表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/357

ハニー!第二の能力に目覚める?www

 男のサングラスが、ずるっと落ちた。


「……待て、何故お前は平気なんだ?」

「何故って、いや、俺が聞きたいんだけど?」


 そうなのだ。

 桐葉、美稲、真理愛の三人は、確かに意識が混濁し、今にも気絶しそうになっている。

 なのに、俺は全然、まったく、欠片の影響もなかった。


 ――俺ってただのテレポーターだよな? 超能力耐性とか、もしかして、新しい能力に覚醒したのか?


 漫画ではよくある展開だ。


 ひとりひとつの能力をふたつ持つダブルホルダー。


 それがもしも、能力無効系なら、まさにチート、まさしく主人公だ。


 ちょっと期待してしまう俺を尻目に、男は詩冴から離れて投げ捨てた紙きれを拾い上げた。


 人質から離れるほど狼狽するなんて、よほど自分の能力に自身があったんだろう。


「馬鹿な! 名前は間違っていないはずだ! 偽名や芸名の可能性を考慮し、この学園のデーターベースにハッキングを仕掛けた! お前の名前は【奥井ハニー育雄】だろう!」


 男が突き出した紙切れには、


 奥井ハニー育雄 気絶する


 と書いてあった。

 俺の期待は急転直下。

 代わりに、熱い怒りがメラメラと湧いてきた。


 アポートで詩冴と拳銃を腕に抱いてから、俺は握り拳を震わせた。


「俺は、ハニーじゃ、ねぇぇえええええええええええええええええええ!」


 ――下水道シュートォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 男の姿が消失した。


「まったく、早百合次官は何を考えているんだ!」


 俺の名前を奥井ハニー育雄で登録する人なんて、あの人くらいのものだろう。


 ――卒業証書まで奥井ハニー育雄でもらっちゃったらどうするんだよ。


 すると、桐葉たちがゆっくりと立ち上がった。


「あれ? 楽になった?」

「もしかして、能力者が近くにいないと効果がないのかな?」

「あっ、ハニーちゃん! あのおっさんはどこっすか?」

「良かった、目を覚ましたんだな。あいつは下水道だよ」

「うわぁ……ハニー君は容赦ないなぁ……」


 美稲が肩を落とすと、桐葉が周囲を見回した。


「あれ? もしかして今回これでおしまい?」

「みたいっすね。でもあのおっさんは強敵でしたっすね。うっすら覚えているんすけど、ハニーちゃんの名前を間違えていなかったら殺されていたっすよ」

「ああ、それなんだけどよ、超能力者って全員未成年なんじゃなかったか?」


 超能力者が生まれるようになったのは、ここ最近の話だ。

 大人の超能力者は、それこそスプーン曲げとか、その程度だ。

 ちなみに、歴史に名を残した偉人は、超能力者だったんじゃないかという見解もある。


「おいおい、まさかOUの奴ら、人工的に超能力者を作れるようになったんじゃないだろうな?」


 行きついた不安に、俺は寒気がした。


 後天的な能力開発で超能力者を大量生産できるなら、それこそ勝ち目がない。


 貴美姉弟や霧葉みたいな超ド級の戦闘系能力者が万人単位で日本に攻め込んできたら、被害は甚大だ。


 俺と同じことに気づいたのだろう。


 桐葉、美稲、詩冴の表情が引き締まった。


「18歳です」


 俺らの視線が真理愛に集まった。


「へ?」

「彼はOUのエージェントで18歳のようです」


 MR画面に視線を走らせながら、真理愛は淡々と告げた。

 俺らは、渋い表情を突き合わせ、肩を落とした。


 ――えーっと、つまり、あいつは……。


「「「「ただの老け顔か……」」」」

「ハニーさん、そろそろ彼を引き上げないと溺れ死んでしまいます」

「あ、やべ」


 下水道の汚水の中にテレポートさせてから、もう2分は経つ。

 流石に死なれるのは夢見が悪いし情報も引き出せない。


「ほい、留置場にテレポートっと」

「あッッ!」


 美稲が青ざめながら素っ頓狂な声をあげた。

いつも柔和で穏やかな彼女らしからぬ反応に、俺は肩を跳ね上げた。


「ど、どうした美稲!? 何か気づいたのか!?」

「下水道から留置場にテレポートって……留置場には、今日テレポートさせた大勢の迷惑客がいるんじゃ……」

「「あッッ!」」


 俺、詩冴が同時に声をあげた。

 桐葉はニヤリと意地悪く笑った。


「まっ、それも含めて自業自得、なんじゃないのぉ?」


 こうして、今回のOUテロは片付いた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ