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麻弥と舞恋とデート! 後半戦

「もふもふなのです」


 そんな空気を破ったのは、麻弥の幼い声だった。


 麻弥が注目しているケージには、モッフモフのクモが入っていた。


「あ、それはメキシカンレッドニー言うて有名なタランチュラさんの一種や。ちなみにタランチュラの毒は大型哺乳類の人間にはそれほど効かないんやで」


「こっちの黒いクモさんは背中の赤い模様がキレイなのです」

「セアカゴケグモやね。オーストラリアのクモさんや」

「こっちのカエルさんは宝石みたいなのです」


 水と岩の張られたケージに麻弥が手をつくと、琴石がだんだん上機嫌に語り始めた。


「お目が高いなぁ。これが猛毒で名を馳せるヤドクガエルさんや。赤いのがイチゴヤドクガエル、青いのがコバルトヤドクガエル、黒地に黄色いラインが入っているのはルグブリスフキヤガエル、エメラルドグリーンのはマダラヤドクガエルや」

「糸恋の目と同じ色で綺麗なのです」

「あら、嬉しいこと言ってくれるなぁおチビちゃん」


 麻弥が琴石を見上げると、琴石はにっこりと笑い、ぽよぽよのほっぺを指でつっついた。


 そして……。


「あら?」


 麻弥のほっぺを指でついて、なでて、両手でぷにゅっとつぶして、ふわふわのツーサイドアップヘアを手で弄び、それからあらためて、麻弥のロリータフェイスに見入った。


「あらあらあら」


 麻弥を抱き上げ、近くの椅子に座って、


「なんや落ち着くわぁ」


 ほっこりと息をついた。


 膝の上で、麻弥はHカップクッションを楽しんでいた。


 舞恋が苦笑った。


「麻弥の暗黒面に堕ちちゃったね」

「女子で良かったな。琴石が男子なら犯罪だぞ」

「1組は可愛い子が多くてええなぁ。ほんでハニー、今日は両手に花でハーレムデートかいな。自分恋人何人おるん?」


 左手の小指を立てながら、琴石はちょっと恨めし気にくちびるを尖らせた。


「ハニーの彼女は桐葉、真理愛、茉美とわたしの四人なのです」



 ――                                え?



「四人!? そら両手でも足りんなぁ」

「ハニーは大人気なのです。わたしも大好きなのです」



 ――おいおいおいおいおいおい、ちょっと待って待って待って、ハニーわかんない。え? 麻弥って俺の彼女だったの? いつから? どのタイミングのどの時間軸で? 児ポ法が! いや、麻弥は15歳だけど!



 児童ポルノは12歳以下の子供が対象です。



 ――なんか俺の知らないところで話が進んでいる。やめて舞恋、目を丸くして俺を見ないで、俺も状況わかっていないから。俺まだ「自分恋人何人おるん?」で止まっているから!


「パパとママがいいよって言ったらわたしもハニーと一緒の部屋で暮らすのです」

「なん!? ハニーって同棲しとるんか!?」


「はい。桐葉と真理愛、茉美と恋人じゃないけど美稲と一緒に暮らしているのです」

「そ、それだけのオンナを魅了するやなんて、ハニー、自分どれだけのテクを……」


 ごくりと、琴石は大きく生唾を飲み込んだ。


 ――この数秒間の間に俺の評価が凄いことになっている!? 裏で誰かが糸を引いているのか!?


「ということはそっちの子は五号さん?」

「ふゃっ!?」

「いや、舞恋は彼女じゃねぇし!」

「ふゃッッ!??」

「へ? そうなんか?」


 琴石が不思議そうに小首をかしげるのと同時に、麻弥が無表情のまま、眼差しでムッとした。


「あぁん」


 名残惜しそうにする琴石の膝から降りると、麻弥は両手を伸ばして俺の顔をぺちぺちと叩いてきた。


「あ、こらやめろ。何をするんだ」

「舞恋さんをいぢめるハニーは悪い子です。えいえいえい」


「こら、ダメージが蓄積してきたからまじでやめろ。的確に同じ場所を叩くな。舞恋、なんで助けてくれないんだ。なんで俺に背を向けてしゃがんでいるんだ?」


 四面楚歌の中、琴石はがっくりと肩を落としながら、重たいため息を漏らした。


「ニブイお人やなぁ……」


 でもその表情は、どこか安心したようでもあった。

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