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マヤたん日和

 幕間



 ある日の夜。

 俺らはいつものメンバーで家に集まり、女子会をしていた。

 俺もいるけど女子会だ。異論は認める。


「麻弥のほっぺぷにぷにできもちいね」

「マヤちゃんぽにぽにっすぅ♪」

「ほら麻弥さん、ポッキー」


 桐葉は膝の上に麻弥を抱きすくめながら左手でほほっぺをもてあそび、詩冴は右側からアプローチを仕掛けている。


 麻弥は小さな頭のてっぺんに桐葉のHカップを感じながらほっぺをいじられ、美稲からお菓子を食べさせてもらい、無表情なのに幸せなオーラを発していた。


 無表情なのに感情がわかる不思議な子だ。

 今日も麻弥はみんなの可愛い妹で、お姫様だった。

 気持ちはわかる。

 俺も麻弥を可愛がりたくて、手の平にチョコボールを何粒か乗せて差し出した。


「あむん」もぐもぐ「おいしいのです」


 ぎゅんっ!

 麻弥のくちびるが手の平に触れた瞬間、あまりの尊さに心臓が引き締まった。


 ――マヤたんのくちびるやわらかい!


 舞恋とか真理愛とか茉美とか糸恋とか、他のみんなもこぞって麻弥を甘やかした。

 けれど麻弥なら仕方ない。だって麻弥なんだもん。


「いやおかしいでしょう」

『へ?』


 俺らみんなが水を差す美方へ振り返ると、彼女はジト目で手の平を突き出していた。


「確認ですが、皆さんは高校一年生の16歳ですわよね?」

『うん』


「それで麻弥さんは同級生の16歳ですわよね?」

『うん』


「だから! 麻弥さんは幼女ではなくて同い年ですのよ! 色々と言うべきことがありませんですことぉ!?」

「なんや気にすることでもあるん?」


 言いながら、糸恋は首をかしげて麻弥のお腹をなでた。

 麻弥は無表情のまま、くすぐったそうに足をぱたぱたさせた。可愛い。


「俺も別におかしいことなんて何もないと思うぞ」

「ぐっ、奥井育雄まで」

「まぁまぁ姉さん、自分が可愛がってもらえないからってあんな小さな子に嫉妬しなくても」

「だからおない年だと言っているでしょう! ハッ、そうですわ」ニヤリン


 火を噴かんばかりの勢いで怒鳴ってから、美方は策士のように悪い顔をした。



   ◆



 一週間後。

 麻弥が親御さんと遊園地に行っている日、俺らは美方に呼ばれてリビングに集合していた。


「皆さん! 本日はワタクシのためにお集まり頂きまして感謝致しますわ。もっとも、すぐに皆さんがワタクシに感謝することになるでしょうけど!」


 美方がむふんと胸を張るとFカップが揺れた。


「いや、守方から『みんなに無視されてむせび泣く姉さんを慰めるのが面倒くさいから集まってあげて』て言われたから」


 美方の蹴りがカッ飛んだ。

 守方はチョウのようにひらりとかわした。

 俺は小さく拍手をした。


「ま、まぁいいですわ。とにかく、皆さんには麻弥さんの本性を見せてあげますわ」


 口角をひくつかせる美方には、俺らは首を傾げた。


『麻弥の本性?』

「そうですわ! 16歳でロリっ娘? はんっ、おかしくてへそで茶が沸きますことよ! あんなの、どうせ幼い見た目を利用してかわい子ぶっているだけですわ!」


 人差し指を立てると、美方はニヤリと笑う。


「先日、麻弥さん一人でお留守番している時間があったでしょう? あの時、カメラを仕掛けさせてもらいましたの。きっとここには、皆さんの知らない真実の麻弥さんが映っているはずでしてよ!」


 得意満面、有頂天になりながら、美方はMR画面を最大サイズでリビングの壁に展開。

 一本の動画を再生させた。


「さぁ、その目に焼き付けるのです! 貴女方がロリ可愛いと愛で可愛がってきたインチキ幼女の真実の姿を!」


 美方の声が合図だったように、動画が始まった。

 そこには、リビングのソファに座りながら一人、テレビを見る麻弥が映っていた。

 麻弥は小さな体で可愛くお座りしながら、両手を足の間に置いて、ちょっと前かがみだった。子供座りだ。

 テレビのCMが流れた。


『全米が泣いた! ジョージマン・ラーカス最新作!』

 麻弥のツーサイドアップがしょんぼりとした。

「ゼンベイさんまた泣かされたのですか。ゼンベイさんがかわいそうなのです。たまにはゼンベイさんには面白いコメディを見せてあげて欲しいのです」



 ――ぜ、全米を人の名前だと思っているぅうううううううううう!?

 あまりの可愛い勘違いに、桐葉たちも両手を顔に当てて、表情をトロけさせていた。

「ハニーくん、姉さんが自分に根性焼きをしようとしているから止めるのを手伝ってくれるかい?」



 続けて、テレビから軽快なCMソングが流れてきた。

 すると麻弥たんは口ずさみながら体を揺らしてリズムに乗った。

 最後のメロでは、鋭く両手を挙げてマスコットキャラの真似をした。



「ハニーくん、姉さんが断髪式の準備を始めたから止めるのを手伝ってくれるかい?」



 子供向けの5分アニメが終わると、麻弥はソファから立ち上がった。

「ヒマだからみんなにクッキーを作るのです」



「あーそういえば家に帰ったら麻弥がクッキーくれたな。おい美方、麻弥が画面からいなくなったから早送りを、ん?」


 画面に、髪の赤い幼女が映り込んだ。麻弥と同じ、沖縄の古銭を髪飾りにしている。

 同時に、桐葉、美稲、真理愛、糸恋の表情が明らかに変わった。

 舞恋はちょっと首をひねった。

 守方と詩冴と茉美は眉ひとつ動かさなかった。

 美方は、

「画面に誰もいなくなったので早送りをしますわね。でもきっと、きっとこの後、悪いことをしているに違いありませんわ」

 と、早送りした。



 画面の中で、赤毛の女の子が笑顔で軽快にキャッキャと踊り周るも、美方は早送りを続けた。

 やがて、大皿いっぱいのクッキーを持ってきた麻弥が登場。

 ちょっとフラついて、大皿のクッキーが数枚、床に落ちてしまった。

「あっ」

 麻弥は大皿をテーブルに置くと、床に落ちたクッキーを拾い上げた。

 美方は一縷の望みを託すように握り拳を震わせた。


「落ちちゃったのは麻弥が食べるのです」もぐもぐ


「ハニーくん、姉さんが切腹の準備をしているから止めるのを手伝ってもらえるかい?」


 俺は美方に、最大限の黙とうを捧げた。

 一方で、画面の中では赤毛の女の子が大皿のクッキーをひとつつまみニコニコと食べ始めた。

 詩冴と茉美は眉根を寄せた。


「ん? あれ? クッキー消えたっす?」

「見間違い? あれ?」


 美方は床で血を吐きながら一言。


「ワタクシは汚れていますわ」


 ――そうだな。お前は汚れ切っているよ。茉美、お前はもうちょっと暴力性を抑えたらキジムナーちゃんが見えるようになるよ。詩冴には一生見えないだろう。


 ただ、舞恋がグレーゾーンの感じなのはどうしてだろう?



   ◆



 その日の夜。

 遊園地のお土産を持って麻弥が遊びに来ると、美方が上半身ビキニ姿でお出迎えをした。


「尊き麻弥様、本日はワタクシめの胸を好きにもてあそんでくださいまし」

「よくわからないけどわーいなのです」


 美方をソファに押し倒すと、麻弥は彼女のFカップを枕にしながら欲望のままに顔をうずめて両手で揉みしだいた。


「あっ、麻弥様ッ」

「美方のおっぱいは大きくてやわらかくていい匂いがするのです」

「んッ、んァ、あぁん!」


 どうやら、麻弥はかなりのテクニシャンらしい。

 無邪気に天真爛漫に赤ん坊がママのおっぱいに甘えるように、麻弥は美方のおっぱいをこねくり回し続けるのだった。


「麻弥ちゃんが羨ましいっす」


 お前は自分のEカップでも揉んでいろ。

 そこへ、すすっと桐葉が耳打ちしてきた。


「ハニーも今夜、ボクとおっぱいする?」

「ッッ、お、おっぱいする」


 俺は小声で頷いた。


 結論。

 やっぱりおっぱいには勝てなかったよ。

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