ミスコン結果! 初代ミス異能学園は?
しばらくして、賢者のようにスッキリとした顔が並ぶ講堂で、結果発表が始まった。
参加者31人が並ぶステージの女子たちは、緊張してる人がいれば、自信たっぷりに背筋を伸ばしている人まで、表情は千差万別だった。
一方で、俺は自信一択だった。
俺も、関係者席で緊張と自信がないまぜになっている。
桐葉に優勝して欲しいという想いと、他の子と票が食い合って番狂わせになったら、あるいは、一般客が桐葉のハチの能力を気にしていたら。
桐葉も、一見すると冷静な表情だけれど、その瞳には不安が映っていた。
自分のために演劇までしてもらって、これで優勝できなかったらみんなに悪いという気遣いと、全然だめだったら自分は他人から拒絶される運命なのだという恐怖が混在しているように見える。
――桐葉……ッ、みんな、頼む!
そして、俺がこいねがう中、ついに最初の順位がコールされた。
「第五位! 琴石糸恋さん!」
「五位!? いやでもベスト5に入れてうれしいわぁ♪」
一瞬、ショックを受けるとも、客からの視線に気づいて、琴石は慌てて笑顔で手を振った。
――うん、琴石も凄い美人でセクシーなんだけど、ちょっと桐葉と被るんだよな。
実際、琴石自身も桐葉に対して自分と被っているって言っているし。
「第四位! 龍崎早百合さん!」
「四位か、ふむ、まぁいいだろう。諸君、投票感謝する!」
早百合次官は満足げに胸を張り、皆に手を振った。
超能力者ではないけれど、実際、早百合次官の美貌とスタイルは反則だ。大人の男性は、全員早百合次官に投票したのではないだろうかと思う。
「第三位! 有馬真理愛さん!」
「皆様、本日はたくさんの投票を感謝致します」
無表情無感動な一言とお辞儀に、だけど観客は大いに沸いた。
流石は世界三大美少女の一角(俺調べ)だと、感心した。
「第二位! 内峰美稲さん!」
「みんなありがとう。すごく嬉しいよ」
美稲の優しい癒しスマイルに、会場からはまたしても「嫁に来てくれぇ!」という絶叫が木霊した。
流石は前の高校じゃ学園のアイドルだった美稲。やはり強い。となると、一位は。
桐葉の表情を確認すると、
「そして優勝者、つまり、初代ミス異能学園は!」
俺が期待する中、ついに優勝者の名前がコールされた。
「針霧桐葉さんです!」
俺と桐葉のまぶたが、同時に上がった。
「え? ボク?」
人差し指で自分を指して、桐葉は一瞬、キョトンとした。
でも、美稲と 詩冴に肩を叩かれて、ようやく実感が湧いたらしい。
客席から万雷の拍手を受けながら、桐葉は明るい笑顔で前に進み出た。
「みんなありがとう! これからもみんなの為にがんばるから、よろしくねぇー!」
両手でVサインを作って、桐葉は大きく突き出した。
より拍手が大きくなると、桐葉はVサインを俺に突き出して、白い歯を見せて笑ってくれた。
その光景に、俺は幸せな気持ちが溢れるのを抑えられなかった。
俺だけじゃない、みんなが桐葉を受け入れてくれた。
他人を拒絶していた桐葉が、みんなにありがとうとお礼を言ってくれた。
桐葉のことが、自分のこと以上に嬉しくて、俺は今、人生の中で一番幸せかもしれない。
俺は何かに、誰と言わず、とにかく無性に感謝したかった。
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