ姉の暴力に直面してきたかがわかる。


 ――仲いいなぁ。


「あ、ハニー君、そろそろ早百合さんがテレビに出る時間だよ」

「お、そっか。じゃあ先生も戻ってこないしここで見るか」


 美稲に促された俺は、みんなに見えるよう、MR画面を大きく展開した。



 

 画面に、全国のジャーナリストたちが詰めかける記者会見場が映った。


 デバイスのカメラ機能でも十分だが、メディアは伝統的に本物のカメラを使うため、カメラを構える姿が新鮮に見える。


 記者会見場に早百合さんが現れた。


 さっきまで学園の講堂にいたのでちょっと不思議な感じがする。


 まぁ、俺がテレポートさせたんだけどな。


 新総理である早百合さんが着席すると、テーブル越しに記者たちから今後の展望などを尋ねられる。


 早百合さんはといえば、総理の重圧に負けることなく、いつものように毅然とした態度で朗々と口を開いた。


「うむ。ではこれより、皆に【日本列島大改造論】を伝える!」

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