表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/357

給料1200億円?

 翌日の昼。

 俺は学園の食堂で桐葉の作ったお弁当を食べながら、MR画面のメッセージに視線を落とした。


「給料1200億円て、実感ねぇなぁ……」

「完全に早百合さんが大臣になった影響だね」

「そう言う美稲はいくらになったんだ」

「4000億円だよ。ありがたく、アビリティリーグの発展のために使わせてもらうね」

「足りなかったら俺の給料も使ってくれ」

「その時は遠慮なく」


 美稲はにっこりと笑った。


「でもハニーたちなら当然の額じゃないかな? 一人でそれぞれ日本のエネルギー問題と金属資源問題解決するぐらいなんだし。むしろ今まで少なすぎくらいだよ」


 桐葉の冷静で的確な意見に、俺は同意した。


「だな。まぁ今までは経済破綻していたわけで、金が足りないのに俺らに高給払っていたら本末転倒だしな。けど経済再生したから、これからは適切な額を払えるってわけだ。いや、1200億円が適切なのかは知らないけど」


「ハニー。えっちなことがしたくなったらボクが全部応えるから、札束で女の子顔を叩くようなことはしちゃだめだよぉ?」


 脳味噌を愛撫するように甘い声音で囁いてくる桐葉に、俺は空手チョップを寸止めした。


「するかよっ」


 桐葉は頭を突き出して、チョップにデコタッチをしてきた。

 桐葉のセクシーな笑みが、途端に幼くなる。

 これが狙いだったのは知っている。

 だからこそ、あえて寸止め空手チョップを放ったのだ。


「ハニーさん、私にも寸止めの手刀をいただけませんか?」

「え!?」


 桐葉とは逆隣に座る真理愛が、コアなプレイを要求してきて度肝を抜かれた。


「……その、だめでしょうか?」

「いや、駄目じゃないけど……」


 ――別にお願いするようなことじゃないんだけどなぁ……。


「では、お願いします」


 言って、真理愛はやや上を見上げ、静かに目をつむり、両手を胸の前で合わせて、キスを待つ乙女のように頬を赤らめ始めた。


 ――えぇえええええええ!? 何この状況!? そしてやっぱり美稲がRECしているぅううううううう!


「えっと、じゃあ、えい」


 俺が軽く寸止めチョップをすると、真理愛はちょっとおでこを突き出して、自ら当ててきた。

 それから目を開けると、両手を火照った顔に当てて、無表情を崩した。


「ありがとうございます。今のシーンを念写して待ち受け画像にします」

「ごめん、真理愛の琴線がわからない」

「ハニーちゃんハニーちゃん! シサエにも寸止めチョップして欲しいっす!」

「そうかそうかチョップが欲しいか、じゃあひとつ!」

「待つっすハニーちゃん! なんで肩をいからせながら大きく振りかぶっているっすか!? それ絶対に当てる気満々じゃないっすか!?」

「大丈夫大丈夫、マイナス5センチで止めるから」

「5センチめり込むっす! それはゴメンっす!」


 叫びながら、詩冴は純白のツインテールをつかみ、鞭のように振るってきた。

 正式に付き合うようになった俺らだけど、詩冴は相変わらずおバカをしてくれる。

 俺も、急にしおらしくなられると対応に困るので、こうした態度はけっこう助かる。

 そんな俺と詩冴のじゃれ合いを止めるように、茉美が難しい声を出した。


「美方のやつ、やっぱ苦戦しているわねぇ」


 麻弥の口を拭いてあげていた舞恋が、茉美のMR画面を覗き込んだ。


「えーっと、中間世論調査? あ、琴石さんの支持率が32パーセントで美方さんが11パーセント、わからないと無回答が57パーセントだって」


 アビリティリーグの恩があるので、一応、ここにいるメンバーは全員美方に投票している。

 全校生徒1000人規模の学園においては微々たる差だろう。

 それでも、身内票を入れても11パーセントは少なすぎる。


「みんなの反応を読むと、美方はアビリティリーグじゃカッコ良かったけど、生徒会長にするには不安、て感じみたいね」

茉美はMR画面をフリックしながら、眉根を寄せて眉間にしわを作った。

「逆に糸恋は……なんだかんだで頼りになる。やらかしに期待している。美方よりはいいと思う。これって支持されてんのかしらね?」


 かなり微妙ではある。

 が、理由はどうあれ、それこそなんだかんで美方よりも支持されているのだから、琴石の勝ちだろう。


 アビリティリーグの恩がある俺としては、できれば美方に勝って欲しい。


 ――まぁ、ある意味、琴石にも借りというか、後ろめたい想いはあるのだけれど。


 体育祭で、琴石のおっぱいに顔をうずめてしまったことを思い出してしまう。


 ――あれは事故だし、ノーカンだよな。うん、あれはノーカン、あれはノーカン、あれはノーカン。


「ほら姉さん、しっかり持たないとランチ落とすよ」


 俺が自分に言い聞かせていると、守方のイケメンボイスが聞こえてきた。

思わず、俺らは一斉に同じ方向へ目をやった。

 すると、食堂内の通路を、貴美姉弟が通り過ぎるところだった。


「いくら琴石さんの三分の一しか支持されていないからってダメージ受け過ぎだよ」


●本作はカクヨムでは276話まで先行配信しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ