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トイレが渋滞しちゃう……

「続いてエントリー番号27番、1年2組琴石糸恋さん!」

「みんなどうもおおきにぃ、琴石糸恋ですぅ!」


 琴石は愛想よく笑顔を振りまきながら、両手を大きく振って飛び跳ねた。


 すると彼女のスイカ大のバストがドレス越しにも暴れ狂った。


 1ピストンごとにドレスの胸元がずり落ちて、危険な状況になってきた。


 いざという時は彼女を舞台袖にテレポートできるよう、俺は身構えた。


 男子のもう二割が前かがみになり、数十人の男子だけでなく、一般客の男性たち十数人が講堂から走り去った。


 ――この学園のトイレ大丈夫か? 渋滞していないか?


「続いてエントリー番号28番、1年1組山見麻弥さん!」

「山見麻弥なのです! 清き一票をお願いなのです!」


 無表情のまま腰に手を当て、エヘンと自信たっぷりに堂々仁王立ちになる麻弥。


 その姿が可愛くて尊くてマジで貢ぎたい。


 そして男子たちの残り二割と女子の二割が前かがみになり、男女十数人ずつが講堂から走り去った。


 ――麻弥たんでトイレに行っちゃ駄目だろ!


「続いてエントリー番号29番、1年1組針霧桐葉さん!」


 さっきの美女と野獣の時と同じ、真・最終形態で姿を現した桐葉に、会場から熱い溜息が漏れた。


 桐葉は、真正の美少女だ。


 彼女を飾り立てる装飾品もヘアセットも衣装も化粧も、笑顔すらなくても、なお彼女は絶世の美少女であり続ける。


 まさに、素が美少女。素で美少女。


 故に、彼女は真正の美少女なのだ。


 だがそれは、飾り立てなくても美少女というだけで、飾りが邪魔なわけではない。


 素材が世界最高峰の桐葉がドレスアップし、上品に笑えば、その魅力は天井知らずだった。


 一周回って、下品な衝動など起きない。


 俺も、そして会場のみんなも、心が洗われたように心酔して、前かがみになった男子たちも背筋が伸びて呆けた。


 彼女が、俺の恋人。

 俺が愛した、そして俺を愛してくれる女性だ。


 そのことが誇らしくて、愛しくて、幸せで、俺は泣きたい気持ちだった。

 隣に座る早百合次官が、そっとハンカチを差し出してくれた。


 ――なんてイケメンなんだろう。


「ありがとうございます」


 早百合次官の大人対応に感謝しながら俺は滲んだ涙をぬぐった。


 ――これはもう、優勝は決まりだな。


 と、俺が確信した直後、滑川鳴芽子が叫んだ。


「そして最後にエントリー番号31番、異能省事務次官! 龍崎早百合さん!」

「うむ!」


 雄々しく立ち上がったかと思えば、早百合次官は普段の黒スーツを脱ぎ捨てた。


 その下には、黒のドレスを着ていた。


 胸元と背中が大胆に開き、ウエストとヒップラインにフィットし、スカートの深いスリットからはセクシーなふとももが見えた、セックスシンボル然としたドレスだった。


 壇上に上がった早百合次官は、モデルウォークでステージ中央に立ち、凛とした佇まいで勇まし笑顔で声を張り上げた。


「私が異能省事務次官! 龍崎早百合だ! 学園祭に集まった貴君ら皆に感謝する! 是非、来年も応募してくれ! 私からは以上だ!」


 天高く拳を突き上げると、その反動で特大スイカもかくやという爆乳がこぼれ出さんばかりに揺れて、実際溢れ出して、視線誘導力無限大の巨星が、半分近くもサービスされた。


 会場中の男子が先程よりも15度深く前かがみになり、怒涛の勢いで出口に殺到して、将棋倒しになっている。


 ――あのこれ事案ですよね? 事案ですよね!?


「それでは皆さん、お手元のMRダイアログから投票をお願いします!」


●本作はカクヨムでは275話まで先行投稿されています。

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