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シサエのおっぱいはいつでもフリーっすよ!

 警察班のみんなを異能省に連れて帰ると、無表情の真理愛と麻弥が心なしか誇らしげだった。

 舞恋は気後れしていた。


「本日は早百合大臣の指定した候補者50名の汚職動画を投稿、警察にも提出してきました」

「証拠品は舞恋のサイコメトリーと麻弥の探知で一網打尽なのです」むふん

「政治家の人って本当に汚職だらけなんだなぁ……」


 善良な国民を代表して、舞恋が重たい溜息を漏らした。

 彼女が証拠品に触れると、犯人の感情、想いまで体感するので、残念度合いはひとしおだろう。

 その時、誰かが叫んだ。


「おいみんな、早百合大臣が来たぞ!」


 早百合さんが異能省の講堂に姿を現すと、みんなスター登場とばかりに盛り上がりはやしたてた。


 まるで、早百合さんが総理になるのが確定したような陽気さだ。


 その様子から、どれだけ早百合さんが愛されているかがわかる。


 早百合さんは、もとからハリウッド女優顔負けの長身とプロポーションの美女で、女子からはカッコイイと、その爆乳も相まって男子たちからは魅力的過ぎると人気だった。


 そこに、異能省での仕事という【生きがい】、異能学園という【居場所】、アビリティリーグという【活躍の場】を与えてくれた。


 OUの手から、美稲を守ったのもかなりポイントが高い。


 早百合さんは自分たちを大事にしてくれる庇護者、そんな印象を持たずにはいられない。


 早百合さんこそ、超能力者みんなの救世主と言っても過言ではないだろう。


 俺も、4月までのボッチ生活から今のファミリー生活になれたのは早百合さんのおかげだと思っている。


「戻ったな、奥井ハニー育雄」


 早百合さんと目が合うと、今更ちょっと不思議な感じがした。


 こんな超人と自分が知り合いということに違和感がある。


 俺も一人で日本のエネルギー問題を解決した大人物のはずなのだけど、その実感がない。

 これが、出世しても共感性が下がらない、ということなのか。


「ところ昼間、朝チュンの波動を感じたのだが何かあったか?」


 ――糸恋のHカップをわしづかんでいる時だぁああ!?


「ナ、ナニモナイデスヨ」

「そうです。ハニーさんは前かがみになった糸恋さんの豊満すぎる胸が料理に触れて汚れないよう手で支えていただけです」


 滔々とつかえることなく言いあげてから、真理愛は肩越しに振り向き、無表情のままやり切ったオーラを出し切ってきた。ぐっと突き立てられた親指が憎い。


 ――真理愛! お前は誰の何をフォローしたつもりなんだ?


「ぐっっっっ! シサエに隠れてそんな羨ましいことを! 慰謝料としてハニーちゃんはシサエのおっぱいを揉むっす!」


「高くつきそうだし何かに負ける気がするから断る」

「シサエのおっぱいはいつでもフリーっすよ!」

「女子がそういうこと言うな!」


 俺が寸止め空手チョップをすると、詩冴はのけぞりころんで床に後頭部を打ち付け苦しんだ。


 そして真理愛はうらやましそうなオーラを出しながら見つめていた。


 できれば真理愛にも寸止め空手チョップをしてあげたいのだけれど、真理愛にやるのはためらわれる。詩冴にはためらわない。


「真理愛、仕事は順調そうだな」


 早百合さんに声をかけられて、真理愛はくるりと踵を返した。


「はい。指定された50名、全員が何らかの形で賄賂を受け取り、あるいは渡していました。他、不正取引にもいくつか手を貸しています。選挙で有利になるよう、非合法な裏工作もしていました」


「なんでそこまでして政治家になろうとするかなぁ」


 舞恋が続けて倦怠感のある溜息を漏らすと、麻弥がぴょこんと見上げた。


「金城さんは政治家になるのがゴールと言っていたのです」

「それだけ政治家は優遇されているからな」


 胸の下で腕を組む早百合さんに、舞恋が水を向けた。


「そういえば早百合さんて政治家の優遇措置を撤廃するのが公約ですけど、そんなに優遇されているんですか?」


「そうだな。詳しくは今日投稿する選挙動画やテレビのインタビューでも答えるのだが、貴君たちには先に伝えておこう」


 講堂に集まった退勤生徒が集まってきた。

 みんな、それこそお気に入りチャンネルの新着動画が始まるかのように興味津々だった。


「まず、民間企業の平均年収はおよそ四〇〇万。対する国会議員の年収は二〇〇〇万以上だ」


「高ッ!?」

「サラリーマンの五倍っすか!?」

「給料が一三〇万円、プラス、年二度のボーナスがあるからね」


 驚愕する茉美と詩冴に、桐葉がスッと補足した。


「なんでそんなに高いんすか?」

「国会議員の給料は【国会議員の歳費、旅費、及び手当等に関する法律】で定められている。もっとも、この法律を可決させたのも国会議員だがな」

「自分で自分の給料決めてんの?」

「そんなのズルいっす!」


 ぶーぶー文句を言う茉美と詩冴に、早百合も同調した。


「貴君らの言う通りだ。つまり、国会議員自身が、『俺らには庶民の五倍の給料を貰う価値がある』と判断しているということだ。それで庶民の生活を守るだの貧困対策だのと言っているのだから滑稽だ」

「うわー、ないわー」

「ないっすねー」


 ――茉美と詩冴って実は仲いいんじゃないか?


 俺が疑念を向けていると、またも桐葉が補足情報をくれた。


「あと給料とは別に、政党交付金ていうのを貰っているよ」

「政党」

「交付金?」


 二人が頭上に疑問符を浮かべると、桐葉は解説を続けた。


「国民から集めたお金を、議席数に応じて政党に分配する政治活動資金のことだよ」

「あー、経費ね」

「おしごとにつかうお金ならいいんじゃないすか?」


「もっとも、使い道が法律で決まっていないから、高級料亭の飲食代や議員の息子の飲食費に使われたこともあって問題になったね」


「「横領じゃん!」」


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