現在の支持率発表2
日の丸党の支持母体弱体化は、世論に大きく影響した。
翌日の12月15日土曜日。
世論調査結果の結果、各政党の支持率は、
俺らの青桜党が52パーセント。
現与党の日の丸党が25パーセント。
野党第一党の富士山党が13パーセント。
その他が、合計10パーセントだった。
「日の丸党の支持率が一気に13パーセント落ちてそれがまるまるうちの支持率になるとはな」
「他の支持率もうちに傾いているよね」
午前の異能省講堂に俺らが出勤すると、ステージの上から美方の声がした。
「おはようですわハニ雄、まずは、おめでとうと言っておこうかしら♪」
妙に上機嫌で、しかも俺のことを淫獣と呼ばない。
違和感がありすぎて、逆に警戒した。
「あー警戒しなくていいよはにーくん。姉さん昨日、父さんにいっぱい褒められて機嫌がいいだけだから」
「おしゃべりにはキックですわよ!」
ひらり
「何故かわしますの!?」
「え? 痛いから」
「ムキーッ! こうなったら当たるまでやってやりますわ!」
美方の猛ラッシュをすべて右へ左へ避けながら、守方は器用に俺らへ首を回した。
「姉さん、はにーくんたちに会いにわざわざ出勤してきたんだよ。可愛いよね」
「うわぁあああああやめなさぃいいいいいいいい!」
「じゃあ僕らはもう帰るけどこれからも姉さんと仲良くしてあげてね」
「本気でブチのめしますわよこの、うっっ――」
バチンと守方の指先がスパークして、美方は気を失った。
床に倒れ込む美方を抱き止めると、守方は慣れた手つきで彼女を背負った。
「じゃ、テレポートお願いできる?」
「お、おう」
俺は二人を家にテレポートしてあげた。
美方への慈悲と憐れみの心が止まらなかった。
「ハニー、あの二人って仲いいよね。ボクも美方みたいな妹が欲しかったな。というわけで美方とも結婚しといてよ」
「おつかい感覚で頼むなよ」
「ていうかあのスタンガン攻撃、傷害事件じゃないのかな……?」
舞恋がへの字口になった。
「愛があればいいんじゃないのか? だから茉美も気にしなくていいんだぞ」
俺が視線を向けると、茉美はちょっと赤面した。
「き、気にするに決まっているでしょ。それとあたしはもうあんたを殴る気ないから」
「ちっ、今日は駄目か」
一回殴るたびに胸を揉んでいいと約束した俺は、ちょっとおどけてみた。
「…………ッ」
すると、茉美はさらに顔を赤くしながら耳打ちしてきた。
「あの、ね。殴らなくても、時々なら、触ってもいいわよ」
――なんだって!?
「朝チュンの波動を感じるぞ?」
俺がトキメくと、背後から早百合さんが声をかけてきた。
昨日から早百合さんは一緒に暮らしているので、今日は出勤も一緒だ。
もっとも、そのことを知る人はいない。
俺が桐葉、美稲、詩冴、舞恋、麻弥、真理愛、茉美、早百合さんと一緒にテレポートしてきても、みんな、どこかで拾ってからテレポートしてきているのだろうとしか思っていないに違いない。
ちなみに、舞恋と麻弥は一度うちにアポートしてから一緒にテレポートしている。
「ハニーはボクと毎日朝チュンしていますよ」
「ほお」
「ドヤ顔で嘘をつくな!」
「でも毎晩一緒に寝ているのはほんとでしょ?」
桐葉が蜂蜜色の瞳でニヤリとほくそ笑むと、俺は何も言えなかった。
桐葉の愛らしさと欲望に屈して添い寝を許してしまったのは俺だ。おかげで、毎晩毎朝、朝チュンイベントを回避するために俺の理性は満身創痍になって戦っているのだ。
「ずるいっすハニーちゃん! シサエもベッドに混ぜて欲しいっす!」
「茉美、ヒーリングパンチ」
「フンッ!」
「ひでぶぅぅぅっす!」
床に転がる詩冴は、お腹を抱えながら悶絶した。
「ぐっ、マツミちゃんは改心したはずじゃ……」
「ごめん、なんかあんた相手だと罪悪感が湧かないのよ」
「酷いっす! シサエはイエティやネッシーよりも珍しいアルビノ巨乳美少女っすよ! もっと大事にして欲しいっす!」
「そのたとえは適切なのか?」
「レアリティは亜麻色の髪の桐葉ちゃんとすっとこどっこいっす」
「どっこいどっこいな。でもそうなのか?」
「ふふん、ではシサエという存在がいかにレアなのか、ハニーちゃんにフェルミ推定を使って教えてあげるっす」
詩冴は鼻息を荒くして胸を張った。
「フェルミ推定って、確か条件つけてどんどん対象を減らしていくあれだよな?」
俺が美稲に尋ねると、彼女はちょっと考えて頷いた。
「う~ん、ちょっと違うけど今はその認識でいいかな」
「まず、日本人口は1億人、女子はその半分で5000万人。13歳から19歳までの少女は7×20万人で140万人。アルビノは2万人に1人だから70人、Eカップ女子は1割しかいないから7人」
ふむふむと俺は頷いた。
「そしてシサエは100万人に1人の美少女だから日本に0・000007人しかいないはずなのに存在しているのがシサエという奇跡なんす!」
「そこ1000人に1人にしようか」
「ハニーちゃん厳しいっす!」
「それでボクのレアリティはどうなるの? 髪と目は能力のせいだから計算しなくていいよ」
「桐葉ちゃんはまず少女の数140万人までは同じで、Hカップ女子は0・2パーセントしかいないから2800人、165センチ以上は20人に1人だから140人。そして1000万人に1人の美少女だから日本に0・000014人しかいないはずなのにここにいるという奇跡っす!」
「あ、ハニーはん、ウチちょっとこのままアビリティリーグ続けるかちょっと相談したいんやけど」
と、言いながら身長165センチで桐葉並の美貌を振りまきHカップの豊乳を揺らし跳ね弾ませながら糸恋が走ってきた。
「ハニーちゃん、フェルミ推定ってあてにならないっすね」
「まぁ元から超能力者は美人で巨乳が多いからな」
あくまで俗説だが、超能力者は女性ホルモンの一種であるエストラジオールの分泌量が多いと言われている。
「ちなみに私の平均エストラジオール分泌量は常人の10倍だ」
「早百合さんは超能力者じゃないですよね?」
俺は苦笑いを浮かべた。
その瞬間、俺の視界に奇妙な通知が表示された。
【青桜党党首、龍崎早百合、奥井育雄と同棲生活!男子高校生との淫行疑惑浮上!】
なんだこれ?
最新ニュースのそれはみんなの視界にも表示されているらしく、顔色を変えている。
通知をタップすると、一本の音声が流れた。
それは、俺らの部屋を盗聴したと思われる、俺と早百合さんの会話だった。
会話からは、一緒に暮らしていることがよくわかる。
この会話には、昨日した覚えがある。
決して合成音声ではないだろう。
自分たちの生活を盗聴されていたことはショックだが、それ以上に、ネット記事の見出しに俺は肝を冷やした。
「なるほど、その手で来たか」
早百合さんの眉間にしわが寄った。
★本作はカクヨムでは361話まで先行配信しています。




