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どうせ労ってもらうならば、爆乳美人の方がいいだろう!

 昨日の討論番組で青桜党の認知度が上がったところで、青桜党は大量の解説動画をネットに投稿した。


 内容は各政党と、逮捕されていない候補者たちを公平に、冷静に経歴、公約、発言内容や業績を紹介したものだ。


 犯罪はしていなくても、他党の多くの立候補者は過去に問題行動や問題発言を【していたり】、公約を果たしていない、当選後、何もしていないなどの【していない】問題があるため、視聴者には悪く見えるだろう。


 いいところも悪いところもない地味な立候補者も、所属政党そのものの印象がよくないので、おそらく評価は下がる。


 何せ、それぞれの党が、今までどれほど公約を破りまくってきたか、彼らの政策がどれだけ失敗して、国に混乱と不景気をもたらしてきたかを、これでもかと解説するのだから。


 一方、青桜党のほうは、初立候補者が多いから叩く材料がない。


 そもそも、彼ら彼女らは舞恋のサイコメトリーで選び抜いた、黄金の魂を持つ人たちだ。


 【出世しても損なわれない高い共感性】【社会に基点を置いた考え方】を持つ候補者たちに付け入る隙などない。


 当然、政党の公約である【政治家の優遇制度の是正】を表明しており、良い印象が先行する。


 それに、早百合さん自身が人気なので、彼女の仲間というだけでも、印象がかなりいい。


 動画を見た人が、誰に投票するかは、明らかだろう。



 朝のホームルーム前に、動画の再生回数や反応を確認して俺が満足していると、美方と糸恋が話しかけてきた。


「ハニーはん、早百合大臣の動画、順調そうやね」

「ああ。これもお前らのおかげだな」

「ふふん、まぁワタクシはアビリティリーグのスターですから。ワタクシのファンはみんな動画を拡散してくれますわ」


 俺がお礼を言うと、美方は調子に乗って仰け反った。


「せやけど、青桜党って他の政党みたいに朝立ちや選挙カーはせぇへんの?」


 糸恋が首を傾げる。

 【朝立ち】は駅前など人通りの多いところで立って演説をすることだ。


 選挙期間に入るや否や、どの政党候補者も街頭で演説したり、選挙カーで騒音をまき散らしながら街中を練り歩いている。


 けれど、青桜党はどちらも消極的だった。


「あれって迷惑なだけで評判悪いし、あれで投票先を決める人なんていないからな。朝立ちは素通りする数秒しか話聞けないし、足を止めて聞いている人は最初からファンの人だし、選挙カーなんてただの騒音でむしろイメージ悪くなるだろ」


 むしろ、生活を邪魔してくる騒音政党に投票しようと思う人がいたら驚きだ。


「今は高齢者でもネットを使う2040年だぞ? そもそも青桜党のことはニュースでも散々取り上げられているし、朝立ちや選挙カーなんていらないだろ」


 俺が椅子の背もたれに体重を預けると、二人も大いに納得してくれた。


「それに、うちには朝立ちや選挙カーなんかよりもずっと効果的なキレイどころがそろっているからな、て悪い悪い、最近はこういうのも失言なんだったか?」


「ややわぁ、ハニーはんそんなキレイどころやなんて、でもまぁウチの魅力は桐葉はん並やし当然やな、やぁん♪」

「ふっ、流石の淫獣だけあって女の魅力には聡いですわね」


 糸恋は赤面しながら体をくねらせ銀髪を揺らし、美方はドヤ顔で笑った。

 俺の耳元で、桐葉が囁いた。


「ハニー、この二人ならハーレム入りしてもいいよ?」

「おいっ」


 俺は空手チョップを寸止めさせた。

 桐葉は笑顔で額を突き出してチョップに押し当ててきた。

 久しぶりのやりとりがちょっと楽しかった。



   ◆



 放課後。

 異能省の執務室に集まった俺らは、早百合さんと対面していた。

 ソファに座る俺らに、早百合さんは机越しに好意的な声で接してくれた。


「今朝の世論調査は見たな? 初出馬で、支持率は野党第一党の富士山党を抜いての第二位。大健闘だ。これも貴君らの努力の賜物だと感じている。感謝するぞ」


 その顔には、一種の達成感が宿っていた。

 けれど、早百合さんの顔は、すぐに合戦を控えた武将のように引き締められた。


「だが、浮かれてはいられない。慢心を国民に悟られれば、支持率などすぐに落ちる。そもそも、まだ日の丸党に負けているしな。【勝って兜の緒を締めよ】どころではない、まだ、我らは勝ってすらいないのだ」


 鋭い眼光を浴びせられて、俺は自然と背筋が伸びた。

 一見すると厳しいけど、早百合さんの言う通りだ。

 俺らの目標は、あくまでも政権を取り、与党になることだ。

 二位で喜んではいられない。むしろ、焦るべきだろう。


「とはいえ、厳しいことばかり言っても、士気に関わる。朝から候補者全員に祝辞と激励に見せかけ、注意を呼び掛ける電話をした」

「電話をしたんですか?」

「そうだが?」


 さも当然のように言っているけど、青桜党の候補者は、全国に何百人といる。その一人一人に電話をしたとなると……何時間かかったんだ?


「SNSとか、メールの一斉送信のほうが……」

「私の声と言葉で想いを伝え労わずしてどうする。彼らは皆、新生党からの出馬という、危うい戦いに身を投じてくれた同志であり朋友達だ。党首自ら報いるのは当然ではないか」


 そういえば、俺らにもこうやって直接会ってお礼を言ってくれたな。


「でも、そういうのは秘書の仕事じゃないんですか?」

「何を言う。どうせ労ってもらうならば、爆乳美人の方がいいだろう!」


 早百合さんは斜め四五度の角度で俺らに流し目を送りながら、キメ顔を作った。


 ――この人、マジで言ってやがる。


★本作はカクヨムでは345話まで先行投稿しています。

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★話が分からなくなって読むの辞めるという人が出ないようにあらすじ

112話~154話 読み飛ばし可

 夏休みに突入したハニーたちはみんなで沖縄旅行へ。そこでポロリエロハプを繰り広げてから首里城を見に行くと、貴美美方と守方の姉弟と出会う。

 そして、戦闘系能力者が怖がられていることを知る。

 ハニーたちは桐葉のため、夏休み返上で戦闘系能力者のイメージアップ作戦を開始。超能力者同士が戦うバトルスポーツ、アビリティリーグを発足させる。

 反対派はいつものように論破して大勝利。

 美稲のリビルディングでダイヤモンド半導体を作り6G社会を実現することで日本中の人が五感情報全てを使い観戦できるようインフラを整え、ついに興行を開始。

 だが、無能総理の暴走で目玉試合である桐葉VS美稲の開始が遅れてしまう。

 そこへ現れた美方と守方に救援を求めると、二人の超常バトルに観客は大喜び。二人のおかげでアビリティリーグは大成功を収める。

 だが、試合終了後、超能力者への反対はがOUのパワードスーツに乗って乱入。

 絶体絶命のピンチだが、ハニーの新必殺技、ゲートによるカメハ●波で敵を撃破。

 悪と戦う姿が全国に流れることで見事、戦闘系能力者のイメージアップに成功したのだった。


★本作はカクヨムでは345話まで先行投稿しています。

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